21.男からの忠告
カラン、とまた佐伯はグラスを傾け、一口だけウィスキーを舐めるとグラスを置いては言う。
「失礼な話かもしれませんが、何かあったんですか?僕でよければ相談に乗りますが」
「……彼女が」
「え?」
「彼女がここ最近告白されて断ってから変な視線を感じるみたいで……。」
「……成程。」
静かに魂の抜けた呟きを拾って聞くと、佐伯も顎に手を当て思案するとこう言った。
「もしかしたら最近連絡が出来なかったのはそれが関連している可能性があるかもしれませんね、多少怖くなったから柴田さんに頼りたくなったのかも……」
「許さない」
「……柴田さん?」
「許さない、アイツに手を出す輩がいるなら。そんな奴」
「柴田さん!」
気付けば佐伯が杏癒の手を強く握りしめていた。
その感覚で現実に引き戻されたのか、ようやく杏癒は自分の意識を取り戻す。
「……僕も不安になる時はあります。正直彼女の所為で寝られないなんてしょっちゅうです。でも、愛する人を守る為に貴女が手を汚す事……それだけは決して相手は望みません。気持ちは判りますが、ならば悔しいですが僕らは相手に注意を促す事を優先する。それが優しさと思いやりなんです。」
「……」
杏癒にはその優しさと思いやりが判らなかった。
確かに世間一般からすればきっとそれが優しさと思いやりだろう。
だが杏癒の論点はそこではない。
自分の大事な人に何をしているのか?と
誰の許可を得て?彼女が苦しんでいるのをただ字面上で心配する事などそんな事は小学生でも出来る。
だが自分達大人は相手より知性や人生経験では必ず勝つ。
であれば自身の内に潜む何を使ってでも大事な人を死守せねばならない。それが杏癒の脳内活路だった。
しかしそれを見抜いたのか、それともただ思ったけか佐伯はまた口を開いては謝罪する。
「……済みません、偉そうな事を言ってしまって。確かに僕の言う事全てが正しい訳ではないのですから。けれども、これだけは覚えておいて下さい。誰しも相手を殺してまで喜ぶのは少数派なんです。きっと婚約者さんも今はいいかもしれませんが、事が起こってから悲しんでも時は戻りませんから。」
「佐伯さん……」
「悩んで、精一杯想ってあげて下さい。きっと彼女は喜んでくれますよ。それと警察への被害届ならば証拠さえあれば今は第三者が申し出ても承諾はされる事もまたお忘れずに。」
どうも、織坂一です。
杏癒パートも段々進んで行ってますね。
ちなみにここで言わずとも杏癒はガチのヤンデレです。
優しそうで実は残酷な佐伯に対し、杏癒のイメージはクールぶってる熱血女なので彼女が怒っているのはしょっちゅうの設定というのがありました。
ですが実はこのやり取りが更にこの先の物語の鍵を握っていきます。
まだその瓦解する場面まできてないので何も言えませんが……。
つくづく勘のいい方には先が見えてしまうこの「ゲッカビジン」ですが、今後共よろしくお願いします。




