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「ブライトン…ブライトン…ブライトン…」
リリアンはパーベル・アビーが用意したバスに乗り、エヴァリーとオースティンはその後を追うようにしてブライトン行きの街のバスに乗る。
リリアンが乗るバスはほんの2、3台前だ。
「呪文はやめろ、エヴァ。しかもなんだよ、その格好…」
オースティンは着崩したパーベルの制服で、エヴァリーもスカートでは無く制服っぽいズボンを履いている。
「動き易い方が良いし、どうせ女には見られないからこっちの方が良いかなって。 男の方が舐められないしね」
リリアンの側を見張るにはこっちの方が良い。
「…男には見えないけど」
オースティンは気だるげにバスの窓に肘を掛けて、エヴァの方を見ずにそう言った。
「そうかな…」
エヴァはそれなりに自信があったが、不安になる。
「…よりにもよってブライトンか」
オースティンがそう溢す。
「この辺で1番大きくて整った施設持ってるのってブライトンだしね」
エエヴァリーがそう返すと、オースティンはエヴァリーを見る。
オースティンは信用出来るし、ぶっきらぼうだが優しい。エヴァリーといる時より、リリアンといる時の方がリラックスしていて笑う事も多い様にエヴァリーは思っていた。
リリアンが心配なんだろうな…
とエヴァリーはオースティンの表情をよくよく伺う。
「ブライトンの連中だって、リリアンの近くに男2人がいつも見張ってるって思えば近付かないよ。でも分かるよ?リリアンは最高に可愛いし、誰であってもリリアンが好きになる…でも心配しなくても、正直リリアンの方が俊敏で強いって言うか…」
「リリの心配はしてない」
オースティンはふっと笑みを溢し、目を伏せる。
そのオースティンの余裕さがなんだかこそばゆくなって、エヴァリーは計らずしもときめいてしまった。
––––推せる…推せるよ、リリスティン…!
「ほら、ついたぞ」
オースティンはそう言って腰を上げる。
エヴァリーも釣られて席を立った。
窓からでもよく見える、その宮殿のような学園…
わざわざ魑魅魍魎の居るブライトンに飛び込むなんて、最近新しく学校長になったと言うあのおじさんもとんだお間抜けだ…
とエヴァリーは思った。
困っている時に助けを求める相手を間違っている。これでは弱味を握られるだけなのに…
エヴァリーは眉間に皺を寄せ、ブライトンの門を潜った。