カンナ再会【カラー】
カンナを助けることに成功した俺はカンナと一緒にルーヴェスト帝国へと向かっていた。
旅の途中カンナは別れ際のアイリスを思い出し、笑っていた。
「あはは、あーごめん。アイリス嫌がってたなーと思って。エノアとそんなに離れたくないんだなーって思ってたの。ウー、エノアーッ、今度はいつ会えるんですか―ッて泣いてたからちょっと可笑しくて。気持ちはすごい分かるけど」
「国のことがあるからな。仕方ないといえば仕方ないんだけどな……アビスもさすがに転移術式をあそこで固定するのは難しいらしい」
「そういえばこの後、神の塔に行く準備するんだっけ?」
「ああ。その後はダグラス王国に下剋上と言いたいとこだが如何せん神の加護がな……
出来たことと言えば塔と領域内でのスキルの行使。いくら魔王として、勇者として覚醒したと言ってもダグラスの管理下だろう……
神の加護を破壊出来るかどうか」
「勇者で魔王ってなんか変だねっ。
ねぇ、どうしてダグラス王国を潰そうとしてるの?」
「確かにもう関係はない。今更今までの仕打ちの復讐をした所で意味はない。
母さんとの別れもちゃんと出来た。もやもやはするが。
ただ、あの国をあのまま放っておくわけにはいかない。特にミレッド帝国を俺が崩壊させたことでカリムの身が危ない。
カリムに勇者候補としての負担が掛かるだろう。そうなれば俺を殺しに来る。
そしてカリムは死ぬ。従わなくても死ぬ。それさえなければ王位継承するだけで済むんだけどな。
ただそれまでは国王の暴虐やわがままは終わらない」
んー、と口元に人指し指を当てて考えてからカンナは言った。
「つまり……国王の私物化してる状態を一刻も早く終わらせてカリムを助けつつ王に即位させるってのが理由?」
「ま、そういうことだな。カリム自身は気に食わないがなるようにしてなった感じはある。
どうなってもいいと言えばいいが、リィファの兄だ。それに……かわいそうでな」
「……嫌な運命だよね。いつ殺されるかも分からない父親のご機嫌を取りながらその期待に答える。たとえそれが残虐行為だとしても」
「あいつ自身正しいことを知っている。それだけで充分だ。ほんっっっっと気に食わないけどな」
「あはははは! すごい嫌じゃん!」
「俺だって人間だ。傷つくさ。人生二度目でもな」
「それでも助けようとする所、好きだよ」
「っ、なんだよ……いきなりそんなこと言うなって」
「あははっ、照れちゃって。また唐揚げ作ってあげるね」
「そりゃ楽しみだ」
ルーヴェスト帝国に戻った俺とカンナ。
カンナはリーシアに抱きしめられていた。他のみんなもカンナが帰ってきたことに喜んでいた。カンナはすこし照れていて、恥ずかしそうにしながら笑っていた。
それを見ながらカンナは今、幸せを感じているんだろうなと考えていた。
幸せをくれた、か。それはカンナ自身が掴んだものでもあるんだぞ。
アビスが俺に耳打ちする。
「魔王様。魔王会議と神の塔についてお話が」
「分かった。リーシア、ちょっと仕事してくる」
「分かったわ。私はカンナと街を見て回らるから!」
俺はアビスと共に仕事用の自室へと向かっていた。
「交易の方はどうなってる」
「はい。聖書を失い安定した供給源を絶たれたミレッド帝国、支配に置かれていた植民地、それとディルマ王国、ミィレンとも話が進んでおります。
その交渉をクルケッドが行なっております」
「……ん? クルケッド?」
「はい。ご存知ないですか? 知り合いとおっしゃってましたが」
「クルケッドってカラムスタで護衛依頼を頼んできた商人の青年か! 死人に襲われたりといろいろ大変だったが……
待ってくれ、クルケッドが交渉してるってことは」
「はい。カラムスタ王国からルーヴェスト帝国に移住されてます。あとで挨拶に行かれてみてはどうでしょう?」
「そうだな。アビスが任せるってことはいい働きをしてるだろうし」
そして俺とアビスは部屋に入る。アビスはコーヒーを淹れ、俺の座っている机にコーヒーを置く。
「魔王会議についてですが各々との連絡に時間が掛かります。会議の内容については魔王様の意思、配下となるか否か、今後の魔族、人間に対しての扱いなどです。
正式に魔王として君臨してもらうことになります。
勇者の件についてはどうされますか?」
「まだ話さなくていい。というよりかは隠しておきたい。カリムの命にも関わるしな。カリムについては後で話す。勇者スキルも奥の手として持っておきたい」
「分かりました。リドが部屋の増築について相談されてますが」
「してやれ。人形の置き場所がないんだろ。そうだな、今回の戦いで使った地下施設。あそこの一部を改装してやれ。
細かい所は任せるが天井に足場、できるだけ地上に近い所を用意してやるように」
「かしこまりました。
では神の塔について。現在確認されている神の塔ですが、四個となります。あるという噂も含めると八。
今回攻略を進めようとしているのは海の上に建つ神の塔カルガディア。
港町があり、そこから神の塔まで伸びるように道が出来ております」
「分かった」
「それと情報がもうひとつ。
その塔を攻略することを目的とし、代々技を受け継ぐ一家があるとのことです」
「塔を攻略する一家?」
「はい。なんでも一子相伝の技を子供に伝え、両親は塔へと向かうそうです。それをずっと続けているとのことで……」
「塔が出現したままってことは」
「おそらくは……」
「弊害となるか追い風となるか……分かった。向こうについたらその一家についても調べてみるよ。
今回リーシアとトアを連れて行く」
「他の方々は?」
「リィファにはここに居てもらいたい。カンナも病み上がりだ。魔王関連の力を持つものめ待機。クロエも同様だ。
ティアナにはエルフの森とをつなぐ鍵として残ってもらわなきゃいけない。リドはおそらく来ないだろうし、シェフィも長旅になるからな。
だから俺とリーシア、トアの三人で行ってくる」
「ではそのように」
謁見の間、王の椅子に座りながら少々考え込んでいた。
私はカリムを呼ぶよう執事に伝える。
「カリムを呼べ」
ヴァルクとの連絡がつかない。予定通りだ。
そしてヴァルクは必ず戻ってくる。
予想通りミレッド帝国も落ちた。所詮は一つの力に頼るしかない愚王よ。
「お父様」
「来たか。カリムよ。魔王の元へと行け」
「ッ! ま、待ってくださいお父様、我々ではまだ魔王を倒すほどの」
「誰が倒せと言った。魔王の元へ行き、この国を攻めさせよ」
カリムは理解が及んでいない。その様子が見て取れる。
「攻めさせる、ですか? わざわざ攻める必要もないのにどうやって……」
「どうすれば良いと思う。息子よ」
「そ、それは……攻めるに値する理由が必要となります。ひ、人質や、復讐をするような……
例えば魔王の配下の一人を殺すなど」
「うむ。そうだ」
「本気、ですか」
「くくっ、冗談だ。そこまでせずとも良い。
これを渡せばそれで済む話だ」
そう言って私は一枚の封筒を手渡す。
「これは……?」
「お前が知る必要はない。そして中身を見ることを禁ずる。
魔王の元へ行き、それを手渡せ。以上だ。下がれ」
「も、もう少し詳しくお話を」
「下がれと言ったはずだ」
「はっ……」
さて、どうする魔王。
「全ての準備は整っているぞ? ……ルーフェン・ダグラス、お前も同様いつまで眺めていられるかな? ふふ」
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