第8話 嵐龍③
「纏雷」
そう呟いた瞬間、俺の周りを幾百もの雷撃が走った。
俺は今、雷を纏ったのだ。
鑑定で纏雷を見てみると
纏雷
自身の身体や武器に雷を纏わせる戦技
雷を纏ったものの攻撃力は飛躍的に上がる
なるほど、武器にも纏えるのか。
俺はそばに落ちていた武器を手に取る。
ハンマーだ。
倒れている他の冒険者が使っていたんだろう。
すると俺の周りに帯電していた雷撃が全てハンマーの攻撃部に集まった。
おそらく一か所にしか纏えないのだろう。
俺は静かに嵐龍の足元に近づく。
ギルマスや他の冒険者の様な身体能力はまだ俺にはない。
なので狙うは足元。
タンスの角に小指をぶつけたときの痛みは、それこそ目が覚めるような衝撃だ。
ドラゴンでも同じじゃないのかな?
ドラゴンの足元で俺は腕を振り上げ、そのまま思い切り一番外側の指に振り下ろした。
ドガンッ!!
鼓膜が破れそうな程の音が鳴る。
骨くらいは軽く逝ったんじゃないのか?
まぁなんにせよ風の防壁を貫通できて良かった良かった。
Gyaoooooooooooooooooooooooo!!
と悲鳴を上げ、嵐龍はその場に倒れ込んだ。
「う………うぅ、ここはどこじゃ」
声が聞こえた。
まさかと思い倒れた嵐龍の顔の近くまで行ってみると、眼がバッチリ開いている。
「お前もしかして喋れたりするのか?」
「なんじゃ人間。出会い頭に不躾じゃのう。龍なら人語くらい理解できるわい。当り前じゃろ」
「それはすまない。俺はユートだ。あんたは?」
「儂か?儂はヴァルじゃ。なぁ人間、ユートと言ったか?なんか儂、足超痛いんじゃけど、なんでか知らんか?」
「あ~それは………」
俺は事のあらましをヴァルに説明する。
「そうじゃったのか………それはすまんかった。じゃったら、儂の足の痛みはユート、お主が?」
「あぁ、申し訳ない。ああするしかなかったんだ」
「いや、謝らんでくれ。ユートがおらんかったら儂のせいで国が滅びていたやもしれんからの。それよりも凄いなユートは!」
「なにがだ?」
「わしの嵐鎧を突破するとは………、かつての勇者一行でも破れんかったというのに」
「そうなのか?まぁ必死だったからな」
「そうじゃよ、この嵐鎧を突破できんいうて封印されたんじゃから儂。あれ?儂なんで封印から解けとるんじゃろ?」
ん?
「分厚い積乱雲の中から出て来れんように、古今東西様々な呪法で封印されとったのに。それこそ嵐鎧を突破できるくらいの圧倒的な力でもない限り、簡単には解けぬ程に強固じゃったはずなのじゃが………」
んん?
「ち、ちなみになんだけどさヴァル、どの辺に封印されてたんだ?」
「場所?場所はそうじゃなぁ」
ヴァルはキョロキョロしだす。
やがて、ある一点を見つめてこう言い放った。
「確かあの何故か屋根のない建物の方向じゃの」
読んでいただきありがとうございました!
いいね、ブックマーク、評価、なにをされても作者は大変喜びます(〃▽〃)