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才能の集まる学園

「凡! 人! のエノア君じゃないかぁー。君もこの学園に来たのか。

 よく来れたなぁ……頭の方は大丈夫かぁ?」


挿絵(By みてみん)



 煽ってくる王子の後ろに三人ほど知らない奴が見える。


「ああこいつらか。こいつらはこの学園で最も仲のいい貴族だよ。

 もちろん精霊の光る才能を持った。だけどね

 あっは、いやぁ君の事を馬鹿にしているんじゃないよ」


 後ろの三人は大笑いした。生前を思い出す。あの子は捕まってしまっただろうか、将太は陸は……考えても仕方ない。


 俺はもう向こうの世界では死んだんだから。



「なんでもいい。俺は学園長のところに行かないと」

「なんで来たんだ?」


「なに?」

「聞きたいんだよ。エノア。お前にはなんの才能も、強さもない。

 そんなお前がこの学園に来る価値がない。

 なぜこの学園に来た」


「リーシアがいるからだ」

「っ……」


 王子は開いていた手を握りしめ、震わせていた。

 喉に力を込めながらこう言ってきた。


「そう、か。ふん。まぁいい。

 私のことはカリムでいい。なにせクラスメイトだからな。

 同じ学園の仲間として王子では些か距離感が遠いではないか」


「そうか。カリム俺はもう行く」


 カリムはその後何を言ってくるでもなかった。

 学園長の部屋につき、ノックをした。


「エノア・ルーヴェストです。

 ご挨拶に参りました」

「入りたまえ」


 ドアをそっと開けると大柄の男性が椅子に座っていた。

 背もたれに重心をかけこちらを見ている。

 スキンヘッドで目つきが悪くついつい身構えてしまう。


「改めましてエノア・ルーヴェストです。

 本日より学園にてお世話になります」


「そんなにかしこまらなくていい。

 以前にも会ったな。

 あの頃はたしか、鑑定を受ける前だったか」


「はい。鑑定を受ける前に一度お会いしています」

「事情は聞いている。私自身はエノア君が勇者候補であろうとなかろうと態度を変えるつもりはない。

 あんなものは他人が勝手に背負わせた期待だ。

 ただ学園長として君を見ていくに当たって聞きたいことがある」


「なんでしょう」


「なぜここに来た。

 そしてこのさきの未来に何を見据えている」


「……リーシアの期待を裏切りたくないんです」


「恋路か」


「こいっっ違います!

 そういう意味ではなく、彼女は私の隣にいてくれました。

 たとえ勇者候補でなくとも。

 彼女の期待に応えたい」


「やっぱり恋路ではないか。

 いやいい。反論するな。悪いことではない。むしろ推奨しよう。

 うんうん」


 楽しんでるなこの学園長。というか話が通じるタイプではない。

 いろんなことを聞かれたがすべてリーシア関係。もううんざりしてきていたので今日はこの辺で帰りますと言った。


 また今度聞かせてほしいと言われ心の中で勘弁してくださいと言った。


「失礼します」



 屋敷に戻る途中俺はこの学園で長い時間を過ごすことになるだろうと思っていた。

 少なくとも一年ほどはここで勉強することになるだろうと。


 この学園で力を示せば勇者の仲間くらいにはなれる。

 この学園にある大量の書物や先生の力を借りればこのスキルの制御の仕方も分かるだろうと思った。



 このスキルを制御しない限りは俺は人前で戦うことは……

 屋敷につくと侍女のルミアが出迎えてくれた。


「おかえりなさいませエノア様。今日行かれた学園はどうでしたか?」

「特になにもないよ。いつもどおり。ただリーシアには会えなかったな」


「いつも、通り……ですか。お食事出来てますのでどうぞ。

 奥様は後ほど自室でいただくそうです」


「母さんの容態は?」


「日に日に弱っています。今はお食事もとれて歩けますが体力は少しずつ失われており、咳き込むことも多くなりました」


「そうか……」


「司祭様やヒーラー、お医者様にも見ていただきましたが良くなることはないと……

原因は、その、やはりあの儀式だそうです」


「俺を生むための儀式……母体への負荷が大きかったんだろうな」

「はい……できるだけお側にいてあげてくださいね」


「ああ。ありがとう。それとルミア、仕えてくれてありがとう」

「ふふ、何を今更」


「最初ここに来た時は十歳だったろ。ルミアの母親と入れ替わりで。俺と同じ年で侍女の仕事をこなすのは大変だったろ」


「お仕事ですからっ。ここのお仕事は楽しいですしエノア様にお仕えできて光栄ですよ」


「すまんな。俺がせめて勇者候補だったなら侍女を増やせたかも知れないのに」


「困ります!」

「困る……?」



「あ、いえその今の仕事量がちょうどいいんです! はい!」


 ルミアは顔を近づけ言い張った。その後顔を赤らめお食事が冷めますからと奥へ向かった。俺はその後ろを着いていき食事をとった。

 俺のわがままで食事をする際は侍女も一緒にと決めていた。二人で食事をとった後母親の様子を見て就寝した。


 次の日。学園の中でリーシアに会った。


「エノア! 見つけた! 昨日はどこ行ってたの? 探したんだよ?」

「おはようリーシア。昨日は学園長に会ってすぐに帰ったんだ」


「そうだったんだ。同じクラスだし次の測定一緒に受けましょ」

「いいよ」



 廊下の奥の方でカリムの後ろにいた三人組が見ていた。


「いこうかリーシア」

「うん」


 測定は身体能力と魔素の蓄積量と操れる魔素の量などを見る。

 言わずもがなリーシアはトップスコアを叩き出した。身体能力は魔法やスキルを使用してもよい。


 そしてリーシアは接近戦タイプ。スキルや魔法も近距離に特化させている。

 身体能力の測定で肝心の俺はというと……


「落ち込まないでエノア」


「ごめん」


 俺は魔法が使えない。

 素の身体能力で測定を行ったために結果は散々だった。


「こんなんじゃ……実力を見せるっていう目的が」


 俺の目的はリーシアと同じパーティーに入るかリーシアを自分のパーティーに入れること。現状リーシアは国の管理下だ。

 そんなリーシアを力も権限もない俺がどうこうできる立場ではない。


「あんた一般人だな」

 カリムの後ろにいた三人のうちの一人だ。髪型が鶏の鶏冠みたいになっている。


「今日はカリムいないのか」

「王子の執務だよ。リーシア嬢、今日の昼大事な用があるから第二塔の三階にある食堂に来てくれ」


 リーシアはそれに返答する。


「断るわ。お昼はエノアと食べるんだから。そもそも第二塔の食堂今日はお休みじゃない」

「国の命令だ。正式な」


「ちっ……少しだけよ」

「それで問題ねぇ」


 そいつは要件を伝えると去っていった。


「ごめんエノア。ちょっと用事できちゃった。なんの用事かは全く検討つかないんだけど……

 せめて第二塔までは来てくれる?」


「いいよ。俺もリーシアと食事とるつもりだったから」

「よし! 魔素量測定行ってみよー!」


 クスクスとバカにするような笑い声が聞こえてくる。

 それをリーシアが睨みつけた。


 笑い声は途絶え、リーシアは自分の周囲二メートルに魔素を滞在させた。なんと学園トップの成績だ。

 先程の鶏冠の青年は周囲一メートル。


 通常の基準は自分の周り数センチに滞在させれば上場。この分量が自分に対して一度に扱える魔素量である。

 主にパッシブ、自分の身体能力を上げることに使われる。

 敵に対する魔法は呪文を通して周囲に散らばっている魔素が反応する。


 故にこの滞在魔素量は関係ない。滞在魔素量は自分のみ。

 自分の魔素に対する影響力によって威力が増減する。


 俺はこの魔法を使う測定を辞退した。


「エノアいいの? 周りのことなんて気にしないで」

「今は、仕方ないよ。だめなんだ」


 鶏冠が口を挟む。


「なんだよ。また笑わせてくれると思ったのによ。

 恥をかく前にやめるなんてかしこいじゃねーか。

 見直したぜ一般人」


 リーシアは声を荒げつつ言った。


「あは、あははは! あっはっはー私以下がほざいてるわぁー。

 あなたはエノアをバカにできるでしょうけど私を馬鹿にすることはできないものね。

 あはは。あはははは。

 エノアはすごい強いんだから。怒らせないことね」


「くっっっ。そうだな強い凡人を切れさせないよう努力してみようか。

 その強さ見てみたいけどな。凡人なりのな」


 ばちっばちばちっと二人の間に火花がちる。

 俺はリーシアの耳元でこう言った。


「おいっ何を根拠に」

「昔見てたんだから。何かはたしかに分からなかったけどあの魔素量はもはや勇者よ」


「それだけで?」

「十分すぎるわよ!」


 鶏冠はこそこそ話す俺たちを見て舌打ちをした。




 時はお昼ごろ。


「じゃあエノアちょっと行ってくるね。

 すぐ戻ってくるから」

「ああ」


 俺は塔の一階でリーシアを待っていたがどうしても内容が気になった。

 なんだか胸騒ぎがしたのだ。




 塔の三階に上がり身を隠しながら進んだ。人がいないこの場所と時間を選んだということは他人に知られるわけにはいかない内容だろうと踏んだ。


 遠くで鶏冠の声が聞こえた。


「お前に拒否する権利はない。

 強制だ」


「お断りよ!!

 なんで私があのバカ王子の、




 パーティーに入らなきゃいけないわけ?!」

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喜びます。

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