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〜イサム恋バナ編〜
放課後
「ところでよ、お前、好きな奴とかいんのかよ?」
夕暮れの校庭を見ながら、教室の窓を開け、イサムとデュラ田が会話をしていた。
この世界に来て半年以上が経つ。中学生は恋盛りなのだ。好きな人がいてもおかしく無い。
「デュラ田がそんな話をするなんてな」
「たまにはいいだろ“恋バナ”ってやつもさぁ」
「まあな」
夕暮れの校庭は寂しい。校庭に心があるなら、今日1日遊んでくれた生徒が帰って行く、この下校時刻が辛いのだろう。誰も校庭にさよなら、また明日などとは言わない。
そんな哀愁を感じていると、好きな人の名前など簡単に言えそうな気がした。
「言えよな」
「お前から言えよ」
「じゃあ、せーの、で言うか?」
『せーのっ!エミちゃん!』
ふたりはエミちゃんが好きだった。
エミちゃんはクラス一の美人である。
「おいおい、これって」
「恋敵ってやつか?」
ははは、と笑いながら校庭を見る2人。
こそこそと彼氏と帰るエミちゃんが見えた。