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無知の恋Ⅱ

「きりーつ、れいー」

『終わりまーす』


終礼が終わって、クラスのひとがどんどん教室から出て行く。

私も荷物をまとめて教室を出た。今日は終礼が長引いてしまって、他のクラスはもう掃除のひと以外ほとんど居なかった。


私は帰宅部だから、そのまま玄関へ向かう。他のみんなも、剣道部の戸田くん以外は帰宅部だ。


玄関について、ワクワクしながら下駄箱を開けた。下駄箱の中には、淡い水色の封筒が一つ。思わず笑みがこぼれる。


私には、顔も知らない文通相手がいる。


相手の名前は悠馬(ユウマ)くん。苗字も、学年も、クラスも、そもそもこの学校に通ってるのかもわからない。でも、そんな彼と去年の秋頃から私は文通をしていて、そんな彼のことが私は


…好きだ。


会ったことも無いのに好きだなんておかしな話かもしれないけど、それでも、彼からの手紙が待ち遠しくて、手紙を読むたびにドキドキする。

中学の時の初恋もこんな感じだった。

だからこの気持ちは、恋なんだと思う。


家について、すぐに自分の部屋に行き、悠馬くんの手紙を開けた。

封筒と同じ淡い水色の便箋に書いてあるのは、たわいもない世間話と、友香のこと。


悠馬くんは友香の友達らしい。もしかしたら、友香のことが好きなのかもしれない。でも、それでもよかった。たとえ叶わない恋でも、文通は続けていたかった。"舞は優しいね"悠馬くんのその一言だけでも私は、とてもとても嬉しかった。


***


朝、学校にきてうちばきと外履きを入れ替えてから、悠馬くんへの手紙をそっと下駄箱の外履きの上に置いた。

まだ人の少ない静かな校舎の階段を登って、自分の教室へと行く。

教室にはまだ数人の生徒しかいなかった。

その中の何人かと挨拶を交わしながら自分の席について、朝の準備をしていると、クラスの中心的な女子グループが登校してきた。あまり縁のない子達だから、ちらっと見ただけで自分の準備に戻った私をその女子グループの中の1人が呼んだ。


「木梨さん。」


呼ばれなれない苗字で、しかもあの女子グループの子に呼ばれ、すこし驚きつつも笑顔で振り向いた。


「なに?」


「あのさ、修学旅行の班なんだけど…」


振り返ってその子の顔を見て思い出した。その子はもうすぐ行く修学旅行で同じ班の子だ。


「うん。どうしたの?」


「あのさ、うちの班だけまだ班長決まってないんだよね…、だから、木梨さん班長になってくんない?お願い!」


顔の前で手を合わせながらそう言われてしまって、本当はそんなの苦手なのだが、断らなくて、つい引き受け手しまった。


「わかった。いいよ。」


「ほんと?!ありがとう、木梨さん!」


そういってその子は女子グループの元へ戻って行った。

それを見送ってから少し後悔する。頼まれると断れなくて、なんでも引き受け手しまう。私の悪い癖だ。


(茜にばれたらまたドヤされるなぁ…)


そんなことをぼんやり考えながら、やっぱり人に感謝されるのは嬉しいと思った。


お昼休みになって、いつものようにみんなのいる屋上に向かった。

屋上の扉を開けると、そこにいたのは河本くんだけだった。


「あ、木梨さん。」


「まだ、河本くんだけ?」


「うん。茜ちゃんと真島さんはわからないけど、春樹は居眠りで呼び出しくらってる。」


「あははっ、戸田くんらしいね。」


河本くんはいわゆる草食系男子という感じで、おとなしく物腰も柔らかで、優しい。クラスの中心的な存在ではないけど、友達もそこそこいる。そんな感じ。

その一方で、戸田くんは明るくて、クラス行事ではみんなを引っ張って行くような、クラスの中心的な存在。それに、頭はいいとは言えないけど、剣道の腕は確かで中学の時は全国まで行ったこともあり、この高校もスポーツ推薦で入ったらしい。

ほんとに河本くんと戸田くんは全然違う。

私と茜と友香も結構性格は違うけど、河本くんと戸田くんは真逆だからどうしてあんなに仲がいいのだろう?


そんなことを思っていると、屋上のドアの開ける音がした。振り返ると同時に友香と茜の声が聞こえた。


「おまたせ、二人共。」


「お、明良も舞もいるじゃん。てか、戸田は?」


「春樹は呼び出され中だよ。」


「春樹また呼び出されたの?」


「居眠りだって」


「ほんっとにアイツはどうしようもないわね。」


そんな会話をしながら2人は私と河本くんの近くに座った。

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