表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲッカビジン  作者: 織坂一
28/75

28.暗喩と思しき影


9月と言えばどこもかしこも行事が多い。

最近では学生だけでなく、会社内でも野球チームなどを作って試合をする事もあると言う。

だが、大体この季節に忙しいのは学生であって、期末考査と戦いながら体育祭や文化祭などの準備を進めるのは大変極まりないが、秋になると流石に日が暮れる時間も早くなる。

既に6時を回った頃はもう真っ暗で視界が不安定である。

その為、今日の文化祭の準備はここまでとなった。


「ひゃー、もう暗いねぇ。」

「これで数日後にテストあるとか最悪なんだけど……。」

普段と変わらない日常。

友と笑い、授業が面倒だと嘆くもなんだかんだ日々を過ごす変わらない日々。

今日は文化祭の看板を作る作業を主にしていて、片付けの前に伸びをしていた少女に1人の女子生徒が近づいては頬にピタリ、と缶を当てた。

「ひゃっ」

思わず振り返るとそこにはとある女子生徒の姿で彼女は心中で大きく溜息を吐くが、缶を頬に当てた張本人は笑っている。

「お疲れ様、(ゆい)ちゃん。」

「……有難う」

怪訝そうな顔をして缶を受け取るとその儘唯と呼ばれた女子生徒はその場を去る。

缶を渡してきた相手の女子生徒の名前は美月(みづき)と言った。


 最近彼女から告白されて以降、断ったのだが、それでもしつこくしてくる為に唯は限界であったが、鉄拳制裁をしても美月は唯を避けるどころか寧ろ今まで以上に関わってくる様になった。

 「止めて欲しい」とやんわり言った事もあるが、彼女には通用しなかった。


 どうすべきか、と悩んで早々にその場から離れるとすぐに玄関口に置いてあった鞄を持っては人混みに紛れて、学校の門を潜る。

だがそれでも美月を振り切れない。

「ねぇ、唯ちゃん。最近恋人とはどうなの?」

「それは関係ないでしょ?」

「あるよ」

「何で?」

「だってさぁ、その人は唯ちゃんを放置してるんでしょ?」

「そんな事ない」

 つん、とそっぽを向くもそれでも美月の追求は止まない。

「じゃあどうして日記には寂しいって書いてあったの?」

「それは……」

 確かに友人間で見れるネット上での日記に「寂しい」とは書いたが、投稿時間は午前2時であり、どう考えても働いている人間の大半は徹夜でもしない限り寝ているだろう。


 ただ時間が合わないだけの話。

それでも美月は盛大な勘違いをしている。

 これ以上の追求も鬱陶しくなってきたし、唯はその儘遠心力をたっぷりと使い、回し蹴りを美月の脛に当てると、美月は激痛に耐えかねてその場にしゃがみ込む。

それを見ると唯は真っ直ぐ一直線に走り出してはその場を逃げるが、身体を震わせながら美月はよろよろと立ち上がったその瞬間だった。

 

 この世とは思えないぐらいの殺気を感じたのは。



どうも、織坂一です。


シーンは一転、読んだ瞬間「一体どうした!?」という事から始まったこの28話ですが、ここから1つの夜が始まります。

最後の描写で果たしてあの美月という子がどうなるかはまた次回ですが、勘のいい人は「唯」という少女が一体誰なのか勘づくと思います。いや、気付いてもらいたい!

その為に今までいくつか伏線を張って来たのですが、まだ明確に正体を現してませんから、まだこの夜が一体杏癒と佐伯にどう関係していくかが見物です。


次回は少し残酷描写が入るのでご注意ください。

このシーンのせいでR15指定になった事を作者である私は許してなかったり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ