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第79話、本来ならば心穏やかに健やかに過ごせるはずの【地(ガイアット)】の日に



SIDE:キショウ



そうして、遂にやってきてしまった土……【ガイアット】曜日。

お師匠みんなの妹分、魔道具使いのサマルェ・ヴルックが担当する日である。


これまでの師匠たちは、異世界へ向かってからのダンジョンでの講義だったり、『リヴァイ・ヴァース』に存在するダンジョンや一つの国レベルには広い敷地を使っての訓練だったり、自室に招かれたりしていたわけだが。

ご多分に漏れずサマルェからの指定は、彼女に宛てがわれている自室であった。



例のごとく夕食の場には、とっておきのデザートとやらに後ろ髪を引かれつつも彼女が待ち構えている気がして向かわなかったのだが、それも織り込み済みであったのか、カイ師匠に頼んで所謂外食をして帰ってきたら、キショウの自室その扉にそんな指定場所の書かれた紙が挟まっていたのだ。


ちなみに、ちゃっかりと『きゃわいい女の子のどちらかに代わってからくること』なんてことまで書かれていたが、当然のごとくスルーして。

だけど、こうなってくると向かわずに逃げ出してもどうせ捕まるだけというか、無用な時間を使ったと怒られるのもいただけないし、初めて邂逅した時のように、いきなりマジックアイテムを使われて強制的に変わってしまうのもいただけないからと。

キショウは半ばやけっぱちなままに、正面から言われた場所へと向かうことにして。





(とはいえ、どうしようかなぁ。二人? とも嫌がってそうだし、できれば表に出ない方法考えないと)


恐らく、そう思ってキショウが頑張っても師匠には叶うべくもなく変えられてしまうのだろうが。

その時その瞬間を遅らせる……その手段を考えることこそが修行になると無理やりにでも自身を納得させていた。


(おれの内側にいる子たちって、四人でいいのかな。まぁ、サマルェ師匠は女の子がお望みなんだろうけれど)


『気の優しい力持ち』と、『虫好き博士』。

キショウの内にいるという、ここにきてようやっと思い出してきた友達二人。

彼らは表に出てくることに抵抗はなさそうだが、当然サマルェは納得しないだろう。



そもそも、どうしてサマルェ師匠は女の子ばかりを希望というか、こちらが引くくらい求めてくるのか。

せっかくだからとソトミに伺ってみたのだが、プライベートなことだからと言葉を濁されてしまって。


それでもそこに居合わせていたクルベからも聞いてみて分かったことは。

女の子が好きすぎると言うよりも、事実クルベ自身基本避けられているらしく男性が苦手なのではないか、ということで。



(そう言えば、はかせと【ウルガヴ】の女の子、役者さんみたいだったなぁ。あんな風に勢いもって強気でいけばいいのかな)


例えば、師匠に対しても物怖じせずにぐいぐいと自分の意見を主張するような感じでいけば、変わらずともすむのだろうか。

なんとはなしに、そんな自分を想像してみて……キショウはないないと、首を振る。


実際問題そんな器用なことなどできるはずもない、攻夫など持ち合わせてはいないし、そもそもがそれは自分らしくない、なんて思っていて。




「……もう、なるようにしかならないし、覚悟を決めよう」


訓練だと思って色々考えてはみたけれど。

結局のところ明確な答えは出なかった。

こんな風に策を弄してみたところで、なんやかやで変えられてしまうのは目に見えていて。


内なる世界……それがどこにあるのかはよく分からないけれど。

そこにいる時点である程度は諦めてもらうしかないというか、何とか嫌がらずに受け入れてもらうしかないかなぁ、なんて思っていて。




それでも、自分らしく出来うる限りのことはやってみようと。

時間ぴったり、堂々と正面から……まずはノックをしてそこで待ち伏せているであろうサマルェ師匠に来訪の旨を伝える。



「お邪魔します。キショウです。入ってもよろしいでしょうか」

「……ほーい。かわい子ちゃんじゃないみたいだけれど、とりあえずは良いわ。入ってきてちょうだい」



逃げ出さずによく来たわね、と。

キショウのままであったが、とりあえずは問題なさそうであったので、その言葉に従いもう一度失礼しますと一言付け加えてからサマルェの自室へとお邪魔する。



「ほわぁ、すごい。これ全部マジックアイテムなんですか?」

「ええ、そうよ。あたしが手づから集めた宝物たちなの。その目に焼き付ける機会を与えてあげるんだから、感謝しなさい」



クルベの時のような異世界へ繋がっているようなことはなく。

何故か真ん中にあるおこたに入りつつ、くつろいでいる様子のサマルェ。

部屋としてはキショウに与えられたものより広いものの自室として大きく逸脱してはいないかわりに、

サマルェの言う自慢の宝物らしい、マジックアイテムが机替わりの炬燵を囲んでいた。


一見して用途が分からないものから、魔石らしきもののついた身に付ける類のもの。

宝石そのものを下地に、マントや仮面をはじめとした魔力の込められし装飾品。

更にどこかで見たことのあるような、大小様々なぬいぐるみや人形が彩りを添えている。



素直にまっすぐやってきたことがお気に召したのか、想像していた男嫌いな感じもないし問答無用で変えられそうな様子もない。


このままなら無理だと思っていた意見を通せるかも、なんて思いつつ。

勧められるがままに炬燵に入りつつ、キショウは早速とばかりに口を開くのであった……。



     (第80話につづく)









次回は、4月13日更新予定です。

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