ブレザーの青色が、青ざめた人の顔みたいだ。
嗚呼、黒髪美少女に出会いたい・・・。
俺は、青春に幻想を抱いていた。
親しい友人と語り合い、ちょっと彼女とか作っちゃったりして。
放課後は、カラオケとか行ったり小腹がすいたらファミレスへ、なんて。
そんなキラキラ輝くような夢の世界。
俺はそういうなんでもない青春を望んでいたんだ。
「望んでいたのに・・・・望んでいたのに・・・・・・どう言うことだよこれはぁッ!!!」
俺、古海一哉はどえらいワルさん(不良)に囲まれて涙目になっていた。
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4月某日。今日は高校の入学式だ。
受験も滞りなく終わり、今日からピッカピカの高校一年生だ。
いやー、環境が変わるだけでここまで回りの見方が変わるんだな。
地元でも有名な桜並木を自転車で通り抜ける。
今は、学校に向かっているので、当然ながら制服を着ている。
今年、俺が入学する高校は、私立斎条高校という。
校風こそ自由だが、立派な進学校だ。
自由な校風も売りの一つと聞いたが、この青を基調とした制服が結構お洒落なこともあってか生徒数がかなり多い。
家を出てから十五分。その角を曲がれば高校が見えるはずだ。
・・・おおー、デカイ。
私立というだけあって施設はかなりしっかりしてそうだ。
校舎4つあり
そのどれもが四階建て。体育館二つにグラウンドは三つ。
小山一つを丸々学校にした感じだ。
「やること徹底してるなー、姉貴は」
そう、私立斎条高校の理事長は、何を隠そう俺の実の姉、古海早雪である。
だからって、この学校を受験するにあたり卑怯な手は使わなかった。
普通に受ければ普通に受かるぐらいの学力は持っていたからな。
そうこうしているうちに、校門前へ到着。
自転車を駐輪場へ持っていき、いざ一年生の教室が詰め込まれた第一校舎へ!!というところで、そいつら(・・・・)に出逢った。
そいつらの風体は何年前の不良だよと突っ込みたくなるような、金髪にモヒカン。せっかくのブレザーなのに無理やり改造し、青の学ランというとても奇妙な出で立ちだった。
まだいたんだ、ああいうの。
「やぁれぇー!!! ぶっつぶせぇーー!!」
「うちの領域に勝手に入った罪、償って貰おうかぁ!!!」
「パンツ捲っても良いですかwww」
・・・何やってんだろ。あの上級生。
どうやら誰かがあの集団にとって不愉快なことでもしたらしい。て言うかパンツって・・囲まれてるのは女子なのか?
まあ、どうでも良いか。回りの人間もスルーしてるみたいだし。
そうして、歩き出そうとした時、彼女の声が聞こえた。
「――――この学校はお前たちの縄張りなのか・・・。それは悪いことしたな。」
はっきりと聞こえる張りのある声に引き寄せられ 、数人の生徒が声のする方へ目を向ける。
そこに居たのは、ただまっすぐな存在。
まっすぐな髪、まっすぐな視線。緩やかな曲線を描く胸・・・あ、まっすぐじゃない。
ただ、前髪を大きめの紙止めで留めているが、何があっても自分の信念は貫き通しそうな少女だった。
あの胸、とても同年代とは思えない・・・。
「ただ、私は紛れもなくここの新入生だ。この学校へ踏み入る権利はあると思うんだが、それじゃあダメなのか?」
問いかけるようにしながらも、自身を取り囲む男に向かって威嚇している。そんな印象を受ける言葉だった。
「し、新入生だぁ!? お前、自分の通り名分かって言ってんのかよ!?」
「通り名・・・? そんなのを名乗った覚えは無いんだがな・・? 勘違いじゃないのか?」
金髪パーマ青ランのビビった言葉に眉を寄せる少女。
マズイ、空気がピリピリしている。
死んだ親父とお袋が喧嘩する一歩手前に出していた空気だ。
それを悟った瞬間、俺の体は動いていた。
新調した鞄を放り投げ、少女と集団を分断するように・・・・・。
――――――――少女と向き合った。
「「「「 え? 」」」」
その場にいた全員のえ?が重なった。
いや、ちょっと待って。自分の行動に自分でストップかけたいのは自分自身なんですけど。
これじゃあ、俺は集団を庇ってる見たいじゃないっすかー。もうやだなー、あはははははは。
「ん? なんだお前は?」
少女が何かいったが、処理落ちしかけている俺の頭は暴走を起こした。
「こんなとこで喧嘩してんじゃねえよクソババァ!!!!」
「「「「「「 バカかてめぇはぁぁぁぁ!!! 」」」」」」
ちょーっと待とうか俺!!! 火に油注いでんじゃねぇよ!!!
回りの人の目が驚愕に見開かれている!!
ああっ!! 目の前の少女が少女と呼べない顔に!? あれは鬼か!?
助けを求めるように後ろのヤンキーを見る。
「「「・・・・・・・・・」」」
こっちも処理落ちかくそッ!!!
「フフッ・・・フフフフフフ・・・。お前、今私をクソババアと言ったのか・・・?」
「あー、いや、それなんだけどな。ちょっとこっちにも色々ありまして・・・・・勢いって言うか、癖っていうか・・・」
「言ったんだな?」
「・・・・イエス・・」
認める以外道はなかった。例えそれが棘の道でも。
少女が拳を振り上げる。
これが、この少女にとってこの学校における、最初の一撃だった。
「――――私は・・・15歳だッ!!!」
「分かってま――――ふべらっ!!」
ワンパンで生命機能の(三途の川が見える)ギリギリまで体力を持っていかれた。
消えていく視界の中に親父の姿が見え、こう言った。
『お父さん、よく母さんに殴られてばかりだったからなぁ。庇ってくれたのはいつも一哉だったっけな!!』
この、バカ親父が・・・・!!
一哉くんの両親は既に他界してます。
次もよろしくお願いします!!