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第77話、アンノウンのもう一人がいると、それが全ての始まりだったとは



SIDE:ソトミ


そんなこんなで、毎度のごとくキショウくんが訓練頑張ってるのを観覧する時間がやってまいりましたが。


キショウくん自身、フォルトナの扱きを受けてカイの故郷で冒険して、サマンサとのお茶会に参加したことで他の人格に『代わる』ことに慣れてきたようで。

キショウくんがこの我らが世界にやってきて、所謂『役』から抜け出すための洗礼とも言えなくもない、

いっちょもんでやろうかしら的な指導は同年代の少年がやってきたことで興味本位全開だったカイにもってかれちゃったわけだけど。



同じくその場にいたクルベによると。

正にその時その瞬間に、キショウくんもほとんど自覚のないだろうままに現れたのが今現在キャンバスの向こうにいる【ルフローズ・レッキーノ】属性に愛されし少年らしい。


氷のごとく動かない表情の割に、今思えばカイの訓練日に出てきた、やっぱり最初はキショウくんのふりをしていた女の子……ウルハちゃんと同じように、まるでこうしてこちらが覗き見、観覧してるのが分かっているみたいにいちいち動きが派手というか、見せて魅せるやり方をよくよく分かっていらっしゃる、例えて言うなら役者さんみたいな感じで、クルベも感心するくらいの怒涛の立ち回りを見せていて。



このまま行けば予想外にもキャンバスの向こうの世界、物語の終わり……最奥にまで達しそうだったけど。

そんな、英雄候補にも引けを取らない実力を見せてくる少年をじっくりと眺めているうちに。

ウルハちゃんやサキちゃんと同じように、この世界、お屋敷のモデルにもなった故郷の『スクール』に通っていた後輩であることに気づかされる。


サキちゃん自身がわたしの記憶よりもおっきくなって可愛くなってた時点で気づくべきだったのだ。

あまりに自信に満ち満ちていて、その立ち回りも才能も抜群だったから気づくのが遅れたけど。

彼……カリマ・レッジレインはサキちゃんたちとクラスメイトで同級生なのだ。


そういう認識をずらす魔法やマジックアイテムでも使っていたのか。

今ではキショウくんには似てもにつかない、はっきり言ってしまえばタイプの全く違う青銀の髪の少年。

もうおぼろげではあるけれど、故郷にいた頃の彼は、所謂運動が苦手なもやしっ子で。

視力矯正のための眼鏡を常備していて、その見た目からなのか下の学年の子たちからはメガネくんだとか、博士くんだとか言われていたのだ。


そのあだ名が表すように、後輩ちゃんたちのグループ、パーティでは頭脳担当で。

バリバリ前線に出て、我が主役とばかりに無双している彼を見て、すぐには結びつかなかったのは事実で。



(あ、そうだ。思い出したよ。彼を含めた有名な悪ガキ三人組がいたじゃない)


世界が変わっても覚えているというか、音に聞くほどなのだから相当なものなんだろう。

それこそ、彼らを中心に面白おかしくてわくどきする物語が展開していたのに違いない。


そして、そのうちの一人は、正しく役割分担でもしたかのように、気は優しくて力持ちを地でいっている腕力担当な彼は。

十中八九わたしやフォルトナが訓練中に出会った鬼人族、ゼンザイ・ヴォクセンだろう。

もちろん、記憶にある彼と比べても随分と立派になったようだけど、鬼人化するとその体躯が橙に染まるヴォクセンの一族の特徴は忘れようもなくて。


(そうなってくると、リーダー的ポジションにいるはずの彼は……っ?)


つば付きの帽子がトレードマークの、生来の人たらしな、みんなを引っ張ってまとめることに長けた、正に主役。

この流れからいって、その主役にあたる人物がキショウくんであることはもう疑いようもないはずなのに。

わたしは、この『リヴァイ・ヴァース』に落っこっちてきたキショウくんを目の当たりにしても、その事を思い出すことはなかった。


激しい違和感と、記憶の齟齬。

客観的に見ればどうしたって同一人物のはずなのに、イコールで繋げてはくれない。



(よく似た別人だとでも言うの? まさか。……いえ、中にいる子たちが4人だけだとは限らないのかも)



それは、創造主に忘れ去られてしまった役者の弊害なのか。

無意識のうちに、半ば正答に辿り着いたことにも気づかないままに。


わたしは、その辺りのことを今目前にて『この世の果て』のひとつとも呼ばれたダンジョンのひとつを、夢だと思い込む力で攻略せんとする少年、カリマに直接聞けばいいじゃないかと、ダンジョンボスの代わりにでもと最奥のフロアへ向かおうとして。




「……やはり。あれほどの力、そうそう長い間維持できるものでもなかったかっ」

「って、大変っ。すぐに助けにいかないとっ」


まるで大きな意志でも働いているかのように。

わたしの行動を阻害するかのように。

突然電池が切れたみたいに、ダンジョンの真っ只中で倒れ伏すカリマ少年。



何せ、突然にすぎることだったから。

あくまでキャンバスの向こうは心象の世界であって、キショウくん自身にダンジョン攻略失敗しても特に影響があるわけじゃないことも忘れて。

わたしたちは、焦りに焦りつつ屋根裏部屋から飛び出していく……。


SIDEOUT



    (第78話につづく)









次回は、4月3日更新予定です。

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