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火蓋は切られた

 リビアの名前を借りているという少女が女の子座りをしながら俺を見上げていた。

 とりあえず手を差し出し、その場に立たせる。



「えーっと、リビア、って呼んでいいのか?」


「今まで通りで構いません。

 この姿でははじめまして? になると思います」



「見覚えはないからな……

 はじめまして」


 こくっと頷く少女の背丈は小さく、黒いフードを被っている。

 そのフードを少女が取ると猫耳が付いていた。よく見ると尻尾も付いている。

 フードのついた服は胸の下辺りまでしか丈がなく、その下にはセーラー服と長いリボンをつけていた。


 スカートはフードと同じ黒色で白い横線が裾に入っている。

 膝の高さまで靴下を履いており、靴はローファー。

 フードを被っていなかったら学生と見間違う服装である。

 肩まで伸びた髪がなびいている。

挿絵(By みてみん)



「とりあえず、何か言えることある?」


 俺は何から話していいか分からずそう言った。



「会いたかった」


 そう言って少女は俺に抱きついた。そして猫のように頭を擦り付けごろごろ言っている。



「んー……

 この子が今まで俺を助けてくれたのか……

 というかリビアだと今後困るよな。名前つけてもいいか?」


「構いませんマスター」


「じゃあ……クロエ」



 ぴくんっと耳と尻尾が反応しうれしそうな反応をする。

 良かった。結構気に入ってもらえてるみたいだ。

 俺は自然と頭を撫でながら考えていた。



「思い出すなー……

 昔母さんに猫を飼いたいってせがんだこと。

 久しぶりの会話だったけどあっさり断られたんだよな……

 あの時の猫にすごい似てる。

 だからクロエって名前をつけたんだけどな」


「んにゃぁっ」



「よしよし。

 あの時はごめんな……ってクロエに言っても仕方ないな」


 シェフィが顔をのぞかせてくる。


「ちょっと、ちゃんと説明してよ。

 何が起こってるのかわからないじゃない」


「この子はクロエ。前はリビアって呼んでたけど不都合が出るからな。

 俺にはリビアっていう名前のスキルがあった。

 会話しつついろんなサポートをしてもらってたんだがまさか生きてるとは」



「ふーんこの子がスキルね。

 まぁ納得したわ。

 ねぇあなた……ちょっと提案があるんだけど」


「なんだ?」

「ふふ。リドも呼んでちょっとね」


「お呼びでしょうか?」


 リドが天井に足の裏をつけて立っていた。

 シェフィはなにやら魔法のような攻撃をリドにぶつける。

 リドは地面に撃墜された。


「リド、あなたね。

 突然現れるんじゃないわよ。そんなだから昔から距離を置かれるのよ?」


「いやーどうしてもこう登場したくなってしまうのですよ。

 性でしょうか」



「直しなさい……

 それで提案っていうのはね」


 俺はシェフィとリドの話を聞き、納得した上で実行した。

 二日ほど寝込んだ後、俺はシェフィ、リド、イナとクロエを連れて自分の国に向かった。

 長いこと開けていた自分の国がどうなっているのか。

 楽しみだ。





「おー……これが俺の魔王城」


 自分の国が見えてきた俺はそんな独り言を呟いた。


 外壁まで用意されたルーヴェスト帝国。その外壁の外からでも見える巨大な城に圧巻の二文字だ。


 魔王ということからなのかデザインは丸い感じではなく尖っている感じ。

 三角形ではなく二等辺三角形というイメージだろうか。

 黒を基調とした魔王城を囲むように外壁が用意され、中には何重もの結界が張られている。

 その魔王城の外壁に破龍が腰を下ろしているのが見える。

 ここからじゃ分かりづらいがそれだけ幅があるということだろう。


 町並みもいい。

 主な道路にしか敷き詰められていなかった石道が隙間なく配置されている。

 大きな道路近くには看板が用意されて、住所まで作られていることを知る。

 シェフィはその様子を見て言った。



「すごいじゃない!

 数ヶ月でこれを作り上げたんでしょ? そうとう優秀な建築士がいるのね。

 散歩したいわっ」


「めずらしくはしゃいでるな。好きに散歩してくれ。

 俺はガディと少し話がしたい」


「分かったわ。ちょっと散歩してくるわね」


 駆け足で街に消えていく。

 長いこと生きてるんだ。あたらしいものや興味が湧くものには飛びつくだろう。

 それだけ暇してるだろうからな。そんなシェフィが興味を抱くのだからガディはよくやっている。


 そしてリドはいつの間にか消えていた。

 もはや何も言うまい。俺はイナとクロエを連れてガディを探しに行く。

 近くに居た住民に居場所を聞くと、自分の工房に籠もってるんじゃないかと言われる。

 住民に礼を言った後、俺はガディの工房を探し出し、中に入る。



「よぉガディ。

 あんま大きくないんだな。新しい工房は」


「エノアの旦那っ!

 帰ってきてたんですかい。

 いやーこれぐらいがやっぱわしには丁度いいんですわ」



「ガディらしいな。

 それで例の件だがどうなった?」


「あー、旦那が獣国に行ってる間に依頼されたやつか。

 急な話だったもんで造形は凝れなかったがちゃんと作り上げたぜ。

 でもあんなの地下に作ってどうするんだ?」



「あのままならなんの意味もないだろうな。

 けどうちにはアビスがいる」


「ん? どういうことだエノアの旦那」


「ま、ミレッド帝国との戦争までお預けだ」


「苦労したのにそれはないぜエノアの旦那ァ……

 大きさが大きさだから建築に参加したゴブリンとオークは今でもグロッキー状態なんですぜ?」


「楽しみにしといてくれよ」

「……しゃあねぇか」


「その代わりちゃんと報酬も用意する。

 もしどうしても欲しい素材なんかあるなら取りに行ってくるぞ」


「ほ、ほんとですかい?!

 じゃあ」


 あれとあれとと権限なく要求するガディを鎮め、さすがにもう少し減らしてくれと頼んだ。


 その後俺は戦闘が行えるものを全員集めた。


「全員集まったな。

 リドがいないがまぁいいか。あいつは。


 さて、こちらも準備がほとんど整った。攻め込みたい所だが如何せん厄介なことがある。

 タイミングは見計らうがミレッド帝国もそろそろ腰を上げるだろう。

 俺を放置するわけにもいかないだろうからな。


 各々作戦を伝える。その作戦を遂行出来るよう励んでほしい。



 そしてもうひとつ。ここで一種の契約状態を結ぶ。

 完全に俺の支配下に入ってもらう。リーシア達やトアなどの一定以上の戦力を持つものは除外する。

 別に強制はしない。嫌ならしなくていい。怒りもしないし咎めもしない。

 俺を裏切ることができなくなる代わりに強さを与える。

 魔王の支配下となる覚悟があるものは?


 ……全員か。いいんだな?」



 俺は戦闘を行う数千の魔族を支配下に置いた。

 それだけの契約を行えば意識を失っても仕方がないというもの。

 血の契約ほどの強力さはないものの能力の底上げにはなる。



 目を覚ました俺に飛び込んできた一報はミレッド帝国軍が動き出したということ。

 お互い準備を整え終わったということらしい。

 俺はまだやることがあるが。


 ミレッド帝国軍は最短経路をゆっくりと侵攻。

 一万の部隊に分けて配置。


 そして支配下にある国々がルーヴェスト帝国を囲むように侵攻しているとのこと。


 俺の中でもっとも重要な国……



「アビス、あの国はどうしてる?」


「魔王様の生まれた国、ダグラス帝国は……未だ行動を起こしてはおりません」



「そうか。さぁどちらにつくつもりだ? ダグラス王国。

 あっ、アビスちょっといいか」


「はい」



「移動術式をひとつお願いしたい。

 後、以前頼んだのもよろしく頼む。

 それとミィレンとディルマに一報を入れてくれ。

 カラムスタにはダグラス王国の行動を監視してもらう」


「今回もお仕事がいっぱいですね」



「全部終わったら二人でゆっくりしよう。朝まで」


「うぅ……なんだかあれから魔王様いじわるですよ?」



「ごめんごめん。ついアビスだと反応がかわいくてこうしたくなっちゃうんだよ」


「うぅ……」




「さて、始めようか。

 ――終焉の魔王連合国と人類最大を誇る帝国の大戦争を」

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喜びます。

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