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7.初恋王子は求婚しました?!







「謁見の儀お疲れ様!」



 謁見の儀を終えてダンスホールに向かうため再度ユージスにエスコートされて進んだ先で、ディーンお兄ちゃんは満面の笑顔でねぎらいの言葉をかけてくれた。




「ありがとう。ディーンお兄ちゃん」




 ユージスはそっと脇に離れると、少し離れた位置でどうやら私たちの護衛もしてくれるようだ。

王族謁見の儀では王族がデビュタントを迎えるレディに祝福の言葉をかけてくれたのだが・・・




なんだか不思議な緊張感を感じたのだった。




  王の玉座に腰掛けた国王陛下は確かに威厳ある方だったのだけど・・


私に話をするたびに咳払いが特に多かったように感じる・・


王妃様はとっても見目麗しい女性で気品もあって素敵な方だったのだけれど・・・


一言離そうとするたびに少し震えていらっしゃった気がするのよね・・


王妃殿下の横に控えていらっしゃったのは第2王子クリシス・メルリド殿下であらせられるのだろう。


国王陛下と同じさらさら金髪と王妃様と同じ緑がかった青のシアン色の瞳の麗しいお姿なのだけれど・・


最初はにこにこされていたのに突然顔色が真っ青になっていらっしゃったわ・・


 ディーンお兄様は終始国王陛下の横で控えてずっとにこにこされていらっしゃったけれど・・


お三方はもしかして今日はお体の具合がよろしくないのかしら・・




「ルーは何か心配なことでもあったのかい?」



私が先ほどの謁見の儀のことを思い返していると、彼は心配そうにのぞき込んできた。




「ううん。私は何ともないのだけれど・・・陛下や王妃様たちのご様子が・・ね?


もしかして今日はお体の具合がよろしくなかったのではないかと感じたの。


この後ダンスもあるし・・夜まで続くでしょう?お体がもつか勝手に心配してしまったの・・」




「あぁ!そうゆうことだったんだね!


大丈夫だよ!きっと一時的なものだと思うよ!さっき話していた時は全然元気だったから!」




「そうなの?それならよいのだけど・・それよりもまだ謁見の儀の最中なのに、


ディーンお兄ちゃんは抜けてきてしまって大丈夫だったの???」





私のことよりディーン兄ちゃんの立場の方が心配で顔を上げて見つめると

ぎゅーっとまた抱きしめられて何故かとってもご機嫌なようだ。




「ありがとう♡ルーの時だけで俺はよかったんだよ!今後はそうはいかないかもしれないけれど

今回は大丈夫!」




(???)



「かわいいルーを誰かに見られるのも嫌だし先ほどの部屋に案内するね」


よくわからない返答になんと答えるべきか思案していたが、


ディーンお兄ちゃんは私を抱きしめながら私の耳にもちゅっと唇を落し、囁くように話しかける。


そっと私から離れると私の左手を優しく彼の腕にかけてエスコートしてくれた。



(・・・・ディーンお兄ちゃん・・・最高すぎますわ!!)








 ざわざわと人の声が大きく耳に届き始めたので、そろそろ移動するべきなのだろうか?


客室でゆったり寛いでいる間、少しだけディーンお兄ちゃんの話を聞かせてもらった。





 ディーンお兄ちゃんの美しい白髪は、王国でも王家の【覚醒者】にしか生まれない稀少な存在で、


私よりどうやら稀少価値が高いらしい。


だからこそ狙われることも多かったらしくて、狙われて深手を負った彼を助けたのが私だったらしい!


瀕死の傷を負ったのはあの一度きりだったと聞いて、私は心から安堵した。




 王国に管理されている図書館には、【覚醒者】に関する文献が


細かく残されているようなのだけれど、私はまだ読んだことがないから初耳だった。


そういえばアシュも【覚醒者】の話だけど、

他の属性の【覚醒者】の話は教えてくれなかったわね・・


何か勝手に話してはいけない決まりがあったのかしら??






「【覚醒者】なら国に重宝されるはずなのに、

なんで暗殺者に狙われてしまったのですか?


特殊魔法のことを知られてしまったのでしょうか??」





「その話は詳しい話になってしまうから、

時間が足りなくなってしまうんだよね・・」




ディーンお兄ちゃんは、私の疑問に少し困ったように微笑みながら私の頬にそっと触れた。




「どうやら儀式も終わったようだしダンスボールに向かおうか。」




 すっと立ち上がると、ディーンお兄ちゃんは私の左手をそっと引き寄せダンスボールへと向かう。



その後ろを少し離れた後方からユージスもついてきてくれるのがわかった。





「あれ?ほかの方々の姿が見えないわ?」





あたりを見回すが、先程の令嬢たちの軽快な話声は遠くに小さくしか聞こえない。





「大丈夫。私が王族だから入口が違うんだよ。


ルーは気にしなくてよいんだ。」




ディーンお兄ちゃんは微笑みながら私を宝物のように扱い熱い眼差しで見つめた。




「ルー!もうすぐ・・・もうすぐ始まるよ!・・・


驚くかもしれないけれど、

俺はこの日を誰よりも待ち望んでいたんだ。


ルーずっと俺のそばに一緒にいてね?」




(驚くようなことが今から起こるということ??)




 想像できず、ただ彼の瞳を見つめることしかできなかったが、迷いは全くない。




私は今日がこんなに素晴らしい日になるなんて思ってもみなかったのだ。


1週間前は絶望を感じて一人で何回も泣いた。


それでも家族を悲しませたくなくて、普段は明るく振舞った。


ここでディーンお兄ちゃんとまた再開できるなんて、私にとっては奇跡としか言いようがない。




 再開してからのディーンお兄ちゃんは優しさと甘さしか感じない。


過ごした時間は短くても確かな絆も感じる。





「さぁ・・始まるよ!行こう俺のお姫様♡」





「はいっ♡」








 開かれた扉の先は緩やかな階段があり、階下では大勢のデビュタント参加者が会場で待機していた。


煌めくシャンデリアと豪華に飾り付けられた会場にゆっくりと歩みを進め、

ディーンお兄ちゃんと私はダンスボール中央で立ち止まった。




それまでゆったりとした素晴らしい楽団の演奏と、入場者たちの囁きあう声が、ディーンお兄ちゃんが右手を挙げた瞬間にピタっと止んだ。





「私はメルリド王国第1王子サーディン・メルリドである。

今日はデビュタントを迎える淑女たちに祝いの場を設けることができたこととても嬉しく思う。」



突然始まったディーンお兄ちゃんの祝辞に会場はシーンと静まり返っている。

何が起こっているかはわからないものの、一緒にいると私は告げたから。何も言わずそのまま寄り添い続けた。



「今まで公の場で皆に挨拶できなかったことは心苦しくも感じていた。


だが影で動くのは今日までとする!




【全覚醒者】としてその責務を全うし、私は次代の王となるべく後継の儀を受ける。



これまで名前を明かさず王国魔法師団団長として国を守ってきたが、


今後は正式に王国魔法師団団長の責務を全うし、国を導く者となることを宣言する!!」





 突然の【全覚醒者】【次代の王】【王国魔法師団団長】とんでもない発言と宣言に、


会場はざわざわとし始めたが突然ディーンお兄ちゃんは私に向き合うと私の前にひざまずき、


左手をそっと引きよせた。





「ルーシア・エルガディア伯爵令嬢。私は貴女に出会い生きることの希望と、


共に過ごす日々が楽しいと、心から初めてそう感じることができた。


貴女が我が国の国民であったから、私は魔法師団団長として国を守りたいと思えた。


貴女が【覚醒者】となったから、私はこの国を治め【覚醒者】を守りたいと思えた。


どうか私のこの初恋を!愛を受け取ってもらえないだろうか!結婚してほしい。」




 まさかの公開告白に、先ほどまでざわつき始めた会場はしんと静まり返り、


今度は私の出方を皆が固唾を飲んで見守っている。



 私はディーンお兄ちゃんを見つめた。

真剣に語っていた姿から、今は少し少年の様なあどけなさを感じるような


はにかんだ微笑で私の返事を待っている。



(かわいいっっ!!)






「謹んでお受けいたします」



 私は迷いはなかった。間は空いたけれど、気持ちは最初から決まっていた。


ちゃんと実感したかったから焦って返事をしたくなかっただけ。


私のはっきりとした凛とした声音の返事に会場中が歓喜の声で溢れた。


ディーンお兄ちゃんは立ち上がり向き合うと私の右の頬にチュっと口づけた。


顔が離れお互いの瞳が交わりあうとディーンお兄ちゃんは右手を挙げた。





 先程まで鳴りやんでいた音楽はワルツを奏で始め、ディーンお兄ちゃんと私は


ファーストダンスを皆の見ている前で披露した。


初めて一緒に踊るのに、初めて踊ると思えないほど軽いステップに私の心は更に高鳴る。


わくわくしてドキドキして楽しくて堪らない。


まるで昔一緒に追いかけっこをした時の様な楽しい感じ。


「ディーンお兄ちゃん・・・私すごく楽しい!!」


「俺もすごく楽しいよ。初めてとは思えない。」


二人で見つめあうと何もかもが楽しく思えた。


一緒に過ごした日々の幸せな感情が溢れるように蘇る。



「これからもずっと一緒にいてね!大好き!」



「俺もずっと一緒にいたい。愛してるよ」



初めての2人のダンスは、その後ダンスボールが終わるまで踊り続けられ


周りを驚かせたのだった。



これも【覚醒者】故にできたことなのだろう



 



挿絵(By みてみん)


 まさかのさらっと終わらせてしまいました。

本当はダリオとミルティの葛藤や、妖精さんたちのお話も入れ込みたかったのですが、

番外として別で作るなら作ろうかな?と感じています。



 今回悪役という悪役は出てこなかったのですが、実は誰も断罪されていません。

どのキャラクターも愛おしいので断罪させたくはないのですが、

サーディンが次代の王になるにあたってどうしても避けられない運命が存在しています。

恐らく短編では終われないと思いますので、妖精さんたちのお話や、他の【覚醒者】、サーディンが王になるまでのお話はまた時間ができたら書き出したいなと感じています。

小説を作っていたらキャラクター達を描きたくなったので、気になる方はご覧いただければと思います。


ありがとうございました。


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