TIME5
「――恭哉?」
ふと我に返ると目の前には俺を心配そうに見ている幼なじみの涼がいた。
茶髪で両耳にピアスをつけて、目力がすごい。ちなみにうちの学校は染髪OKだが、染めている人は数少ない。俺は今まで学校で見た茶髪は…涼しかいない。だから、周りの人達に誤解されやすい。本当は友達思いの良いやつだ。涼は小学校からの付き合いで、俺の前の席。そして唯一俺を気にかけてくれる。
けど、人の寿命が見える事については知らない。
「大丈夫か?」
「…何がだよ」
俺がとぼけた風に返事を返すと
「いや。何でもない」
と深入りはせずに、それよりお前、と涼は言葉を続ける。
「前髪切れば? 長いとなんか、暗く見えるし…」
最後のほうは小さすぎて聞きにくかった。
「んー…その内な」
あいまいに返事をして本に目を戻す。
「まぁ、何か悩み事あったら遠慮なく俺に言えよ? 幼なじみなんだからな」
とかなんとか言って涼は前を向いた。
本当は、前髪切りたいさ。涼が言った通り、暗く見えるのは俺も知っている。だけど、少しでも人の寿命が目に入らないように前髪は伸ばしているんだよ。
言えたらどんだけ楽になれるだろうか。けど、言ったらお前まで離れていってしまいそうな……そんな気がするんだ。
涼が前を向いたと同時に、担任の先生が教室に入って来た。そして、いつも通りの日常をいつも通りに過ごした。
放課後――16時15分。
……結局あの事が気になりすぎて、授業の内容を全く覚えてない。来週から定期テストというのだけは聞き取れた。更に憂鬱な気分になる。
「じゃ、恭哉君明日ね」
彼女は鞄を持つと俺の方へと振り返って、笑顔で言った。
「うん、」
また明日、と言ったと同時に左頬の赤字が"1"になった。
…あと1日。あと1日でどうすればいいんだよ……
「おーい恭哉! 一緒に帰ろうぜ」
鬱になりそうな俺とは違い、涼は元気いっぱいだ。
「ごめん。調べたいことがあるから」
「だったら俺も…「いや。先、帰るわ」
「わ、分かった」
涼の言葉を遮って言ったからきっと怒ってるのかなと思われてそうだ。そんなことを思いながら、俺は涼を置き去りにして足早に教室を後にした。




