〜イサムドラゲナイ編〜
自宅
イサムはテレビに夢中だった。
創作生まれファンタジー育ちのイサムには、テレビという画面から提供されるコンテンツは全てが目新しい。
ニュースは日々の起きた出来事を伝えてくれるのか。
お笑い番組はこの世界のピエロみたいな人間が我々を笑わせている。
アニメは似たようなゴリ押し声優や三文字作画など、イサムには耐えられないようである。
グルメ番組、食べれもしないものを見てどうすればいい。
動物番組。この動画は私もYouをtubeするとこで見たぞ。使い回しめ。
そんな事を思いつつ、イサムの好きな番組は音楽番組であった。
特にあの総選挙をするアイドルユニットを見ると、ドキドキしてしまう自分がいた。コンパクトディスクというものを買うと、握手出来るチケットが手に入るという。これがあれば間近でパヤ姉と握手が出来るのか。イサムは鼻血が止まらない。つまり直接会えば、その、お、お、お付き合いも出来るのでは無いだろうか。
そんなアイドルユニットの歌の後に現れた、バンドが変な歌を歌っている。
今宵僕たちはドラゴンと仲良くするよ〜♪
怒りが沸く。
この世界ではドラゴンはいないらしいが、イサムはファンタジー出身の前職勇者なのだ。
自慢では無いがドラゴンは自身の人生で12匹討伐しているのだ。
ドラゴンと仲良し?
なんだそれは。何人がドラゴンに殺されたと言うのか。イサムは怒り狂う。ピエロのDJに怒り狂い、モッズコートにも怒り狂った。トランシーバーを持てばドラゲナイだと?ふざけるな。
しかしイサムはそのファンタジーなリズムに合わせ、気がつけば口ずさんでいたのである。歌い終えて、イサムはひとりつぶやいた。
「ドラゴンと仲良くしようだなんて、元勇者の俺が言ってちゃあ、世界もOWARIだな・・・」