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4 フルーツトレイン


ライムは見物客の列にくわわった。

再び、笛みたいな音がいきおいよく響いた。

歓声がわき起こる。

つづいて、にぎやかなまるで、ものすごい数の小鳥のさえずりみたいな大合唱がわきあがった。

みないっせいに音のほうに顔を向けた。木立の向こうから、カラフルでおしゃれな汽車がゆっくりと現れた。煙突からは、うすい桃色をしたわたがしみたいな煙がもこもこと立ち上っている。煙が漂ってくると、桃の甘い香りがした。

ゼリー製の車体はぷるんぷるんとはずむように動く。煙突は輪切りにしたパイナップルを積み重ねたみたい、車輪はオレンジを輪切りにしたものに似ていた。

屋根のない客車には、あふれんばかりのフルーツのあかちゃんたちがのっていた。みかん、梨、 柿、 ぶどう、 キウイ、栗、 いちじく、 りんご……。

大きな草木編みのかごのなかで、おかあさんにおとなしくだっこされたり、おとうさんのひざの上でげんきよく体をゆすったりしている。ベビーのちいさな手をやさしくもって、みなに手を振り返しているママもいた。

汽車はもう一度、元気いっぱいの汽笛を鳴らすと、両側を人々が埋め尽くす通りをゆっくりと進んだ。人々の歓声がさらに高まる。

 「わあ、かわいいっ。!」

「いっぱいだね」

「ほんと、今年は豊作だっ」

青空や、緑に輝く公園に負けないあかるい声がひびく。

汽車はあふれる日差しの中、かわいい、今年のとれたてのいろんなフルーツを乗せて、よく見てもらおうと、公園のあちこちを練り歩くのだった。きょうはいろんなフルーツの生まれたばかりのベビーをお披露目ひろめする日。この「ベビーパレード」が「大収穫祭」の目玉の一つなのだった。

ベビーパレードは、背伸びしていたライムのすぐそばまでやってきた。

背が低いので、よく見えず、ぴょんぴょん飛び上がった。

「ははっ、ほんとやかましいな……」

といいながらもライムは思わず、顔をほころばせた。

平たいかごの上で、ぴょんぴょん、すごいいきおいで、とびあがるあんずの赤ちゃんがいる。編立あみたてなのか、かごからは新鮮な木の香りがただよっている。ジャンプの衝撃でにおいたつのかもしれない、とライムは思った。

「こらこらあぶない、落っこちちゃうよー」

あんずのおかあさんは、必死にあかちゃんをおさえる。

「あうあう、あぶー」まるでふしぎな歌でも歌っているかのようなびわのあかんぼう。おかあさんはやさしくほほえみながら真似をする。

まわりがこんなににぎやかなのに、ママのうでのなかですやすや眠っている柿のベビーもいる。ママは寝顔ねがおをやさしく見つめながら、汽車のリズムにあわせるように、ゆったりとベビーをゆする。

チェリーのふたごベビーはそろって、ちいさなお口をせいいっぱいあけて、おおあくびしている。

やまぶどうのベビーたちをみて、ライチのカップルが指をさしている。

「あれ、あの子たちはみつご?、四つ子……そんなわけないよね……」

若い女のライチが声をあげる。

「ええと……」

若い男のライチが真剣な顔で数え始める。

「四つ子、五つ子、六つ子……」

「七つ子、八つ子、九つ子、……」

若い女のライチも張りのある高い声をあげる。

「十三、十五、十六……ああ、もうわかんないや」

と男ライチが音を上げる。

カップルが数え終わらないうちに、やまぶどう親子をのせた車両は通り過ぎてしまう。

「ほらほら、おねむのベビーもいますから、大声はひかえてくださいねー」

汽車から身を乗り出して、両方の手のひらを下にむけて、なにかをおさえるみたいなしぐさをしている人がいる。カラフルな法被はっぴをまとい、お祭りの係の人なのだろう。


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