電車 1
「誰かに見られている気がする・・・。」
彼方は、博物館から立ち去った時から誰かの視線を感じていた。
立ち止まり、振り返るが誰もいない。
(気のせいなのか・・・?なんか観察されてるみたいな・・・。)
首をかしげながらもまた彼方は歩き出した。
(なんか人気が全くないな)
いつもこの駅にはほとんど人がいない。
各駅停車しか止まらないし、使うのはほとんど地方の人間といようなさびれた駅だ。
二十時ぐらいになるとホームに誰もいないなどざらだ。
だが今日はなにか違う。
空気は心なしか淀んでいるようで、身体中にじめっとしたものがまとわりついているような。
それにまだ誰かに見られている気がする。
近くから視線を感じるのにホームには彼方一人。
(気持ちわりぃし、頭もなんか痛くなってきたし・・・。さっさと電車こいよ。)
ズキンズキンと痛みだした頭をおさえながら時計を見るため携帯を取り出した。
二十時十分。
電車が来るのは十四分。
「今日はさっさと寝る。」
彼方は独り言をつぶやいた。
すると電車特有のガタンゴトンという音が遠くから聞こえてきた。
「まだ十分なのに。まぁありがたいか。」
彼方は時刻表より少しだけはやくに到着した電車に乗り込んだ。
車内に入って見れば誰もおらず寂寥感漂っている。
だがそんなこと、この電車ではいつものこと。
彼方は気にせず座席の端っこに座った。
「にしても頭は痛いしねみぃし・・・。」
壁に頭を預け、足を延ばしだらしなく座席の背もたれにもたれかかった。
ガタンゴトンガタンゴトン
目を閉じてみれば、動き続ける電車の振動と音が、いつもよりダイレクトに身体に響いてくる。
時間を忘れその心地よい振動と音に身体を預け、耳を傾ける。
ガタンゴトンガタンゴトン
(あれ?駅に止まったか?)
携帯を見れば十六分。
普通なら二分程度でつくはずの駅に止まっていない。
(遅れてんのか?それなら早く電車が来ても意味ねぇな。)
ガタンゴトンガタンゴトン
電車は同じ速度で彼方を運んでいく。
同じ音を奏でながら。
(やっぱりおかしい。いつもと速度は違わないのに、駅につかねぇし、遅延を知らせる車内放送さえ流れない。)
彼方はそう思いながら窓に目を向け、見開いた。
「おいおい、なんでこんなに暗いんだ・・・?なんにもみえねぇじゃないか・・・」
窓の景色は墨汁をこぼしたように真っ黒だった。
なにも見えない。
いくら田舎だといってもいつもは家々の電気や電灯、月や星のおかげでみえる夜の景色がまったく見えない。
「そうだ、運転席」
彼方は立ち上がり、運転席に行くために一両目への扉を開いた。
この電車は三両しかない。
彼方がのっていたのは二両目。
一両目に入ってみればやはり二両目と同じく乗客は誰もいない。
そして窓の外の景色も窓自体が黒く塗られたようになにも写していない。
車内の中の寂寥感も同じ。
そして、運転席には、
「誰もいない・・・」