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TIME6

教室を出た後、俺は図書館へ行った。なんらかの情報を得るには、図書館しかないと思ったから。そこで、何百ページもある本や、色々な情報が示されたパソコンの画面と一時間程睨めっこし続けたが、結局死を回避する方法は何も分からなかった。

「……帰ろ」

席を立ち、荷物をまとめて図書館を出た。家に帰る途中、俺は夕日がよく見える丘公園に立ち寄った。


――ふと腕時計を見ると18時になっていた。


「はぁ……」

何回ため息をついたか分からない。死ぬっていう運命を変えられる事なんて現実的に無理な話……なのか?いや。考えろ俺、思考を張り巡らせろ。きっと何かあるはずだ。


親父の時は――


「お母おはよう」

「あら恭哉、今日は早いのね。まだ6時半よ?」

「んー。なんか目が覚めた」

「お、今日は早いんだな」

「あ、お父おはよ」


親父が事故で死んだ日の朝――


俺はいつもより早く起きて、いつもより早めの朝ごはんを食べた。この時の親父の左頬の赤字はまだ"1"だった。


6時45分。

 

俺は親父と母さんと三人でテーブルを囲んで朝食をとっていた。俺がふと親父の顔を見た瞬間、親父の左頬の赤字が"0"になった。

「0…」

思わず声に出してしまった。

「ん?恭哉、何か言ったか?」

「い、いや。何も言ってないよ」

ただ数が0になっただけだ。だから、俺は気にしないようにした。


7時40分。


俺は学校へ行く準備をして一階へ降りた。降りると玄関で親父が靴を履いていた。

「お父、今日は早いの?」

いつもより早く出勤する親父に話しかけた。

「あぁ、会社を開ける当番の人がいないからな。父さんが開けないといけないんだ」

と言いながら親父はドアノブに手をかけた。

「じゃ、行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい」

俺は玄関を開けたまま、親父の後ろ姿を見ていた。いつもは最後まで見送る事なんてないのに。親父の後ろ姿が見えなくなったから俺は家に入るため、踵をかえす。

「そーいや、あの"0"って何だったのかな…」

と俺があの赤字について考えようとした時に家の前の道路から、ドンッという車が人にぶつかる鈍い音が聞こえた。

「! ……まさか」

お父が!? …嘘であってほしい、と思いながら音の聞こえた道路へ、靴も履かないまま走った。俺の目に飛び込んできたのは、人だかり。 その中心にいたのは頭から血を流して横たわっている親父だった。

「お父! お父!」

俺は人だかりをかき分けて親父の元へ行った。

「…あ、きょ、や」

「お父!」

「…ひだ、りほ…をひだ…てで……」

「え、ひだ…なに?」

あまり聞き取れないため俺は親父に聞き返したが、その言葉を最後に親父は喋らない。お父、と声をかけてもピクリとも動かない。

「で、電話……」

俺は急いで家に戻り家の電話で救急車を呼んだ。


その時家の壁にかけられていた時計は7時45分を示していた。


その後――親父は帰らぬ人となり、俺の目はこの日以来『人の寿命が見える目』になったんだ。


ここまで思い出して俺はある事に気付いた。


親父の左頬の赤字が"0"になった時間が6時45分。そして事故に遭ったのが、7時45分……。


「"0"になっても一時間は大丈夫なのか。」

思っていることが口から出てしまった。だが、気にはしない。あとは、家に帰ってパソコンで情報を得よう。そう思いながら、俺は少し早歩きで家に帰った。


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