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エルフと共に

 目を開けるとティアナが横に座っていた。

 イナが俺の横で寝ている。また俺は気を失ってしまったらしい。


 ため息をつくとイナが俺を抱きしめる。

 ティアナも気づいて話しかけてくる。


「おはよう。大丈夫?

 というか仲いいんだね。恋人みたい」

 イナはしっぽをぶんぶん振った。


 俺はティアナに言う。

「まぁこれもまた複雑でな。

 昨日は省いたけどあれだ。主従関係だ。

 恋人とかでは……」

 イナのしっぽが今度はバシバシとベッドを叩く。



「ふーん。

 それで体調の方はどう?」

「問題ないよ。

 いつもどおり。原因は分かってるけどどうしてそうなったのかはわからない。

 リビアは答えないしな」


「リビア?」

「ああ。俺のスキルにリビアっていうスキルがあるんだよ。

 そのスキルは会話ができるんだが今はだんまりだ」


「へー……

 へんなスキルだね」

「ははっ。ほんとだよ。

 聞いたことないスキルだ。会話ができるなんて」


「ごはん食べる?」

「ああ。ありがとう」

 ティアナは米を野菜と水で煮込んだ料理を運んできた。

 おかゆだ。


「はい。あーん」

「っっ」

 俺は照れてそっぽを向く。


「もーシャイだなー。

 照れないでよ! 私まで恥ずかしくなるじゃん」

「じ、じぶんで」


「あーん」

「……」

 俺はティアナの運ぶスプーンにのったおかゆを食べた。


「あつくない?」

「少し」


 そういうとティアナはもう一度おかゆの中にスプーンを入れたあと、おかゆをすくいだす。そして冷ますためにふーふーと息を吹きかける。


「はいあーん」

「あ、あーん」


「今度はどう?」

「うん、大丈夫」


 沈黙の後、恥ずかしくなってきた。

 俺はそのままおかゆを口に運んでもらいながら食べきる。

 ティアナはもうちょっと寝てなよ? と言って皿を下げた。

 そして今度は普通の食事を持ってくる。


「はい。イナちゃんだっけ。

 どうぞ」

「ありがとうございます!」


 イナは運ばれたうさぎの肉にかぶりつく。


 その間俺は今、みんながどうしているのか聞いた。

 するとティアナは答えてくれた。


「今? 今はみんなと話してるよ。

 そりゃもうひっぱりだこ! 興味津々で外の話を聞いてるよ。


 エノアをリーシアとイナちゃんと一緒に運んできた時もカンナとお姫様はくたくたになるまで会話してたよ。

 その後みんな族長に怒られて引っ込んだんだけど扉からみんな顔をのぞかせてるのっ。

 ふふっ。おかしいでしょ?」


「はははっ。本当に楽しいんだろうな。

 二人には気の毒だがおもしろかったよ」


「それでその後ね、リーシアが私達の魔法についてリーシア達の使う魔法と少し違うことに気づいたみたいでその研究してるよ」

「へー……さすがリーシアだな。

 気づくだけじゃなくて研究もするのか。優等生だなー」


「優等生?」

「えっとー、俺たちの国には学園って言うのがあってそこには魔法を教える人と習う人達がいるんだ。

 みんな若い子供で、年齢はティアナと同じくらい。

 一人の先生から何十人もの人が教えをこう。


 そういう場所があって、優秀なひとを優等生って言うんだ。

 リーシアは全部一流だったから。

 俺にはもったいないくらいのな」


「へー楽しそう!

 私達も修行とか狩りの練習とかするけど、たぶんそういうのとは違うんだろうね」

「似たようなもんだとは思うけど違うかな」


「エノアはどうだったの」

「俺は……通ってなかった。

 数日だけ行ったけどびりっけつだったよ。

 俺はリーシアの逆。落ちこぼれ」


「なんかごめん……」

「いいよ。落ち込んでるわけじゃないから。

 それに今はあのときとは違う。

 ちゃんと自分に与えられた力を使えるようになってきた。

 もう魔法だって使える」


「前向きなんだね」

「ああ。リーシアやイナのおかげだ。

 そしてカンナやリィファに出会って前を向けるようになったのさ」


「良かったね」

「そうだな。ただその”前”ってのが魔王を倒すことなんだがな」


「ありゃりゃ……この森に迷い込んでしまったばっかりにってやつだね」

「そうそう」


 カラン……と食器の中に骨が落ちる音がする。


「ごひほうさまでひた!!」

「イナ。食べきってから言おうな。ほっべすごいぞ」


「もぐもぐ。ごちそうさまでした!」

「よし」

 俺はイナの頭を撫でる。



 俺は体を起こす。

 ティアナは心配そうに見つめる。

「大丈夫? 痛くない?」

「平気平気。さてみんなの様子でも見てくるかな」


 俺は部屋を出てリィファの元へと向かった。

 すると……


 リィファが弓矢を射っていた。

 木でできた弓をしならせ弓矢を射る。

 そして矢は的に命中する。


 リィファは一息吐いた後、エルフ達に褒められている。

「すごいじゃないか! こんなに矢を射れるなんて!」

「いえ、そんな……昔お城で兵士の方々に教えて頂いたことがあって」


「これだけ射れるならもう狩りだってできるよ」

「狩りは経験がないのでなんとも……エノア様?!」


 リィファは自分の体を腕で隠す。

 リィファはエルフの服を着ていたのだ。


 その豊満な胸は収まりきらずそれはもう魅力的な……

「まじまじと見ないでくださいますか!!」

「えっごめん!」


 服を着てるはずなのに俺は後ろを向いた。

「あっいえ、まじまじと見なければこちらは向いてもよろしいですよ……?」

「あ、ああ……」


 俺はゆっくりと前を見た。

 もじもじと恥ずかしそうに体を隠している。


挿絵(By みてみん)


「あ、あのっ!」

「あ、ごめん!」


 俺も男である。若い女の子が、しかもあんな魅力的な女の子があの格好だと……

 ティアナが視線の先に顔を出す。


「ねぇ。私の時と反応違くない?」

「だって胸が」

「おい」


 ぐりっと人差し指を頬にねじ込まれる。


「エ、エノア様!」

 もうどうしたらいいのか。



 その後リィファは恥ずかしそうにしながらも弓の練習をしていた。

 弓の扱い方を習っていたようだ。


 エルフはその腕前を見た後こう言った。

「じゃあ魔力で矢の生成しようか」

「魔力? それは……なんですの? 魔力回路のことではないんですの?」


「え? 知らない?」

「魔素とは違いますの?」


「あー違うと言えば違うんだけど」



 その後リーシアがエルフたちとリィファの話に入っていく。

「そこから先は私が話すわ」」

「リーシア!」


「やっ、リィファ!」

「もう研究はいいんですの?」


「まだ知りたいことはあるけど今は大丈夫。

 私達って空気中の魔素を利用したり魔素を魔力回路に通し続けて自分達の強化をしてたじゃない?」


「そうですわね。ですから魔素のない場所では魔法などの力の行使は出来ませんわ。

 魔素を経由するスキルなども使えませんわね」



「でもここのエルフ達はちがうのよ。

 自分たちの中に魔素を溜め込んでる。ううん吸収した魔素が変化して魔力として魔力回路を循環し続けてるのよ」

「えっそうなのですか?! ではそれを使えばお城でも魔法が?」


「経路が違うから魔素の魔法とは違ってくるんだけど言ってしまえばそうね。体内の魔力が尽きるまで魔法を使える。

 それでこれは私の考えなんだけど多分魔力回路の使い方って本来はエルフ達のような使い方が普通だったんじゃないかしら」

「というと、わたくし達が変化した。ということですの?」



「そっ。本来は魔素を魔力に変換して魔法を使う。

 だけど私達は長い年月の間にその技術を失って神話というものがたりを通した魔法しか使えなくなってたんだと思うわ。

 でもエルフ達は外の世界と隔離されていて神代から魔力回路の使い方が変わらないままだったのよ」


「あっ! でしたらそれをカンナさんに伝えればカンナさんが魔法使いとして活躍できるようになるのでは!」



 リーシアは遠い目をする。

「ダメだったわ……

 先にカンナのところに行ったのよ。

 それでもしかしたらって言ってためしてもらったの。

 でも結果はなんの変化もなし。


 カンナには期待させてごめんって言ったんだけど、大丈夫って逆に気を使われちゃったわ。

 私の魅力が減っちゃうからねっ! 私は殴打系魔法使いヒロインだからっ!

 って言われたわ」

「彼女らしいですわ……」



「ま、使い方が違うっていうことを伝えにきたのよ。

 エノアも挑戦してみてね。私は修行中。全然出来ないけど……」

 俺は分かったと返事をした。


 そしてリーシアによるとエルフたちは普段から自然とやっているから教えることもむずかしいそう。

 だからまずは意識的にできるようになってからそれを無意識に落とし込むのだとか。

 これができるようになると詠唱なしで魔法が使えるらしい。

 ただし規模としては大きいものは出来ないという。


 そういえば族長がパイプタバコに火を付ける時なにも言っていなかった。


 挑戦はしてみるが今の俺にはリビアの使用が出来ない。


 影を使えないだけとは言っていたもののリビア自体が解析に集中しているからだ。

 つまり魔力を生成し循環するのにリビアを使わず自分の力のみで魔力を生成する必要があるということだ。

面白いな応援したいなと思っていただけましたらブックマークと評価の程、お願いします。


喜びます。

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