TIME10
「恭哉、本当にそれでいいのか? 一回きりだぞ」
「俺は藍を助ける。それに……」
「それに…?」
俺が続きを言うのを待っている涼だが、「なんでもない。」と強制的に話を切った。
俺は左手で藍の左頬を包み、赤い数字『寿命』を擦るように左手を左右に動かした。
必死に「消えろ」と念じながら、必死に……。
「――恭哉、もういいんじゃないか?」
涼の声で我に返る。
「あ、ああ。」
藍の左頬から手を退けるともう何も、赤い数字は消えていた。
「消えたか?」
「うん。」
「ふー、これで安心だな。」
「…なあ、涼」
俺は気になったことを聞いた。
「もしかして、俺が『人の寿命』が見えること知ってたのか?」
「知ってた。お前口には出さないけど、顔に出るからすぐ分かったよ。何年幼なじみやってると思ってんだよ。」
涼は呆れ顔になりながら俺に言った。
――――――――――
「恭哉おはよう!」
「おはよう涼。」
「げっ、恭哉前髪切ってるし……」
「悪いかよ。」
「今まで言わなかったけど、髪切ったら俺より美形なんだよな……。」
「ん? 小さくて聞こえなかった。」
「なんでもねーよ。」
涼と二人で歩いていると、「おーい! 待ってー!」と後ろから藍が走ってきた。
「おはよ。恭哉君前髪切ったんだね。」
「ああ。」
こんなしっかり人の顔を見れて他愛ない会話ができることが、こんなにも幸せとは知らなかった。
俺の目はあの日以来、人の寿命を映すことはなくなった。一回きりしか使えない『消す』ということを使ったから『見ること』もなくなったんだよと、涼は俺に言った。
けど、なくなった理由なんてどうでもいい。こんな幸せで楽しい日常を送れるのなら。
そう思いながら藍を見た。
――あの日藍に伝えられなかったあの言葉。ずっとずっと伝えられなくて俺の中にしまい込んでいたあの気持ち。今なら言える気がする。
「あのさ、藍」
俺は口を開いた。
これにて、タイムリミット完結です。最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。




