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ベビーパレード


「あれ、ずいぶん、大きなあかんぼもおるの……」

すだちのおじいさんが、ふしくれだった指でかごの一つをさしている。

「これ、ひとをゆびさすもんではないですよ」

すだちのおばあさんが、おじいさんの指を軽くたたく。

「よく見んね。あれはきっと、あかちゃんのおにいちゃんだろ」

「……」

おじいさんは、ちょっとふるえる手で首からさげていたまるい老眼鏡をつまむと、かける。

顔を、ゆっくり進む汽車のかごのほうに突き出す。

「ありゃま、ほんとだ。ちいとひねとる。おにいちゃんだ」

「あかちゃんばっかずるーいとかいって、いっしょにのっけてもらったんだろ……」

とおばあさんがいう。

「あ、そうか」

おじいさんは歯のない口を大きくあけて笑った。

 「にいちゃんばっか目立って、あかちゃんがみえんがね……」

おばあさんは口をとがらせる。

あかんぼうをおしつぶすようにして、にいさんオレンジが、ばんざいでもするみたいに短い両腕をあげてぴょんぴょんとびはねている。

でも、あかんぼうも負けずに、まねをしてからだをゆすっている。自分もとびはねているつもりなのだろう。


最初はライムは、目をかがやかせてベビーたちを見ていた。だが、そのうち、かがやきは失せ、あざやかだった顔や体の黄緑色もくすんでしまった。

 ライムはうなだれ、ためいきをついた。彼は母親の顔を知らないのだった。父親の顔もだ。汽車の上のベビーたちのように母親に、いや、ほかのだれからもやさしく見つめられたり、だきしめられたりした記憶はない。

兄弟だっていない。いやいるかもしれないが、どこでなにをしているかなど、まったくわからなかった。

目をつぶる。

……暖かいオレンジ色の光……、頭の上からふりそそぎ、全身をやさしくつつみこむ……遠い遠い記憶……

でも、いきなり、その安らぎは断たれる。

頭の上のあたりにするどい痛みを感じる。

叫びそうになり、目をあける。激しく首を横にふる。

何度もなんどもみる夢だった……。


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