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死人の襲撃

 複数の死人達は俺たちを取り囲む。



 しかし死人が狙っているのはリーシアと俺だけのようだ。


 なにか決まった命令が施されているのだろう。



 今回であれば魔素の集中した人間を徹底的に狙う。


 とかだろうな。優先度が設定されてる可能性もある。


 逃げるものや魔素の濃さ、逆に魔素のないもの、逃げないものの優先度は落とす。


 そうでなければ未だ噂で済むはずがない。


 これだけの人数を襲うのはたやすくはない。


 絶対に逃すつもりはない。そんな意思が死人達の動きから見てとれる。



 

 もっと、もっとだ。


 傷口から少しずつ凍らせたんじゃ間に合わない。


 もっと魔素を、集めて……



 リーシアが今使っている魔素を吸い取らないように……



 調整している間も敵は待ってはくれない。


 死人が一斉に襲いかかる。



 

 リビア 身体能力強化



 ”不可 魔素が足りません 代用します”


 ”スキルeerreer”


 薄い、何かが俺の魔力回路を通った感じがした。


 感じられるか感じられないかわからないほどの微力ななにか。


 俺は目の前のまさに、手が俺に触れようとしている死人に集中した。




 目の前の死人の手が俺の首元にふれる直前、死人の体が一瞬にして凍りつく。


 俺は近くの死人を複数切りつけた。


 足元、腕なんかに傷を入れいく。


 切り口は少しでいい。そうでないと凍りすぎる。


 一体の死人が足の凍った状態を気にも止めず向かってくる。


 足が折れ、片足になっても這いずる。


 その凍って地面に固定された足から冷気が死人に向かって走る。



 触れた瞬間死人の全身が一気に凍る。





 俺はリーシアを見るように振り返った。



 時間が遅く感じる。自分が今、想像していたよりも速く動いているのを実感する。




 目を閉じ集中してるリーシアの目の前に出た。


 そしてリーシアに剣を向ける。


 そのまま剣を突き出す。



 俺の剣はリーシアの顔の横を通り過ぎ、後ろに居た死人の頭に突き刺さる。



「リーシアには指一本触れさせない」



 そう言ってリーシアとは反対方向に切り裂いた。



 まだ襲いかかってくる死人は残っている。


 仲間のいない方向に剣を凪いだ。



 凪いだ剣の軌道をなぞりながら剣先から冷気が波のように正面を覆う。



 冷気が過ぎ去った後、目の前の敵をすべて凍らすように氷の結晶が出現する。



 残った死人も凍らせていく。


挿絵(By みてみん)



 地中からさらに死人が這い上がる。


「まだいるのか。何が何でも逃したくないんだな」



 かなりの魔素を使ってるだけあってもう魔素の残りが少ない。


 一か八か魔素を集めるか? どこまで集められるか。





 リビア、さっきの代用したスキルで魔素の代わりを。



”拒否 これ以上の使用は認められません”

 



 ここからは全員斬っていくしかないということか。



「エノア。もういいよ。ありがとう」


 リーシアの声が後方から聞こえた。


 俺はリーシアの後ろに下がった。



「ルーフェンは怒り、ルーフェンに仇をなすグロウの恋人を貫いた。


 そしてその怒りは留まることを知らず、人の国を燃やしつくした」



 剣を片手で持ちながら両手を前にだす、正面を見据え最後の呪文を唱える。



「ルーフェンダグラス!」




 空から一本の槍が目の前の凍った死人と新たに這い出た死人の中に突き刺さる。


 刺さった衝撃で地面がひび割れ、足場を崩された死人が地面に崩れる。


 槍が炎をまとい始める。


 槍を中心に炎が渦を描き始めた。



 その瞬間、渦の円が一瞬で広がり正面の死人を覆った。


 円が消えた後、爆風と爆炎が死人を包み込んだ。


 すべてが焦げていく。地面ですら黒く燃え焦げていた。



 俺の氷すらも消滅させ、目の前の死人はいなくなる。




 正面には消炎が立ち上る。



「リーシアこの上通って大丈夫なのか?」



「走り抜けることくらいできるわ」


 リーシアは馬車の馬に向かって少しだけ我慢してねと言った。


「分かった。走り抜け、」


 ジュワッ



「っっっ!」



 熱い! いやっ熱じゃない。痛みだ。痛みで熱さを感じている。


「あああっっ! 熱い!」



 俺は思わず叫ぶ。


「エノア?!」


 リーシアは俺に駆け寄る。


「どうしたの?! 体が痛みを感じるほどの熱はきてないわよ?!」


「ごめんリーシアっ! 違うんだ。リーシアの魔法じゃないっ。


 焼けるような痛みが、魔力回路、からっっ」



 筋肉を動かすのですら痛い。リビアが断ったのはこういうことか……


 これ以上の痛みが襲ってきたのなら意識を失いかねない。


 ただこれじゃ走れない……


 リーシアはクルケッドに叫ぶ。



「クルケッドさんこの上走れる?! 自分の足で!」


「走れます!」



「馬車の操作をエノアと交換してもられない? エノアはもう走れない!」



「僕は大丈夫です! ただ馬の扱いは、いえ愚問ですかね」


「エノアは馬の扱いは慣れてるわ。貴族ですもの」


 俺はリーシアの方を借りながら馬車に乗り馬の手綱を握った。



「元っだけどな」



 俺は手綱を引いた。


 それを合図に一斉に走り出す。まだ熱の残る地面の上を走る。



「いい子だ」



 俺は馬に対してそういった。林に戻り後ろを確認しながら走る。


 死人は追ってきてはいなかった。


 あれだけ逃すまいというほどの死人を用意して置いて追ってこない?


 そもそも目的はなんだ? 商人の国なら金品の強奪か?


 あそこまでの死人を用意しながらこの場所で?


 魔素はどうやって集めた?



 

 俺たちはもう安全だと確認すると馬車を止め、木に腰掛け一息ついた。



「ご主人さま大丈夫ですか?」


 イナがすぐさま駆け寄る。


 俺は頭を撫でながら大丈夫だよと答えた。


 リーシアが何があったのかと聞いた。


 だから俺は説明を始めた。



「俺には使い慣れていないスキルがあるんだ。


 どうやらそのスキルを使った代償らしい。心配かけたな」



「私は大丈夫だけど、もう痛くないの?」


「いや、まだ痛みは残ってる。


 感覚的なものだけどもう当分は残りそうだ」



「ここから街まで歩ける? まだ距離あるけど」


「歩くくらいなら大丈夫だ。依頼人をこのまま歩かせるのもな」


 俺達はここで休憩をとった後、街に戻るために歩き始めた。




 カンナは歩きながらリーシアに先程の魔法について絶賛した。


「リーシアさんすごいね! あんなにすごい魔法があるんだ。


 規模もすごいし強いんだね。


 魔法、使いじゃないよね?」



「そうね、魔法使いではないわ。


 職業としては魔法剣士かな。


 あくまでメインはこの剣よ」



 リーシアは自分の剣に手をおいた。



「かっこいいいい! エノアもすごいかっこよかった!


 以前私を助けてくれたときと同じ魔法だよね。


 エノアも魔法使いじゃないんでしょ?」



「魔法使いではないな。


 魔法剣士でもない。ただの剣士だよ。


 長い時間詠唱して使うような魔法は使わない。


 あくまで自分の体を通して使う魔法だけだ。


 身体強化の延長線上にあるものだよ」



「剣士に、魔法剣士かー。


 肝心の私はやっぱり役立たたずでした……


 私もあんな魔法が使えたらなー」



「落ち込むなよ。俺なんか物心ついた時から練習してるのに魔法使えるようになったのは最近なんだから」



「大丈夫、落ち込んでないよ。自分の弱さについてはもうすでに背中は押してもらったからね」


 俺は微笑み、なら良かったと言った。




 そして街にたどり着くとまずギルドへ向かった。


 それは今起きたことの報告をするため。そして今後の行動を話し合うためだ。



 俺たちはギルド長に呼び出され指定された部屋へ向かった。

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