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神との決戦

「アイリスそっちは大丈夫?!」


 ティアナが私を心配してくれていた。

 私は大天使の力を使い、以前の使用者と同じ状態になっていた。


「大丈夫です! パンドラキューブもあるのでご心配はいりません!

 そちらは!」


「まだ大丈夫だけど……魔力が……」

「魔素での代用は?」


 私はティアナと隣り合う。パンドラキューブで自分たちを守るように囲むと天使達が覆いかぶさっていく。


「出来ない……魔素から魔力に変換するのに時間がかかるの」

「失礼します!」



 私はティアナに触れる。


「へっ? え、なんで魔力が」


「パンドラキューブはその魔素の性質を使用者に合わせて自由に変化させられるんです。

 エノア達が主神を倒すまで持ちこたえないといけません」



「うん、これなら!」


 ティアナが地面に手を置いて言いました。

「自分の出来る事に限界を決めない。一度に多くの天使を攻撃する方法を想像する」

挿絵(By みてみん)


 パンドラキューブの外側にたくさんの矢が渦を巻くように発生。それらは段々と竜巻のように広がり天使達を一掃する。


 それを見た天使達は方向転換し、エノア達の方向へと向かいました。


 私はティアナと一緒に瞬間移動する。座標が少しズレましたが天使達よりも前に出ることが出来ました。


 私はパンドラキューブを最大まで展開。


 障壁で出来た箱で私とティアナを含めた天使達を囲む。


「すいません。もうパンドラキューブで守るのは難しいのですが瞬間移動は出来るので」

「大丈夫! ゼートより遅いから!」


「頼もしいです。私の魔力が尽きるまで……お相手します」









 我はエノアに先に進むよう推奨した。


「さすがにゼート一人だと骨が折れると思うぞ」

「問題ない。こやつら程度であれば終焉の力が残っている我なら相手出来る」


 トアという娘が我に言った。


「あたしも残る。正直力不足だと思う。だから手伝い程度にしかなれないと思うけど」


 シェフィが我の肩に乗ってから言った。


「私も残るわ。まだ準備もあるし私もいるから不安はないでしょ?

 だからエノア、行ってきなさい」



「分かった。頼むぞ」

「ええ」


 エノアが三人の神を抜けて行く。当然三人の神はエノアを追いかけようとしたその時だった。シェフィが我の肩に乗りながら殺気を放った。

 三人の神の手が止まる。その間にエノアはダグラスの元へとたどり着いた。


 我は三人の神に言った。


「久しいな。殺し合ったことを覚えているか。

 ケアト、アルマ、ルーマ」


 ケアトが言った。


「覚えている。お前がこの天界で暴れていたこともだ」


「汝らの父がしたことだ。

 現状はそれよりも酷いではないか」


「我が父が全てなのだ」


「だからグロウはダグラスを殺そうとした。

 進化を認めず、むしろ後退を望む」



「世界が平和であるのなら進化は必要ない」

「戯言を。恐れているのだろう。このような事態になることを」


「好きに言え」


「汝は正しいと思っているのか。いや、正しい正しくないではないな。汝らに意思など存在せぬのだから。

 我はそれを不憫に思う」



「口数が多いぞゼート」


「魂を選別し、腐敗させ、いらぬものは影の世界、冥界へと移す。自分の言うことを聞くもののみを迎え入れる。

 逆らえば幾千の死を。

 冥界の在り方を変えるだけでなく世界の器を切り取り、自らの楽園を作り上げた。

 天界。我はダグラスを否定する。過去のグロウと同じように」



「黙れゼート!!」


 武神は拳を振る。

 その拳が我に当たる直前。


「格闘特化 終いの型!」


 トアが勇者候補の力を使った。我がトアに魔力の補助を行う。

 両者の間に衝撃がぶつかりあったことによって出来た高密度な壁が出来る。


 壁が割れ、誰一人として傷つかないという事実が残った。


 ケアトが言った。


「なんだ……ただの人間がなぜ……っ! そうか、この力は……勇者候補か」

「あんたらから受け取った力だよ。あたしはこの力のおかげで飯が食えた。ありがとう……

 でも、あたしはエノアの為に敵対する。ごめん」


「私の力か……偶然か、それとも運命か」


 没収はしないのか。ケアトも思う所はあるようだな。


 アルマが格子状の光線を作る。それに触れた我の腕は焼けるように溶けた。我の体は再生し、再び触れようとも意味をなさない。


 見えはしないが魔素が濃い部分がいくつもある。おそらくは斬撃が残っている。

 我がシェフィに合図するとシェフィはそれを消し去った。


 アルマはさらに自身の持つ槍を天に掲げる。見た目では我に届かぬ。

 しかしそこから伸びた斬撃が我を斬った。


 皮膚の薄皮一枚を。



 ルーマの爆炎が下から発生する。我はトアに言った。


「我の魔力を自由に使っていい。ただし使いすぎればもう二度と魔力回路は使えないと思ったほうがいい」


「――終焉の型」


 爆炎がトアを焼く。我とシェフィに傷はない。

 そしてトア自身も。実際には外側がやけどを負っている。その度に一瞬で治癒されていた。


「終いの型を自由に使える。力の持ち主には敵わないかも知れないけど……

 指くわえて待ってるなんてあたしには出来ない!」


 ケアトはトアを見ながら目を閉じた。


「ならばかかってこい。人の可能性を見せてみろ」



 トアはケアトへと走り出した。

 ケアトの拳が触れると残像へと変わり、ケアトの腕の上を走る。その横からアルマの斬撃が向かってくる。


 トアは走りながら横目でアルマを見た。トアの封印により斬撃は途中で動きを止める。



 未だ邪魔をしようとするアルマ。そして同じく手を下そうとするルーマの前に我は立った。


「邪魔をするのはやめてもらおう。

 汝らの相手は我がする」


 我の周囲に五つの魔法陣が現れる。シェフィが耳元で言った。



「私を巻き込むのはやめて頂戴ね」

「狙いはダグラスのみ。手加減はするつもりだ」


「無駄だと思うけど?」

「可能性はある」


「ふぅん……」


 右手を顔の横に置いた。そして我はその手を横に振り払った。

「モルティグ・ディオン」


 手加減はしたがモルティグ・ディオンを防いたアルマとルーマの腕は吹き飛び、地面に大きな道を作りながら飛ばされていく。


「やはり手加減が難しい。地形に影響を出さないようにしたつもりだったのだが」


「手加減なんて出来るわけないでしょ。自分の体つき見てみなさいよ。

 普通の手加減とは難しさが違うの。人間が力を制御する時とあなたが力を制御する時じゃ力の幅がありすぎるのよ。

 人間は十段階で良くともあなたは何千分の一という考え方でやらなきゃいけないのよ?」


「うむ……しかしこのままというわけにもいかぬ。

 この戦いが終われば我も人の街に入ってみたくてな」


「あら意外、そういう欲が出てきたの?」


「この大きさになる前は魔界の街に行けたのだがな。友の作った街をゆっくりと見てみたい。力を制御するというのは絶対に必要だと考えている。

 少し踏み込んだだけで地面が割れてしまうからな」


「今度その練習に付き合ってあげるわよ。手加減は今のままで戦ってあげなさい。

 そうすれば死ぬことはないわ」

「うむ」











 俺たちはルーフェン・ダグラスの前にたどり着いた。


 ダグラスは未だ宙に浮く玉座に座り、俺たちを見下ろす。ゼートより一回りも超えるルーフェン・ダグラスの威圧感は凄まじかった。


 さすがはこの世界を支配する主神である。俺は顔を上げて言った。



「そんな高い所にいるなよ。どうせお前よりも小さいんだ。椅子で水増ししなくとも見下ろせねーよ」


 ルーフェン・ダグラスは俺の言葉を無視し、リビアに言った。


「リビア。もう逆らうことなど出来ないと思っていたのだがな。ただの人間だったはずのお前がよくここまでしたものだ。

 もう一度幾千の死を迎えたいのか?」


 リビアは俯きながらも答える。


「私はあなたには屈しない。私には責任がある。

 あなたのいいなりになるなんて癪だもの。グラディアスの時は上手くいかなかったけれど……彼はエノアに託した。

 そして私も同じ。エノアは私を助けるためにあなたを殺すと言ったわ」


「分からぬな。お前如きの為にそこの者が立ち上がる理由が」



「本当よ。だから私はもうあなたの言葉には屈しないし怯えもしないのよ」

「お前の不死の力は私が与えたことを忘れるな」


「幾千の死を迎えたことを忘れないで頂戴」


「飽きたな。全員死ぬが良い」


 ルーフェン・ダグラスは空中に文字を描き込むと今まで見たことのない大きさの炎の槍が上空に出現した。その炎の槍は下にいる俺たちを向いていた。

 ルーフェン・ダグラスが手を下ろすとその動きに沿って炎の槍も地面へと向かった。


 リィファの詠唱に使われる四角い輪っかがその大きさを変え、俺たちの上空で回転する。

 その下から破龍が口を開ける。


「破龍さん。お願いします」

 破龍の口に光が溜まっていく。


「殲滅魔法 ヴィレスト」


 破龍から放たれた殲滅魔法はリィファの詠唱を通した瞬間、極度に大きさを変えてルーフェン・ダグラスの炎の槍をまるまる飲み込んだ。

 閃光がチリチリと残りながら消えていく。


 ルーフェン・ダグラスはそれを見て言った。



「会うのは初めてだな破龍よ。

 まさかそんな小娘の元で跪いているとはな。だがその小娘はグラドの隠し玉だったか。

 直前まで見せられなかったがゆえ対面して見ると人間の小細工にしては中々だ」


 リビアがルーフェン・ダグラスに言う。


「そうでしょうね。あなた達が見れる範囲は私が管理していた。

 知らない力も多いはずよ。これが私の反逆。私を冥王にしたことを後悔することね」


「想定の範囲内だ。所詮は下界の浅知恵よ。この壁を超えることは出来ぬ」



 ルーフェン・ダグラスは指先を俺たちに向ける。


「神の壁。それは人間が超えられぬ絶対的な壁である」

「はっ、笑わせる」


 俺はそう言って壁の前にまで歩いた。


「魔王……グロウの残りカスか」

「本当にそうか確かめて見るんだな」


 俺は終焉の魔剣、ガディウスを振った。魔王の魔力と勇者の魔力が同時に流れ込んでいく。

 空にまで伸びた神の壁に一つの線が出来る。それは空白。ガディウスの力はその壁を喰いつくした。


「神の壁? 人はもうそんなの超えたんだよ。

 人が打った剣。人であった魔王の魔力。人が作り出した神の力。まだ使える力はある。けどそれだけで充分だ。

 神の壁を超える程度ならな」


 ルーフェン・ダグラスは眉を細めた。


「いいだろう。神の力を思い知らせてやろう」

「こいよ。人と魔族の力がどんだけのもんか教えてやる」


 ルーフェン・ダグラスは俺に手を向けた。それから数秒後。


「……貴様、勇者の力を取り上げることが出来ないのはどういうことだ」


「気づいたのか。俺の勇者スキル、譲渡はダグラスのもの。それをアイギアが改変してくれたのさ。人間の作り出した神がな」


「まぁいい。誤算程度にもならん。勇者の力なんぞ所詮は神の力の端くれ」



 ルーフェン・ダグラスは俺たちと同じくらいの大きさの槍を数万程度出す。


 空中に佇む槍は俺たちをこれ以上進ませんと放たれる。破龍は障壁を作り俺たちを守る。

 しかし破龍の障壁にひびが入る。それが割れた時、全ての槍は凍てついた。


 遠くの方でカンナが親指だけを上げてグッと見せてくる。俺は手を上げて感謝を伝える。



「なんだと、勇者候補ですらないただの人間が終焉魔法を扱いながら制御までしているのか!」

「なに驚いてんだよ。誤算だったのか」


「ああ。あの転移娘には興味が湧く。欲しくなった」


「指一本触れさせねぇよ」



 俺は上空に黒い塊を出現させた。


「いい加減降りてこい」



 黒い塊はルーフェン・ダグラスに向かって落ちていく。ルーフェン・ダグラスは手を上空に伸ばしそれを受け止めた。

 追い打ちをかけるようにリィファの作った白い塊がルーフェン・ダグラスを襲う。

 白と黒が入り混じった巨大な柱が天高く伸びる。

面白いな応援したいなと思っていただけましたらブックマークと評価の程、お願いします。


喜びます。

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