寝言でついにやらかした王太子の隠し事
「お姉様!私聞いてしまったのです!ユージーン様には大切な方がいらっしゃるのです」
「何があったの?ユージーン殿下は貴方を大切にしていらっしゃるでしょう?」
「ええ。でも寝言で仰ったのです」
「寝言?」
「はい。「僕のクイーン、早く大きくおなり」と、私が見たことのない優しいお顔で」
メーガンの姉のアリソンは隣にいた婚約者のジュードを見た。ジュードはユージーンの側近だ。
「ついにやったか」
ジュードはアリソンにこっそりと言った。
「お疲れだとハッキリとした寝言を仰ると言う、あの?」
「あぁ、例のアレだ。本音だから困る」
メーガンは泣いていて、二人の会話は聞こえなかった。アリソンはメーガンにハンカチを渡した。
「私たちは何について仰ったのか想像ができるわ。でも、私たちの口から説明することはできないの」
「そんな……」
メーガンの表情が変わった。
「分かりましたわ。姉妹と言えども公私の区別は大切ですもの。私も覚悟を決めて、ユージーン様からお話があるまでは今まで通り過ごします」
メーガンは軽く挨拶をして自室に戻っていた。
「今日の予定は変更して殿下に知らせに行く。すまないな。せっかく会えたのに」
「仕方ありませんわ。私も王太子妃になる妹に仕えると決めたんですもの。優先順位は決まっています」
ジュードは名残惜しそうにアリソンの頬に触れ、王宮へ向かった。
ユージーンは落ち込んでいた。メーガンとの久々の逢瀬で眠ってしまったからだ。その上これだけ疲労感がある日はやらかしている可能性が高い。
侍女に案内されて、渋い顔のジュードが来た。
「事態は深刻です」
「そうか……もう少し先延ばししたかったんだが。明日、メーガンを王宮に」
「承知しました」
思い詰めた表情のメーガンはユージーンの宮の裏庭にいた。ユージーンの案内で薔薇園に入る。
「これが僕の愛する『クイーンメグ』という薔薇だ。これから大輪の花が咲くはずなんだ」
「まさか、昨日の寝言は……」
「この薔薇のことだ。君に捧げようと僕が作った」
「ユージーン様が私のために?」
「僕のクイーンは君だけだ。愛している。メグ」
「嬉しい……私も愛しています。ジーン」
二人は抱きしめ合った。
「懐かしい呼び名ですね」
「幼い頃からメグは可愛かった」
「ジーンは私の初恋なんです」
「初耳だ」
「初めて言いました」
「寝言の件は内密に頼む」
「私の前ではご自由になさってください」
ユージーンはメーガンが見たかった顔で微笑んだ。
完