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2 ジャンボハーベストマン


そのときだった。

「おれっちにまかせろっ!」

いちごたちの視界のすみに黄緑きみどり色のちいさなボールみたいなものが飛びこんできた。いちご家族たちは空にむけていた視線をそちらに移す。

それはライムの精のライムだった。いきおいよく走ってきたライムは「とおっ!」と叫ぶと、ほぼ垂直に大きくジャンプした。ライムはすごいジャンプ力をもつのだった。

ライムは上にあがりながら、ゆらゆらと空をのぼっていくいちご風船に短い手をのばす。でもいくらすごいジャンプ力でも、とんでいく風船をつかまえられるものではない。

だが突然、風船が止まった。

ジャンボハーベストマンの大きくひろげた左腕に押さえられた格好で止まっている。

「よっしゃ、ラッキー!」

ライムは空中で何とか体勢を変えハーベストマンの胴体につかまった。猿みたいにするすると巨大人形をのぼっていく。そして大木みたいなうでのつけねにぶらさがった。風船は巨人の指の間にはさまるように、ひっかかっている。

ライムはうでにぶらさがって、うんていみたいにしながら、巨大な手に向かう。ひじのあたりまでくると、腕によじ登り、短い両腕をあげてバランスを取りながら、腕の上を歩く。

天から降り注ぐ何かのめぐみを受け止めようとしているかのように、ハーベストマンの手のひらは上に向けられている。


手首のところまで来ると、ぶあつく巨大な手のひらによじのぼった。ちょっとぐらぐらするので、バランスをとりながら慎重に指先の風船に向かう。

ふと、立ち止まって下をみおろした。豆粒のようにみえるおおぜいのフルーツたちが、かたずをのんでライムをみあげている。

(わあ、おれっち、めだってる。スーパーヒーローみたいだっ)

ライムは、片腕をまっすぐ空に向かって突き出し、ヒーローポーズを決めた。次の瞬間、勢いよく飛びあがると、宙返りをうってみせた。ぴしっと着地する。

「決まったっ!」

(すっごく高くとんだからみんなに見えたはずだぞっ)

観客たちの反応を見降ろそうとしたときだった。

ぐらっと、巨大な手のひらがかたむいた。さっきの大宙返りの着地の衝撃でハーベストマンのうでのつけねあたりにひびが入ったのだった。

ライムはバランスをくずして、あわててふせた。


みしっ、といやな音がした。

いきおいよく伏せた衝撃で、腕のひびがひろがったのかもしれなかった。ぐら、と大きく手のひらは傾きだした。

そのひょうしに、いちご風船のひもは巨大人形の指先から外れて、ふたたび青空へと上っていった。

「ああっ」

ライムは飛んでいく風船にむかって片手をせいいっぱい伸ばした。風船はからかっているみたいに、からだを左右にゆらしながら遠ざかっていく。

とたんに、ずるっと、体がうしろからひっぱられたみたいにさがった。

あわてて、のびっぱなしの爪をたてて両手でかじりつくようにする。

イチゴの風船は元気よくのぼっていき、どんどん小さくなっていった。

でもライムは倒れ行く人形の手のひらにつかまっているのに精いっぱいで、もはやどうすることもできなかった。

手の傾きはさらに大きくなっていく。

ライムはさらに力をこめてつめをくいこませた。

べりべりべり……。不気味な音がひびく。

必死にはいのぼって。中指のつけねに両腕をからませる。

だが……ばりっ! という大きな音とともに、がくん! と一気に巨大な腕は落ちた。

ライムは声をあげることもできなかった。

でも腕はかろうじて胴体とつながっていて、ぶらさがって重たげに揺れた。

ライムは気を失いそうだったが、しぶとく巨人の指にかろうじてつかまっていた。


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