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【2-10】遅刻したので走ってたら王子様とぶつかちゃった件

「困ったなあ……どうしよう……」


 彼女、エリーは頭を抱えたかった。だが両手で(かめ)を抱えているためそれは出来ない。


 入学早々とんでもないトラブルに巻き込まれた。いや、入学以来ずっとこんな感じ。更に言えば、入学すらも直前になって通う筈の学校を変えられてしまった。一体あたしの人生どうなっちゃうの?エリーの悩みは尽きない。


 昨日エリーを苦しめた元凶が、またもや彼女の前に立ちふさがった。果てして騎士様は守ってくれるのだろうか?


 昨日、同郷という事で彼から熱心に説得され何が何だかわからないうちにドーイ伯爵様のもとに連れていかれた。

  農家の娘ということもあってか、即決で下女の扱いを受けることになった。それであんなものを運ばされることになったのだが、まさかこんなことになろうとは。


「こんなこと考えていてもだめだ、今はとにかく急がなくっちゃ」


 エリーは湧き上がる不安を首と共に無理やりに振り払い、小走りで主たちのもとへと急いだ。中身は失ってしまったが、ヤッチャネン様の従者の方に親切にも溜め方を教えてもらったので最悪の事態は免れるかもしれないと淡い期待を抱きながら。


「でもこれ、竿を集めろって言ってたけど、どう使うんだろ?種を煮込んで混ぜるとかかな?」


 とは言うものの、正確な作り方は依然不明のままだ。もし上手くいかなければと思うと暗澹とした気分になってくる。

 この学園から逃げ出したい衝動に襲われるが、逃げるわけにはいかない。いや、逃げることが出来ない。こんな都会のど真ん中ではどうする事も出来ない。仮に故郷に帰ることが出来たとしても、きっと見逃してはもらえないだろう。


 せめて、せめて家族だけは巻き込まないようにしなければ……


 結局そんな風にあれこれ考えながら走っていたのが悪かったのだろう、曲がり角から人が現れた時には、もう回避する暇がなかった。


「きゃっ!?」

「うわっ!?」


 二人は衝突し、エリーは持っていた甕を手放してしまう。


「ぎゃあああ!これ以上割れないでええええ!?」


 エリーは咄嗟にダイブ、空中で甕を引っ掴みそのまま倒れ込む。


「セ、セーフ……」


 立ち上がりながら額の汗を拭う。すると自分の目の前に尻もちをついている男性の姿があることに気づいた。

 どうやら結果的にエリーが押し倒してしまった生徒らしい。


「ご、ごめんなさい!あたしちゃんと前を見てなくて……」

「い、いや……僕の方こそごめん……」


 エリーは屈み、彼と視点を合わせて謝罪する。

 と、その男性に見覚えがあることに気が付いた。輝くような金髪の、整った柔和な顔立ち。そしてつい最近どこかで耳にしたことのある優し気な声……


「お、王子様!?」


 そう、その男性はオウル・シメトール殿下だった。


「あ、あああああたしったらなんてことを!?」

「いや気にしないで。不注意だったのは僕も同じだから……」

 

 オウルの言葉はエリーの耳には入らなかった。

 とんでもない事をしでかしてしまった。今度の粗相の相手は貴族どころか王族だ。

 し、死ぬ!王子様の身に何かあったら一族郎党自動的にみんな死ぬ!


「こ、こここ、こうしちゃいられない!す、すすす、すぐに医務室に!」

「え、いやだから大丈……ってうわわわっ!?」


 完全に恐慌状態に陥ったエリーは有無を言わさず王子をお姫様だっこし、全力で駆け出す。


「ほ、本当に大丈夫だから降ろして!」

「嫌です!あたし王子様殺しの犯人になりたくないんです!」

「しょ、正直……このままの方が死んじゃう……恥ずかしくて……」

「それはそれで困ります!」


 王子は赤面していた。だが顔を隠すことはしていない。何故なら彼の両手はエリーにより渡された甕を股間の辺りで持つことにより塞がっているからだ。それが疾走の衝撃でボンボン上下に跳ねていた。


 王子を降ろしたエリーは何度も何度も頭を下げる。


「ごめんなさい!ほんっとごめんなさい!」

「ううん何とか大丈夫……人目にはついてなかったみたいだし」


 王子は周囲をきょろきょろと見渡すと、安堵したように息を吐いた。


「それにしても、君の方こそ大丈夫?重かったでしょ」


 そして逆に王子はエリーを気遣ってくれる。

 だが、エリーにとってそれ自体は全く問題ではない。


「ああいえ、家の仕事を手伝ってるんで足腰は鍛えられてますから」

「家の仕事?」


 王子から甕を受け取りながらエリーは答えた。本当に、軽い気持ちで。


「うち実家が農家なんで主に畑仕事の手伝いなんかを……」

「……農家?君……今農家って言った?」


 王子の目つきが変わった。厳しく、射抜くようなものに。


 ――しまった。


 エリーはとんでもないミスを犯した事に気づき青ざめる。王子が今まで優しい態度だったのは、あたしも貴族だと思われていたからに違いない。なのにわざわざ自分から庶民であることをばらしてしまった。


 体が震え、無意識に後ずさってしまう。だが王子は逆に、今までの柔和な様子とは違った力強い足取りでエリーとの距離を詰めてくる。


「あ、ああああ……」


 エリーは怯え、声すらもでなくなった。代わりにぎゅっと、力を込めて甕を抱え込む。

 だがそんな彼女の様子などお構いなしに、王子はエリーの肩を思いっきり掴むと、声を大きく荒げた。

 

「すごい!農家の人もこの学園に来てたんだ!うわあ、嬉しいなあ!」

「……へ?」


 全く予想外の展開にこれまた声がでないエリー。


「ね!ね!ちょっと僕とお話しようよ!ね!ね!良いでしょ!?」

「あ、その、でも、あの……」


 破顔した王子はエリーの手を取り近くにあったベンチへと誘導、率先して座ったかと思うと自分の横をぽんぽんと叩く。


 お話……どれぐらいの時間かかるのだろうか。ただでさえお貴族様をお待たせしているのに……


 王子の誘いを断り貴族の下にかけつけるか、貴族を待たせて王子の要望に応えるか。

 前門の殿下、後門の閣下。


 どのみち断る勇気などでないエリーは、大人しくオウルの隣に腰かけることにした。


「いやあ、農家の人とお話するのなんて久しぶりだなあ。ずっと小さい頃に一度父上の外遊についていったことがあってね、その時以来だよ」


 そんなエリーの心情など一切気づいてなさそうな様子でうきうきと語り掛けてくる王子。


「そ、そうなんですね……」

「君は何処の出身なの?」

「そ、それはあたしのって事でいいんですか?」

「?勿論。だって他に誰かいる?」


 ついさっきヤッチャネン様には拒絶された下々のプロフィールに興味津々といった様子だった。

 このお陰で、エリーとしても親近感が湧いてくる。


「ムレハにあるクヤギという村です」

「ということは東部のムレハ子爵領かな?」

「は、はいそうです!ご存じなんですね」

「勿論だよ。昔そこに行った事もある。といっても庶民の方々とのコミュニケーションは一切取れなかったんだけどね。山々がとても美しい場所だ。それに川の水も綺麗、子爵と一緒に狩りに出たことがあるんだけど……」


 王子はさも楽し気に思い出話をしてくれる。大半はエリーの知らない事ばかりだったが、中には知ってる事もあり話が弾んだ。故郷の事を思い出し、少しだけ嫌な事が頭から離れる。


「ひょっとしてその森って……」

「そうそう!確かそんな感じのとこだったよ!」

「そこ、あたしの村からも近いんですよ!」

「へえ!ひょっとしたらその時会っていたかもしれないね!何人かとすれ違ってはいたから」

「そういえばあたし、小さい頃お偉方がお通りになるということで跪いた記憶があります!確かあたしと同世代ぐらいの男の子がいました!」

「本当!?だったらきっとそれ僕だよ!いやあ、何か運命を感じるね!」

「う、運命!?そんな恐れ多い!」

「何も恐れる必要なんてないさ!僕達は今ここでは同級生なんだから!」

「あ、ありがとうございます……」


 オウルは非常に気さくだった。身分の差など全く気にも留めていないようで、エリーとしても緊張はするものの悪い気はしない。


「そういえば、君はどうしてここに?」


 ――が、ふと何かを思い出したように王子が尋ねてきたため再び現実に引き戻され鬱々とした気持ちになった。


 エリーは苦笑いを浮かべ、甕を示しながら正直に答える。


「実は、とある貴族の方にこの中に入ってたものをぶちまけちゃって……それをあたしのおかし……じゃなくって主に報告にいくところだったんです」

「うわ、そりゃやらかしちゃったね。でもそれでこの学園に入学したってこと?」


 首をひねる王子。

 そこでエリーは間違いに気づいた。彼が言った「ここ」とは「王子とぶつかった場所」ではなく「学園」自体のことだったのだ。


「ああいえ!そっちは自分でもよくわからないうちに入学を決められました!」


 誤解を訂正したにもかかわらず、王子は依然として腑に落ちない様子だった。


「ふうん?そうなんだ……領主からは何も聞いてないの?こう言っちゃなんだけど、この学園は貴族階級でない者がそう簡単に入学できるところじゃないから、絶対推薦か何かある筈なんだけどね」

「はい、それが何も……」

「子爵の関係者がこの学園にいたりするの?」

「あ、はい。うちの村を守ってくださる騎士様がいます」

「騎士?本人が?」

「はい、同じクラスに」


 エリーの言葉に、王子が首を傾げた。


「……ひょっとしてその子供ってことじゃないかな?」

「そ、そういえばさっきそんな事言われた気も……ごめんなさい、あたしそういうのあまりよくわかってなくて」

「さっきの主ってその人のこと?」

「いえ、それはアーク・ドーイ伯爵様です」


 これにオウルが腕を組む。


「多分、それもドーイ伯爵の子息だろうけど……正直マズイね。多分一筋縄ではいかないと思う」

「はい……なのでさっき言った騎士様……の息子さんのゴターさんに助けてもらおうかと」

「子爵家の騎士の子弟が伯爵令息相手に説得、か。うーん、難しいだろうなあ」

「でも……相手の貴族様もすごく怒ってて何としてでもドーイ様を連れて来いって言われちゃって」

「そりゃまあ……そうなるだろうね」

「だけどあたしじゃどうにもならなくって、とにかくゴターさんに相談するしかないんです。この甕も中に入ってたのもドーイ様のものだったみたいですし」


 言いながらエリーは甕の底に入った割れ目に指を沿わす。それを見て王子は眉間に皺を寄せた。


「ああ……そりゃいよいよ困った事になってるね」

「正直ほとほと困り果ててます……」

「個人的にはそういう身分差とか貴族社会のしきたりなんかをこの学園に持ち込んで欲しくないんだけど、かといって実害が出てる以上それ以前の問題だしなあ……」


 王子は或いはエリー以上に悩んでいるようにも見えた。天を仰ぎ、うーんとしばらく唸ったかと思うと決心したように膝を叩く。


「よしわかった!僕からも口添えをしてあげよう」

「え!?良いんですか!?」

「ここで会ったのも何かの縁だし、力になってあげたいんだよ」

「ありがとうございます!本当に助かります!」


 エリーは心から感謝し頭を下げる。このオウル殿下というお方は、まるでおとぎ話に出てくる王子様のように優しいステキな人だと思えた。

 が、礼を言われている当人がどこか落ち着かない様子で頬を掻いている。


「ただその……条件ってわけじゃないんだけど……」

「な、何でしょうか?」


 何を要求されるのかと身構えるエリー。王子相手にあたしが出来ることなんかあるのだろうか?そんな疑問が頭をよぎる。


 『だったら体で払ってもらうしかないわねぇ!』


 先ほどヤッチャネン様から言われた言葉が頭をよぎる。そしてあたしはあんな痛くて怖くておいしい思いを……

 あれ?案外悪くない?

 口の中に残ったお菓子の味が再び脳を刺激する。じゅるりと、涎が垂れそうになるのを必死にこらえると、王子もまた決死の覚悟といった様子で顔を真っ赤にし叫んだ。


「ぼ、僕と……と、ととと、友達になって欲しいんだ!」


 一瞬、彼が何を言ってるのかわからなかった。

 だがもう一度頭の中でその言葉を反芻して、事の重大さに気づく。


「と、友達!?あたしと王子様がですか!?」

「うん、僕ってこういう立場にあるから中々友達ってのがいなくてさ。ちょっとそういう関係っていうのに憧れてるんだ」

「で、でもあたし平民ですよ!?それも農家の娘なんですよ!?」

「全然問題ないよ!っていうかその方が良い!だから!ね!お願い!」


 その方が良いとはどういうことだろうか。よくわからなかったが必死に懇願する王子をそんな理由で拒絶するのもそれはそれで違う気がする。


「は、はあ……王子がそう仰るならあたしとしては全然構いませんが」


 お受けすると、彼の表情が一気にぱあっと明るくなった。


「や、やった!それじゃ僕達はこれで友達、ってことで!」

「は、はい!不束者ですがよろしくお願いします!」

「こちらこそ!」


 エリーが頭を下げると、王子もまた下げた。

 何度かそれを繰り返していると、どちらかともなくクスクスと笑い声が込みあがってくる。


「何だか変な感じだね」

「あたしも、王子様とこうやってお喋り出来るなんて夢のようです」

「出来れば敬語も止めて欲しいんだけど」

「そ、それはさすがに……」


 それはさすがに無理と両手を振ったが、王子も譲らない。


「でも、友達ってそういうもんじゃない?対等の関係なんだから」

「対等?あたしと王子様が?」

「そう、対等。せめて名前でオウルって呼んでくれないかな?」

「わ、わかりました……ううん、わかった。えっと……オ、オウル……君?」


 エリーがおずおずと切り出すと、王子は満足そうに頷いた。


「うん!そうその調子!……そういえばまだ君の名前を聞いてなかったね」

「あたしはエリー、エリー・クァンジ」

「僕はオウル・シメトール。改めましてこれからよろしくね、エリー」

「うん、よろしくオウル君!」


 オウルが出した手を、エリーが握り返す。そして二人は笑顔で見つめ合う。だがその時間はほんの短い間だった。すぐに誰かが呼ぶ声がしたのだ。


「あ!エリー、こんなところにいやがったのかよ!」

「ゴターさん!」


 それは騎士様……もとい、その息子のゴターだった。どうやらあまりにも遅い彼女にしびれを切らし捜索していたようだ。


「こんなところで男と乳繰り合ってる場合かよ!アーク様達、いつまで待たせるんだってめっちゃ怒ってんぞ!?」


 ゴターはオウルを一睨だけするもののすぐに視線をエリーに戻した。そのせいか、彼が誰であるのか気付けなかったようだ。


「ご、ごめんなさい……ちょっと色々ありまして……」

「まあとにかく今は急ぐぞ。それは俺が持ってやるから……って、お、おい……お前これカラ……しかも底が割れてないか?」


 ゴターはようやく異変を察知した。彼女の持っていた容器を受け取ろうとして、その重量があまりにも軽い事に気づいたのだ。


「はい……落として中身全部零しちゃいました」

「は、は、はあ!?お、おおおお前、ふ、ふざけ、ふざけん……」


 ゴターがショックのあまりかどもってしまい言葉が続かない。

 だからというわけではないが、エリーは更なる事実を先に告げた。

 

「それも、他のお貴族様にかけちゃって、大変お怒りでドーイ様の謝罪を要求されていて」


 ほんの一瞬だけ静寂が訪れた。その時だけは、のどかに小鳥のさえずりが聞こえる時間。だがそれはすぐに我に返った……というより怒りで我を失ったゴターの叫びでかき消されることになる。


「は……はあああ!?ど、どうすんだよお前!そんなのタダじゃ済まされないぞ!?」


「ゴターさん、何とか伯爵様にこの話を通してもらえませんか?」

「アホか!無理に決まってるだろそんなの!ただでさえアーク様のものをおじゃんにしといて、その上他の貴族様に粗相したから責任を取ってくれだなんて口が裂けても言えねえよ!」

「中身は何とかなりそうなんです!」

「どうやって!?それ、アーク様達がとある筋からようやく取り寄せたっていう大変貴重なお飲み物らしいんだぞ!?」

「で、でも種と竿と着色料さえあれば数日でパンパンに溜まるって……」

「だったらそれどこにあんだよ!?」

「そ、それは……わかりません……」

「じゃあ無理じゃねえか!」


 目を逸らすエリーの両肩を掴み揺さぶるゴター。

 見るに見かねたのか、王子がそんな彼の肩を叩いて取りなそうとする。


「君、ちょっと落ち着いて」


 しかし既に頭に血が上ってる状態のゴターは苛立たし気に腕を振り払い声を荒げた。


「うるせえ!部外者はすっこんで……って、え?え?ま、まさか……オ、オウル殿下!?」


 が、間近で睨みつけたことによりようやく相手が誰なのか気が付いたようだ。慌てて距離を取り跪く。


「た、大変失礼しました!まさか一緒におられるのが殿下だとは露とも思わず……って、おいエリー……お、お前が粗相した相手ってま、まままさかこのお方に!?」

「それは違います。オウル君にじゃないです」

「そ、そうかそれは良かった……って、おおお、オウル君!?お前!この方が誰なのかわかってないのか!?謝れ!すぐに謝罪しろ!」

「いや何も問題ないよ。だって僕達は友達だからね」

「ああそうだったんですね。友達ならしょうがない……と、友達?おいエリー、お前自分が農家の出ということを伝えてないのか?」


 ゴターはエリーに詰め寄ろうとするが、それより早くオウルが否定した。


「いやちゃんと聞いたよ。だからこそ無理言って友達になってもらったんだ」

「へ……そうなん……ですか?」


 ゴターは全く理解不能といったように目を白黒させていた。


「でもやっぱりこの反応を見ると人前での呼び捨てはまずいかもしれないね。とりあえず敬語抜きは二人っきりの時だけにした方が良いのかな?」

「正直あたしもその方が気が楽です」

「だね。これはこれで、二人だけの秘密が出来たみたいで何だかこそばゆいよ」

「もう、王子様ったら」


 仲睦まじく笑いあう二人。

 しばらくその様子をぽかんと眺めていたゴターだったが、すぐに我に返った。


「で、殿下……大変申し上げにくい事なのですが、我々には一刻の猶予もないのです。早く何とかしないとどんなお叱りを受けるかわかったもんじゃありませんので、そろそろそいつ共々お暇させていただきたく……」

「その件については僕が何とか穏便に済むよう図らうつもりだよ」

「本当ですか!?」


 これにはゴターの表情もぱっと明るくなる。


「勿論、他ならぬ友達の窮地だからね。ドーイ君への取り次ぎも、僕の方からお願いするって言ったら出来るんじゃないかな?」

「はい!それはおそらく!」

「だったらこれ以上彼を待たせてもいけないしそろそろ行くとしよう。君、案内を頼むね」

「御意!」


 言われた通りゴターは先導した。少し間を開けてオウルがエリーに語り掛ける。


「それじゃ、行こうかエリー。今から君と僕、二人の初めての共同作業だ」

「よろしくお願いします、王子様!」


 エリーは律儀に頭を下げたものの、王子はどこか不満げだ。


「……今なら彼には聞こえてないと思うんだけどなあ」


 頬を掻き、ぽつりとそう漏らす彼にエリーは苦笑した。


「そうだね。じゃあ、頼りにしてるよオウル君」

「うん。頑張るよ!」


 今度は満面の笑顔を浮かべるオウルと二人並んで、ゴターの後を追いかけた。


 ――そんなただならぬ二人の様子が、この開けた場で誰からも目撃されないなど、あろう筈もなかった。

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