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ゲッカビジン  作者: 織坂一
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13.蠢くざわめき 後編4


皮肉を漏らした挙句、ニコニコと笑いながらテーブルに着こうとする様子をおどおどしながら見守っていると、幸と呼ばれた叔母さんは「おや?」と首を傾げる。

「依ちゃん、どうしたんだいこの娘。どうみても嬢さんには見えないけど、まさか早速浮気かい?だからあれ程――」

「柴田さん、こっちです。」

幸という叔母さんの言葉を無視しては先にテーブルに着いた佐伯は手招きするのを見て、辺りを見回しながらテーブルに向かうと同じく酔い潰れた人やせせら笑って朝食を囲む人がちらほらいる。どうやらここの店はそこそこ繁盛しているらしい。

「? どうかしましたか?」

「い、いえ……。」

先にメニュー表を見ている佐伯から目を逸らしては再び辺りを見回すと、佐伯は苦笑交じりに「ああ」と一言。

「ここは定食屋さんなんです。見ての通り、酔い潰れて家に帰るついでに食べてく人や、単に僕みたいにここが好きな人が来るような場所なんです。」

「そ、そうなんですか……。」

どうみてもこの店の店主と思われる幸という女性はよく見れば佐伯以外の人間にも親しく接客していて、今も酔い潰れた若い男の背を豪快に叩いている。

「僕はメニュー決まりましたが、柴田さんは?」

「え?あ、じゃあ私は鮭定食で」

「幸さん、注文。温野菜定食1つと鮭定食1つで。」

「はいよ。」

少し小太りな姿が厨房へと消えると、「さて」と佐伯は呟いた。

「先程言った事情ならば幾らでもお話しますよ。まだ時間はありますから。」

「はい……じゃあ、先程話していた浮気って……。」

「ああ、アレですか。」

そう言うと深刻な顔をする杏癒に対して佐伯は吹き出しては話し始める。

「実はこの店の店長の幸さんは僕の母親の姉の友人なんです。ですから僕も小さい頃からここに何度か来ているんで、よく幸さんには色んな事を話してしまうもので……。」


ここで杏癒の1つの謎が解けた。

敵情視察といいながら何故ここまで普通の会社員がこの二丁目に詳しいのかと言う事。

そして難題はどんどん解消されていく事になる。

「それで、僕の婚約者についてなんですけれども、恐らく柴田さんも僕が今日自宅に戻らなかった事とこうして一緒に朝食を摂る事に些か不安を覚えたと思いますが、婚約者と言ってもそれはネットの界隈の話です。」

「え?」


予感は的中した

まさかこんな所で自分と同じ境遇の人間がいるなどと露知らず、世界は案外狭いと実感した反面どこかホッとした自分もいた。そして話は続いていく。

「ほら、そういう事ですから幸さんにはプロポーズどころか付き合う事も反対されたんですが、結局依ちゃんが幸せならそれでいいと。……でも」

「どうか、しました?」

「やはりどこか虚しいんですよね。僕は柴田さんの様に詩人ではありませんから上手くいえませんけれども、結局現実に帰れば皆同じじゃないですか。この街がそれを示してくれている様に」

「……その気持ち、判ります。」

「え?」

そうだ、佐伯の気持ちは杏癒は痛い程判る。

でなければこんな場所にも来なければ、昨日に少女に投げかけられた言葉に傷つく事もない。



どうも、織坂一です。


とうとう佐伯の言う「婚約者」というのが割れましたね。恐らく勘の良い人は見抜いたと思いますが、ここから彼らは「理解者」になっていきますが、これがまた2人の仲をおかしくさせる原因でもあります。

これで終わると前回言いましたが、すみません、暫く続きます……。自分の原稿を把握してないとはなんという堕落っぷり……。


とりあえずここから暫くは蛇足です。

この先の杏癒と佐伯の話を楽しんでください!

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