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偽り

「それが結果的にこういう自体を生んでしまったわけか」


 破龍の意味。それは襲いかかる人間を殲滅魔法で消し炭にしてたからだと。

 やっと得た平穏の中でのんびり寝ていた所、わざわざ俺たちが襲いに来てしまった。

 たとえ封印が剥がれようと人間の敵として襲うことはなかったわけだ。


 リィファは破龍を撫でながら謝罪をする。


「ごめんなさい。

 また嫌な思いをさせてしまいましたわ。

 それに勝手に契約を結んでしまって……

 え? よろしいのですか?」


「どうした? なにか言ってるのか?」



「それが……

 その、契約自体に文句などはないらしくむしろ飼われることに安心感を感じると」


「その強さでか? と言っても自体が解決したわけじゃないんだよなぁ」



「そうですわね。

 お話が出来るようになったのは大変喜ばしいことなのですがこちらもこちらで問題が山積みですわ……


 破龍さん、実は」



 リィファは破龍に現状を伝える。

 グルル……と頷きながら破龍は悩みこむ。


 すると呆然と眺めていたトアが我に帰ったのか「待て待て!」と俺の前に立つ。


「待ってくれ! 状況が全く理解できねー!

 なんでこんなおとなしくなってんだ?!

 それと、エノア……さっき、お前……すごく嫌な感じがしたんだけど。

 あれは、なんだ?」


 勇者候補に魔王だと説明するわけにもいかない。


「あれについては今は説明できない。

 いつか理解する時が来る。

 破龍がおとなしいのはな、リィファが破龍を手なづけた。

 つまりリィファは破龍の飼い主となって主従契約を結んだんだ」


「理解する時が来るって……後で問い詰めるからなっ!

 にしても奴隷紋もなしでこの力の差でどうやって……」



「それがリィファの力だったんだよ。

 できれば内緒にしてくれないか?

 おそらくその力があるとバレるとリィファは国王に呼び戻される」


「それくらいいいけどさ……んじゃあもう戦う必要もないんだな?」



「ああ。ただ、このままじゃ解決しないのもまた事実なんだよ。

 うーん……」


 カンナがぼそっと「死んだふり……?」と言った。

 俺はそれしかないかと呟いた。


 するとカンナは「嫌、冗談のつもりだったんだけど!」と答える。


「その方が都合がいいんだよ。

 トアには口裏をあわせてもらうことにはなるけど破龍に死んだふりをしてもらう。

 そしてカリムやヴァルクには本当に死んだと思ってもらう。

 信用しきれてないってのが本音だな。


 リィファの事も隠し続けたい。

 ただ破龍の今後が悩ましい。ちっちゃくなれないか? ペット的な感じで」



 リィファは破龍に聞いてくれる。


「すみません。無理だそうです」「グルゥ……」

 申し訳無さそうな顔をする破龍。


「だよなぁ……かと言ってここにいたらいつか生きてるのがバレるだろうし……」

 ティアナがそっと手を挙げる。


「あのさ、私の故郷は?」

「はっ!!」


 俺はその手があったか! とティアナを褒める。


「えへへ、あ、でもどうやって連れていく? 一回報告に帰らなきゃだよね」

「そう、だな……

 俺でないと帰れないよな……」


 ”マスターの魔力さえあれば私が案内出来ます”

 それは、出来るのか? 俺のスキルだろリビアは。


 ”私はスキルではありませんよ システムとして補助しているにすぎません”

 スキルじゃ、ない?


 ”案内をしている間は私はマスターの補助が出来ません 問題ありませんか?”

 それは、いいが……本当に出来るのか?


 ”任せてください”



「ティアナ、お願いがある」

「え、なに?」


「一度帰ってくれないか? エルフの森に」

「また、戻ってこれるんだよね?」


「ああ。

 すぐ迎えに行く」

「……いいよ! 早くしてね」


「ありがとな」


 よし、これでなんとかなるかも知れない。

 俺はみんなにこれからの計画を話始める。


「まず破龍には死んだふりをしてもらってカリムやヴァルクを騙す。

 その後ティアナにエルフの森にまで行ってもらう。

 向かっている途中は誰にも見られないように夜間、そしてはるか上空かつ雲の上を飛ぶこと。

 死体がなくなったのは魔物にでも食われたと嘘をつく。

 これですべて解決だ。


 この嵐の結界の中で俺たちとトアが力をあわせて倒したことにするぞ」




 嵐の結界が消える。

 破龍はできるだけ体を動かさないようにゆっっっっくりと呼吸をする。


 カリムがその様子を見て、倒したのかと聞いてくる。


「ああ。トアと一緒になんとかな」


「お前、達が……

 そうか、だがこれで目的は達成できた。良かったな」



「皮肉か? そうだな良かったな」

「ふん……」


 再び戦うつもりだったのか武装したヴァルクが中に入りその状況に困惑する。


「倒した、のですか?」

「ああなんとかな」


 ヴァルクは近寄った。



「……あの破龍を――トアは本当に勇者なのかも知れませんね」

「おいおい。俺たちの活躍はなしかよ」


「いえそんなつもりはっ! ただこの功績と勇者候補だということを加味すると……」


 トアはそんなんじゃねーよと言った。


 そしてヴァルクは唐突に剣を握る。

 俺は慌ててヴァルクに言った。


「おいっ! なにしてんだ!」

「? ああ。一応念の為に首を落としておこうかと思いまして」


 ヴァルクは剣を破龍に向けている。


 ふと破龍を見ると冷や汗をだらだらとかいていた。

 えっ?! と血の気が引いた顔をしながら若干震えていた。

挿絵(By みてみん)


 リィファが全力で首を振って止めてくださいっ! という意思表示をする。

 まずいっ! まずすぎる!


「では」


 金属音が鳴り響く。

 ヴァルクは鋭い目で俺を見る。


「何をなさっているのです?」


「あ、あー……っとだな。

 すー……ごほんっ。


 ヴァルク。もう命を落としたものに傷をつける必要はないだろう。

 首を掲げる必要はない。敵国の大将ってわけじゃないんだ。

 鱗でも持っていけば倒したという証明くらいにはなるだろう」


「……

 そうですね。無駄なことをしても仕方ありません。

 目的は達成されているのですから。第一私達だけで持って帰れる大きさではありませんから」



 リィファが安心した顔をしていた。




 まて、ちょっとまて。なにかおかしい。


 なんだこの引っかかる感じは。


 俺はイナの持っている狐氷を見る。

 鱗? そうだ。龍の鱗なんてそう簡単に持って帰れるものじゃない。

 ならなぜガディがその素材を持っている?


 破龍はずっとここに居たんだ。近くに行かなければ鱗はとることが出来ない。

 だからこそ希少な素材なんだ。ここにあるここにしかない鉱石ですら希少素材だ。


 よく考えろ。狐氷は何で出来ている?


 鉱石なら分かる。しかし鱗はどうだ?

 この鱗は誰が持ってきた?



 この場所には誰も入っていない。

 ヴァルクは途中までしか行ったことがないと言っていた。

 封印が綻んでいて数人くらいなら入れる。そうとも言っていた。


 俺はヴァルクを見て思った。


 こいつは、嘘を付いているんじゃないか? だがなぜだ?


 くそ、もっと早く気づければ破龍に聞けたのに……



 おそらくヴァルクはすでに破龍と戦っている。

 もし本当にヴァルクが途中までしか行ったことがなかったとする。

 そして全く勇者候補が覚醒していない現状を考えてみる。


 封印が綻んだといわれると言われたここ最近にこの場所に来て、素材を持ち帰ったものがいることになる。


 現状そんなことが出来るのは……やはりヴァルクなのではないか?

 だからこそ最適な最後の休憩場所を見つけられたのではないか?

 それだけ出来るのなら力を隠すのはなぜだ?



 大きな疑問を残したまま、俺たちは洞窟を後にした。

面白いな応援したいなと思っていただけましたらブックマークと評価の程、お願いします。


喜びます。

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