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ゲッカビジン  作者: 織坂一
34/75

34.事情と疑念


「先生の話によると幸い酷くはないみたい。でももうちょっと足首の傷が深かったら一生歩けない所だったって。」

「警察は?」

「一応捜査してるけれども、今の所証拠が一切ないみたいで、美月が病院に運ばれて来た時にうなされた様に呟いてたみたいなの。茶髪の悪魔……って。」

「悪魔?」

「詳しい事は判らないわ。でも今の状態で判るのはこれだけなの。ごめんなさいね、依人。貴方にも心配をかけて。」

「否……」


 茶髪の悪魔。果たしてそいつはどういった人間なのか?

 不思議に思っていると、ピピ、と携帯が鳴る。

「母さん、僕は一旦家に戻るよ。ずっと家を空けとく訳にもいかないし。」

「ええ、じゃあお願い。お母さんとお父さんは今日はここにいるから。」

「ああ」

病室を出て携帯を見ると送り主は杏癒だった。メッセージにはこう書いてある。

『何かあったみたいですが、大丈夫ですか?』

「……」

 ピッピ、と指を動かしていく。

自分から呑みに行こうと誘っておきながら途中で抜け出し、更にはこうも心配してくれているのだから少しだけ事情を話しても大丈夫だろうと、こう返す。

『妹が通り魔の被害に遭ったんです。幸い一命は取り留めましたが、まだ油断は出来なさそうです。本当に申し訳ない。』


 通り魔、と表現したが本当に妹が襲われたのはただの偶然なのかと佐伯は思う。

そもそも通り魔でアキレス腱を切るなど、普通の人間であればそんな事はしない。

 警察も判ってはいるだろうが、これは明らかに殺意を持っての行動だ。

だとしたら何故急所でもない肩をナイフで深く刺したのか?

「……まさか犯人は最初から殺す気などなかった?」


 殺す気などなく、ただただ制裁を下す為だけに妹を狙う。

 だとすれば妹はその犯人に何をしたのか?だが今ここで1人悩んでも仕方無い。

恐らく捜査は困難を極めるだろうし、妹から話を聞くのも難しいだろう。

 この後佐伯は大人しく家に戻り留守番を引き受けてくれた従兄弟へと礼を言っては一晩家で1人で過ごす。

そして奇妙だったのはまだ呑んでいる筈の杏癒から返事がこない事だった。



どうも、織坂一です。


なんとかよいとこせ、と物語は始まるのかと思った皆様済みません……長くなりすぎて、途中でちょん切らせて頂きました。

確実に次からまた杏癒パートに入りますので、あくまでタイトルの「疑念」は本編でも佐伯が言っている通り、「犯人は妹を殺す必要がない」という疑念を抱いているというだけです。


まさかこんなに長く連載するとは思っていなかったので、タイトルを考えるのが大変大変……。

でも出来るだけ話に沿いたいので、読み直してますが、ほんっとに文章力も語彙力もないのが恥です……。


もしかしたら今書いている作品を読み返した時に同じ事を思うのかもしれませんが、またそれはそれで……。

ではまた次回に

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