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ゲッカビジン  作者: 織坂一
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16.次の朝に生きて行く為に


不思議な人に出会ったと思った

出会いからして可笑しい。

自分の今の幸せである出会いと比べればそれこそ万分の1の様な出会い。

けれどもあの人はひたむきであった。

自分も無理して笑ってはいるが、やはり寂しさが拭えないのは事実。会う事もそれは考えるが、相手の背後事情によってはそれも変わる。

であれば自身は良くとも相手がそれを嫌がるケースもあるし、そもそもネット界隈だけの付き合い程バランスの取れない物は滅多にないと自分は思っているからだ。

だったらその不安定な幸せを捨てて、現実に目を向けるべきだと自分より人生経験豊富なあの人も言っていたのだから。


でも、自分はそんな叶わない相手を深く愛している。

だからこそ今日の出会いは貴重だった。

まさかこんな所で自分と同じ目線で、同じ境遇を送っている人と出会うだなんて笑うしかないだろう。

普段は寡黙な自分が酔っていたとは言え、らしくない事をしたのもその所為なんだろう。

そう思い出を飲み込んでは会社へと向かう。

だが一言言うならばこの言葉に尽きるだろう。

「……こういうのも悪くないですね。」


どうも、織坂一です。

なんと今回は500文字で終わるという自分の作家人生の中での最短記録ですが、案外この佐伯の独白は重要なキーパーソンです。


これを読んでて「あ、この佐伯って人って結構親切じゃね?」と思った方もいるかもしれませんが、逆です。正直今まで私が書いてきた作品の中でこの佐伯依人という男程の俗物は早々いません。


確かに饒舌で頭も良さそうに見えますが、それだけです。

まだ出てきていない佐伯の婚約者の言うとおり、この佐伯は「偏屈的な人間」それに尽きます。

そんな恋愛上手とは程遠いキャラだからこそ、逆に杏癒の様な人にくっつけるにはこれぐらいしないとと言う私の思惑がある訳でして。


さて佐伯パートが終わったので、またまた杏癒の日常へと戻りますが、まぁ今後先暫くはこの俗物男とどうしようもない女である杏癒の関わり合いにお付き合い下さい。

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