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25歳、人生終わりかけた私を雇ったのはバリキャリお姉様

掲載日:2026/05/14

大学を卒業してから社会人として働こうとするもパワハラが酷すぎて1ヶ月で退社。

その後すぐに再就職しようとするも難しく、契約社員をしながら正社員をめざす日々。

年収240万、これといって特技がなく体力がない私は副業もできず…節約をしながら生きるので精一杯だ。


そんな既にギリギリで生きている私に追い打ちをかけたのは、ポストに入っていた『家賃値上げのお願い』だった。この築20年のアパート、気に入ってはいるが値上げ!?というツッコミをせざるを得ない。大家さんも最近の物価高で大変なんだろうけど、多分私のほうが緊急事態。もう地方とかに引っ越ししたいけど、引っ越し資金も惜しい。


そんな状況を、数少ない友人にカフェで愚痴っていたときだ。

突然話しかけられたのは。


「ごめんなさい、お話聞こえちゃって」

サラサラの髪に、雑誌とかにでてきそうなモデル顔負けのスタイル、大きい瞳に高い鼻筋、どこを切り取っても絵になる女性が私に話しかけてきた。

絶対違う人種!

「えっと、何ですか」

「お仕事困ってるって、お金に困ってるって聞こえてお声がけしました」

お姉さんはにっこりと微笑むが、怪しすぎる!

私と友人は顔を見合わせ、頷いた。やっぱり怪しい。勧誘か詐欺だ。

「あ、私たちもう行くので…」

とトラブルを避けて、やんわり逃げようとしたところお姉さんが私の腕を掴んだ。


「怪しいって思うのは分かります!」

いや、腕まで掴んでさらに怪しいよ!?私が腕を取っ払おうとするも、お姉さんの力は凄まじかった。

「私の家の家事をしてほしいの!」

「え?」

周りの人がみんな振り向くくらいの声で、お姉さんが叫んだ。さすがに周りの目もあること、カフェでオープンスペース、友達もいるので、危ないことにはならないだろう。


3人で席に座り直し、一旦話を聞いてみることにした。

「ごめんなさい、急に話しかけて。切羽詰まって状況で、話が聞こえてきたから。」

お姉さんは本当に申し訳なさそうに話し始めた。

「まず信用してもらうために、自己紹介しますね。私、神崎美緒といいます。経営コンサルタントしてます」

渡された名刺の会社を調べると、かなり大手のようだ。

「名刺ありがとうございます、私は山内といいます。」

「私は山内の友人の中山です。」

まるでマッチングアプリで出会ったようなぎこちない挨拶。

「貴重な時間を取らせてしまってごめんなさい、さっきも言ったけど、私の家の家事をしてくれる人を探しているんです。住み込みも可能です。家賃の値上げと、お仕事に困ってるって聞こえたから…」

「いやでもいきなり初対面の方に住み込みとか、家事とか言われても…」

「引っ越し代も出します!」

「ちょっとまって、神崎さんはなんでそこまでして家事してくれる人を探してるの?家事代行とかもいますよね?」

中山が食い気味で質問すると、お姉さんはコーヒーを一口飲み、一息ついた。


「私すごく家事が苦手なの、あと仕事が忙しくて家にゆっくり居れるときも少ない。家事代行を雇ったことはあったんだけど、毎回違う人が来るのもなんか違うなって…あと1回窃盗にも遭っちゃって…部屋も汚いし、毎日コンビニ飯だし…」

「それで、なんで山内なんですか?」

私が話さずとも中山が話してくれる、心強い。

「なんでって…なんとなく?信用できそうって思いました。」

「家事は得意ですけど…」

そう私がいうと、神崎さんは目をキラキラさせながら私を見た。

中山は「怪しい」と思っていそうな目を細めながらお姉さんを見ていた。

「わかりました、信用してもらいたいから、2人で私の家にきてくれませんか?時間があればですけど。2人なら安心じゃないですか?すぐそこなの。」


中山と私はまた顔を見合わせた。大丈夫か??とお互い思っている。

すぐそこ、と言われたが、ここは東京でも一等地。本当だろうか。

先に口を開いたのは中山だった。

「家に行ってみて、条件聞くくらいなら良いんじゃない?山内本当に困ってるし。」

神崎さんはその言葉に大きくうなずいた。

「じゃあ…」

私は神崎さんにかけてみることにした。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「神崎の家、ここですか!?」

「そう」


駅徒歩3分、めちゃくちゃ綺麗なタワマン。

私の駅徒歩20分、築20年のボロアパートとは大違いだ。

エレベーターに乗り、35階についた。

「部屋の中見て、引かないでね」

と神崎さんが言いながら、玄関のドアを開けると…

玄関からまず汚かった。

「リビングが問題で…」

私から見たら玄関もだ。

「お邪魔します」


私たちが中に入ると、ゴミ屋敷ではないが、リビングはものが散乱していた。またいつ引っ越ししたのか分からないが、段ボールが積まれていた。キッチンは全く使ってないのか綺麗だ。机の上は書類が散乱して、服も脱いだままのものがあった。


「確かに、汚いかも」

中山が小声で言う。

「こんな感じなんです、だから家事代行してくれる人を探しています…」

神崎さんは少し恥ずかしそうに言った。

「部屋は一部屋使ってないから、そこに住んでもらっても大丈夫です。そこは全く開けてないから、きれいなはず。」

「なんで使わないのにこの家にしたんですか」

中山は全て聞かないと気が済まないのか。私が聞くより先に中山が質問していく。

「仕事頑張るぞって、ここのローンを払うために稼ぐ!って決めて良い部屋にしたんだけど…」

「余ってると」

「そう!」

本当にリビングもざっと20畳以上あるだろうか(物がおおすぎて狭く見える)、一人にしては大きすぎる。

「料理、掃除、洗濯をしてくれて、住み込み可能。住み込みの場合は月20万。あ、勿論他の生活費は全部私が出します。もし住み込みが嫌なら、月25万。どうですか?」

「20万!?」

「少ない?」

「いや、多すぎます」

私は願ったり叶ったりだ。しかも家賃も生活費も払ってもらえる。私と中山はまた顔を見合わせ、中山が私の肩にポンッと手を置いた。

「山内、神崎さんにお世話になりなさい」

「やったぁ」「えっ!?」

神崎さんと私が同時に発した。

「こんな条件、中々ないよ。山内家事好きだし良いじゃん。」

「勿論、今の仕事続けても大丈夫ですし。」


2人が私を見つめ、私も覚悟を決めることにした。

「…お願いします」


神崎さんは私の手を握って、「よろしく〜!」と手をぶんぶんと振った。痛い。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


そこからもう1ヶ月以内には神崎さんが手配してくれた引っ越し業者が来て、アパートを解約。神崎さんの家から帰宅するときには、やっぱり他人と住むのは?とか不安も出てきたが、私もなんだか神崎さんなら大丈夫という謎の信頼があった。

神崎さんと連絡先を交換したあと、神崎さんは雇用契約書もご丁寧に作ってくれた。また、私が負担にならないなら仕事も今のままで良いと言ってくれた。


神崎さんとのルールには、家事は私、生活費家賃は神崎さん。お互い他人は連れ込まない。契約解除する場合は1ヶ月前に伝える。




ただこれだけだった。とにかく私に家事をしてくれたら良いらしい。神崎さんは出張などもあり、自宅にいない日が多々ある。カレンダーを共有して、神崎さんが家にいるときはご飯を作る。

家事が好きな私にとっては、なんてことないルールだ。


そして今日から、私と神崎さんの生活が始まる。


「今日からよろしくお願いします。」

「待ってたよ、よろしく〜!」

いつ見ても美しい神崎さん、眩しい。


「荷物は全部葵ちゃんの部屋にいれたよ」

「ありがとうございます!」


神崎さんは山内さんというのは他人行儀すぎて嫌だ!ということで、私のことは下の名前で呼ぶことにした。私は神崎さん、でと言ったがそれも拒否され、「美緒さん」になった。


「美緒さん、この前来たときより散らかってます…..?」

部屋を見渡すと書類が床まで散らかっていた。


「そうなの〜」

そう言いながらさらに書類を床に投げていく美緒さん。


「美緒さん、とりあえず私がリビング整理整頓するのでゆっくりしていてください。」

「あ、じゃあ自分の部屋で仕事してる!」

「掃除機とかかけても大丈夫ですか?」

「大丈夫」

美緒さんはそういうと自室に入っていった。


「よし、頑張りますか」

私は気合をいれ、掃除に専念することにした。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「わ、めっちゃ綺麗になってる!内覧にきたときくらいに綺麗!」

美緒さんはリビングにはいってくると、目をキラキラさせながら部屋中を見渡した。

「今夕食作ってます、今日は簡単なものですけど…」

「えっ!?」

私はテーブルにトマトパスタとキノコのサラダ、玉ねぎスープを並べた。

美緒さんは料理はしないけど、お洒落な食器を買い揃えているため見栄えが良い。

「これ、全部手作り…?」

美緒さんは心底驚いたように私に聞いてきた。

「はい、手作りです。」

「早く食べたい」

美緒さんのその言葉に、私は思わずふっと笑った。

「食べましょうか。」


人と手料理を食べるなんて何年ぶりだろうか。

「ん〜〜〜〜!めちゃくちゃ美味しい!」

「お口に合って良かったです」

美緒さんは本当に美味しいそうに食べてくれて、私も嬉しい。

「なんかさ、幸せだね。」

美緒さんは私を見て微笑んだ。

「誰かと一緒にお家でご飯、最高じゃない?」

美緒さんは頬に手を当てながらしみじみと言う。

「確かに、良いですね。私も一人の時より美味しく感じます。」

「雇用契約書には書かなかったけど、なるべく家にいるときは2人でご飯食べたいね」


美緒さんは何となく発した言葉かもしれないが、私はなんだかとても嬉しかった。顔がにやけそうになるのを頑張って隠すくらいに。


「美緒さん、なるべく家に帰ってきてください」

私がそう言うと、美緒さんも少し照れたような表情を見せた。


私の家政婦生活はまだ始まったばかりだけど、楽しい生活になるのを確信している。


明日の夕食は、何作ろうかな。







ありきたりな展開?ですが、こういう女性2人のゆるいお話が大好きで書いてみました。ほぼ私の願望です。

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