表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/86

第71話、おんなじ立ち位置の存在がいなかったから、うれしかっただけなのに




SIDE:ソトミ



「この世界へやってきたきっかけ、ね。ぼうやの内にいる子どもたちの存在を詳らかにするのが、今回私にあてがわれた命ではなかった?」

「あ、うん。キショウくん以外の子たちが自由に出てこられるようになれば、予定にないのにここへ来る事となった理由、聞けるかなって。少なくとも、カイたちの訓練中に現れた女の子は、何かしら知ってそうに見えたのだけど……」



実のところ。

予定になかったキショウくんの登場に対して、何度か創造主さまにお伺いを立てていたのだけど。

それがあまりにもしつこかったからなのか、『問題はないので、そちらに一任する』などといった返事があった以降、とんと音沙汰がなくて。


それが、面倒くさいことをさりがなく押し付けてくる時の彼の常套手段であるからして。

もう、しょうがないなぁ、なんて思いつつも全てを受け入れちゃうわたしやっぱりいい女ね、だなんてひとりで自画自賛しつつ。

そうであるなら責任もってこちらでどうにかしましょうと、でもけっして一人じゃないからと。

今回誰かを呼び出すことに長けているサマンサに、訓練の時間を借りてお願いしたわけだけど。



どうも、わたし以上に深い仲というか、今は離れ離れになっちゃってる娘ちゃんの面影をサキちゃんに重ねているらしく。

会ってそんなに経っていないはずなのに、大事な子ども扱いしちゃってるというか、トラウマになっているかもしれないその時その瞬間のこと、伺おうとすることすら心配しているように見えて。



確かに、下手に感情が高ぶったり危機を感じたりすると魔力が暴走することのあった彼女のことを考えると、慎重にお伺いを立てるべきなのは確かで。

そのあたり大丈夫かなってサキちゃんに伺うと、彼女はその見た目よろしく花がほころぶように笑ってくれて。



「くすっ。大丈夫ですよ。わたしだって成長してるのです。この世界に来たきっかけ、ですよね。わたしが、キショウくんの内なる人格のひとりとしてお邪魔するようになった時のことですから、よく覚えています」



後々にサキちゃんを含めた他の……キショウくんの内にいる人格みんなに聞いたのだけど。

お互いがお互い、コミュニケーションを取ることができないからこそ、キショウくんの内なる世界に棲まうきっかけ、理由、意味合いの受け取り方が違っていたらしい。


サキちゃんには、テリアと邂逅することによって時の狭間、『異世』に棲まう『クリッター』に喰らわれ、異世界を冒険することとなる記憶がちゃんとあって。

その先の異世界に、キショウくんだけいなかったのもちゃんと覚えていて。

そんなキショウくんのことを思い出したからなのか、まさに召喚、呼ばれるようにして気づけばサキちゃんはキショウくんの内なる世界にいたのだという。


つまるところ、彼女の言うこの世界へやって来たきっかけは。

あくまでも、彼女がここに来たきっかけであって。

そんなこと、とてもじゃないけれど(既に完全に保護者気取りのサマンサが睨みを効かせていたしね)言えないけれど。


わたしが知りたかった、結局のところ創造主さまに忘れられる形となって、ここへ来たキショウくんのきっかけは分からずじまいで。

そこからさらに突っ込んで聞きたかったんだけど。

 



「……うひょおぉっ、やったぜぃ! 出遅れたかと思ったらそこには理想のとうげんきょ、お茶会がぁぁぁっ!」

「ひゃっ」

「あらあら。ルェちゃんってば、いつ見ても元気ねぇ」



まるでそのタイミングをはかったかのように。

やはり、長くは撒けなかった……サマルェが、妹よいったいどうしちまったんだ、いったいいつからそんなになっちゃったのよって勢いで飛び込んでくる。

 


あぁ、そう言えば今更だけど、この世界で初めてサキちゃんが出てきたのって、サマルェのちくってするマジックポーションによるものだったっけ。

サマルェ的に言えば、久方ぶりの自分より年下かもしれない妹キャラが現れちゃったもんだから、一目惚れ的な意味合いでやられてしまったのかもしれない。



「だが妹よ、それはどうしようもないくらいの悪手じゃないかしら」

「……って、ぬわぁぁぁっ!? なんたることっ! どこっ、一体どこ行ったの!? あたしのかわい子ちゃんはわぁぁっ!!」

「いや、その……なんていうか、ごめんなさいぃぃっ」


多分、初めて出会った時と比べても、いろんな世界を経験しておっきくなってるサキちゃんでも、サマルェみたいな娘は、初めての衝撃というか、ここまでキャラの濃いこはいなかっただろうことは間違いなくて。

案の定、びっくりした勢いをもって刹那の瞬間、引っ込んでキショウくんと変わってしまったようで。



その時の、むりくり放り出されたかのごときキショウくんの心情はいかに。


あんまり人様には見せられないカオしてるサマルェを目の当たりにして。

謝りながらも逃げ出していくのを見るにつけ、察してあまりあるものがあったのは確かで……。


SIDEOUT

    


      (第72話につづく)









次回は、3月6日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ