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第76話、紋切り型な反応を返してしまうくらいに、何だかんだで気になって



SIDE:ソトミ



毎度毎度デバガメというか、自分の担当でもないのにひとの訓練の様子観察してるのどんだけなのって、自分自身でも思うわけだけど。


創造主さまも忙しいのか、わたしの相手するの面倒くさくなったのか、交換日記的なあれに対しての返事もご無沙汰になっていて。

いつもならば定期的に新人さんたち……悪『役』を終えて我らが世界に落っこちてくるひと達もそれなりにいるのだけど。


今はそう言うタイミングなのか、キショウくんがひとりで複数人分扱いなのか。

一応ここの長として、新人さんたちの面倒を見るというか、この世界がどんなものなのか、どうしてここへやってくることとなったのか、オハナシするのがわたしの主な仕事で。


S級悪『役』が久しぶりに来たのかぁって、気合入れて張り切っていた割にはキショウくんってば正体を表さないどころか、毎日訓練漬け日替わり師匠状態なことに文句も言わずむしろやる気満々(くしくも最終日のサマルェを除く)で、正直ちょっと肩透かしなところはあって。



それでもまだ馬脚を現してないだけだろうって。

暇を持て余している自分に苦しい言い訳をしつつ、今日も今日とてわたしはクルベとキショウくんが絶賛訓練中であろう場所へと向かうことにする。




クルベが訓練場所に指定したのは、クルベの自室……絵を描く時にも使うアトリエだった。

もはや英雄一歩手前な彼らには、わが城の中でもとびきりいい部屋をあてがっていて。

部屋の模様替え配置替えはご自由にとはみんなに言っていたけど、【リヴァ】魔法などを扱えば部屋の中に異世界を創っちゃうことだって造作もないようで。


見たもの聞いたもの、読んだもの体験したものを絵にして、具現化できちゃうクルベが自由に好き勝手創作活動に勤しんだ結果、彼に宛てがわれし部屋は『リヴァイ・ヴァース』そこかしこにあるダンジョンもかくやな魔境になっていて。




「はてさて、どんな感じかな。わたしの思惑通り、他の子呼び出せたのかしら」

「……あぁ、やっぱり来たね。我が上司よ」

「ってなによ、クルベまで。変な呼び方して。流行ってるの?」



ソトミって呼び捨てか、敬意を払って可愛くちゃん付けで呼んでって言ってるのに。

その要望に応えてくれるのは、チョーシがいい時のカイくらいのもので。

わたしはぶつぶつ文句を言いつつ、クルベの部屋……その上階、屋根裏部屋っぽい場所にお邪魔する。



そこには、キャンバスの前に腕組んで座るクルベの姿があった。

こちらを見もせずにわたしの存在に気づいたのは、わたしが来るだろうってこと見越していたからなんだろうけど。

振り向きもしないのは、当然のごとくその……七色に揺らめいても見えるキャンバスの向こう側に広がる世界、光景に集中してるからなんだろう。

わたしは、お邪魔しますよと一言だけかけて、そこらへんにあった椅子を引っ張ってきて。

いつぞやと同じようにキャンバスの向こう、キショウくんの訓練の様子を覗き見、観察することにする。




「うわっ。何このダンジョン、えげつなっ。体内風ロケーションに虫の大群? わたしはそこまでじゃないけど、女の子なら嫌がって出てこないんじゃない?」

「ふむ。……それも想定済みさ。今そこにいる彼には、ご満足いただけているようだがね」



……まさか、そうなのか。

知らなかった、とでも言わんばかりなクルベのリアクション。

あぁ、そう言えばクルベってば悪『役』バリバリの頃は、おどろおどろしい絵を描いていて。

キャンバスの背景を埋め尽くすように蠢いている、お腹に顔のついた蜘蛛の魔物みたいな子を具現化したりしてたっけ。

ちょっとズレているというか、正に魔絵師って感じよねぇ。


そんな独特な価値観持ってるクルベの、後半の部分は強がり発言なのかなって思ってたんだけど。

手のひらから始まって全身から冷気を放ち、集り群れる実に種類様々な虫形のモンスターたちを蹴散らし最奥を目指さんとする彼は、その表情こそ動かないものの、確かにクルベが言う通り楽しそうにも見えてしまって。



「あぁ、そう言えば思い出したよ。『彼』はキショウ君が初めて魂の彩を変え、私とカイの前に現れた少年だね。どうやら、他の魂の片割れたちと異なり、代わっても見た目が大きく変わることはないようだ。なるほど、興味深い」

「って、確かに……いやいや、全然かわってるって! キショウくんはあんないかにもニヒルでドライな雰囲気出さないでしょうに」

「そういうもの、か? 流石ソトミ嬢、よく見ているじゃぁないか」

「べ、別にそんなんじゃ全然ないんだからねっ」

「……?」



もしかしたら、クルベ自身はからかうつもりなんてまったくなかったのかもしれない。

テンプレに過ぎるリアクションをしてしまった自分に大いに反省しつつ。

誤魔化すようにして、もっとよく見せなさいとばかりにキャンバスのその向こうに注視することにして……。



     (第77話につづく)









次回は、3月29日更新予定です。


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