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プロローグ
夏の暑い日だった。
蝉が鳴いてて、雲一つ無い晴天だった。
「早くっ!」
「まってよー!」
私と叶香、2人で遊んでの帰り道。
車のあまり通らない道を走ってた時だった。
車道の向こう側、幼馴染の透が見えた。
「あっ、おーい!」
そっちに向かって駆けて行った。
周りなんてみてなかった。
車になんて気がつかなかった。
「友香!!」
ふいに右手を掴まれた。
一瞬だった。
私の体が後ろに下がるのと同時に、叶香の体が車の前に投げ出される。
透の叫ぶ声が聞こえた。
なんて言ってるかはわからなかった。
叶香の体が車にぶつかる音がした。
それから何も聞こえなくなった。
あんなに煩かった蝉の声も、
透の叫び声も、
集まってくる人たちの声も、
なにも。
「叶…香…?」
静寂の中、赤い血溜まりの中に横たわる叶香が目に焼き付いて離れなかった。