38.崩壊までのタイムリミット
嗚呼、と杏癒は終わりが来る事を悟った。
先程婚約者の方からこんなメッセージが届いたのだ。
『突然ごめん。私に付き纏ってた子が通り魔に遭ったらしくて事情を聞かれたの、だから少し落ち着くまで連絡してこないで下さい。』
はぁ、と思わず項垂れる。
そしてその数十分後に届いたのは佐伯からのメッセージだった。
だがメッセージを見て思う事は1つ。
既に佐伯は実妹を襲ったのは杏癒である事を既に見抜いていると。
それを警察に訴えないのは、自惚れたくはないが、彼は現状を受け止めたくないのだと思った。
でも現実主義者の彼だから、そして家族を安心させる為に実際に会って聞こうとそういう腹なのかもしれない。
そう思うと胸が痛んだ。
「……」
暫くの沈黙の後に杏癒はこう返した。
『判りました。12時過ぎには行きますから待ってて下さい。』
ちなみにこのメッセージに返信などなく、また佐伯もそのメッセージを自宅の自室でベッドで横になりながら見つめていた。
「柴田さん」
もし、貴女が犯人であるとしたら本当に自分はその場で冷静でいられるのか?
大事な家族を傷つけた代償を突き付ける事は出来るのか?
そう同じ事を考えていた2人の夜は案外とすんなりしていて、まるで戦前に備えるかの様に浅くも深くもなく、ただ何時も通りの日常だった。
どうも、織坂一です。
今回はほぼ杏癒の戸惑いでしたね。
確かに作者がこう自ら言うのも難な話ですが、杏癒も杏癒で勝手であり、物事をしっかり割り切れない不器用な人間だからこそこういう事態を招いているのですが、この女の真骨頂はこんなものじゃないんですよ。
語られるのはまた後日ですが、今度は佐伯が受け身受け身で、もうタイトル通り崩壊までのタイムリミットですね。
では一体2人はどうなってしまうのか、次回をお楽しみに。




