祝福される婚約破棄
ニュースをみてて、思いつきました。
書いちゃったけど、後悔はしてない。しないかな?
「玲奈。君との婚約を破棄させてもらう。」
「和彦さん。ごめんなさい。貴方との婚約を破棄させてください。」
「「わたしたち、真実の愛をみつけたんです。」」
寄り添う男女。
大学の卒業パーティで、それぞれの婚約者に向けて、婚約破棄宣言がされた。
「まあ、素敵!」
「卒業パーティで、婚約破棄なんてロマンティック!」
「勇気あるな!」「ヒューヒュー」
歓声と、祝福の拍手が湧き上がった。
婚約破棄された方も、それぞれの元婚約者に、
「がんばれよ。」「おめでとう。」と、肩をたたいている。
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会場の壁際で、教授だろうか、年配の者達が、それをながめながら、話している。
「婚約破棄されて、祝福されるなんて、私たちの時代では、考えられないよねえ。」
「まったくだよね。」
「まあ、最近、恋愛結婚少ないしねえ。」
「俺、学生に、恋愛結婚したっていうと、勇気ありますねって、言われたよ。」
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20XX年、少子化対策に悩む政府は、国民皆婚約制度を導入した。
国民は、20歳になると、性格診断、遺伝子検査、血液、汗、ホルモン値、家庭環境、出身地、外見、趣味嗜好など、各種データから、各個人にあった婚約者が選定さえるのだ。
もちろん、結婚するしないは、自由だ。
婚約者より好きな人ができれば、婚約破棄して、その者と結婚すれば良いのだ。
だがしかし、国の決めた婚約者は、
子供に遺伝子的に、現在発見されている遺伝子が関係する病は発症しにくい組み合わせであり、
性格的に一緒にいても苦にならないであろう組合わせで、
家庭環境、出身地、外見、趣味嗜好などが、合う人で、
血液、汗から、フェロモンや体臭もチェックされ、生理的に合う組み合わせで、
ついでにいうと、性的嗜好、性欲の合う組み合わせなのだ。
出身地が近いので、
「お前の料理の味付けが薄い。かあさんの方が上手かった。」
「なんですってぇ、お義母さんの味付けは塩分取り過ぎなのよ!」という嫁姑料理対決や、
「うちの地方は、1歳のお祝いに一升餅を担ぐんだ。」
「え、1歳児に一升の餅背負わすの? うちは、餅踏ませるのよ。」
「えええ、食べ物踏ませるの??」 などという文化の衝突は起こりにくいのだ。
趣味嗜好が似てるので、たとえば、
イグアナを飼う夫がは虫類がダメな妻に、「私をとるのか、イグ吉をとるか?」と詰め寄られて、泣く泣く実家にイグアナを置いてきたり、
腐女子の妻が、夫に、隠していた薄い本を発見して、ドン引きされたりすることは、少ないのだ。
性的欲求も合う組み合わせなので、性欲の強い夫と、したくない妻で、
夫が、がんばって手を伸ばした妻に、「もうっ、疲れてるのっ!! もう! 体だけなのっ!」と怒られたり、
逆に、淡泊な夫と、性欲の強い妻が、
「私のこと愛してないの!」「お前は、淫乱か!」などの、
性の不一致による悲しい喧嘩も起こりにくい組み合わせなのだ。
だから、若者の過半数は、恋愛はしても、結婚は、無難な婚約者を伴侶に選びがちだ。
また、30までに結婚すると、税的にもその他制度的にも優遇措置があるのだ。
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会場の壁際で、年配の者達が、盛り上がる若者達を見ながら、ぼやいた。
「なんか変な時代になりましたよね。」
「愛とか恋より、現実的に無難な方を選んじゃうんですよね。」
「若者は、冒険しなくなりましたよね。」
「だから余計、ああいう婚約破棄が、賞賛されちゃうんだろうねえ。」
「夫婦でいろんな違いを乗り越えてゆくというのも、いいものなんですけどね。」
年配の者達は、盛り上がる若者達を見ながら、
「まあ、勇気ある二人に、幸多かれんことを!」と、
カチリと、グラスを合わせた。
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