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第70話、お茶会で、いつの間にか逸れていた道から気を取り直して



SIDE:ソトミ



「どもども、お邪魔するわよ~」



この世界でのサキちゃんとの最初の出会い。

そのほとんどがサマルェのせいで(わたしが理由によるものじゃないよね。ないはずだよね)驚かせてしまっていて。

逃げるように引っ込んじゃったから、こうしてまともに会話するのも初めて……じゃなくって、久しぶりで。

驚かせたりびっくりさせたりしないように、猫背でへこへこしつつ穏やかな雰囲気を醸し出してる二人のティータイムに言葉通りお邪魔する。


 


「……あっ、マニィお姉ちゃん? やっぱり。はじめに出てきた時にそうだと思ってたけど」

「ん? マニィ? いえ、彼女は……っ」



わたしは目と目だけでサマンサにいいのよ、勘違いさせておいて、と告げて。

かつての『もう一人の自分』、陰と陽、表裏一体であった魂の片割れにして相棒を意識して、殊更に明るく振舞ってみせる。



「あはっ。あの時はごめんねぇ。うちの妹ちゃんがびっくりさせちゃったよね。久しぶり、サキちゃん」

「いっ、いえ。あの時はわたしも気が動転してて、すみません」


サキちゃんのお姉ちゃんのマブダチだったくらいで、そこまで接点があったわけじゃなかったけど。

彼女はわたしのこと、思い出してくれたらしい。

この世界で最初に会った時のように、びくびくした様子もなく。

故郷で初めて出会った時のように、周りを傷つけないためにと、不必要に警戒して言葉を失っていることもなくて。



「なんだ。ボスもお知り合いだったのねぇ。初めは正直私としてもこんなに上手くいくものかしらって思ってたけど、下地があったってこと」

「ぼす? マニィお姉ちゃんのこと、ですか?」

「ちょっとぉ。サマンサちゃんってばぁ、そんな可愛くない呼び名で呼ぶの、やめてよぅ。ここで一番えらいには事実だけれどっ」

「何だかよく分からないけど、私はありのままの貴女がいいと思うわ」

「……いや。あはは、うん。これはわたしもちょっと違うなぁとは思ってたけどさぁ」



魂の片割れにして相棒である彼女と一緒にいたのも、もううんと前のことだったから。

そもそもが同じようでまったくもって別人(サキちゃんが勘違いするくらいには顔だけはそっくりなんだけど)であるからして、真似ようと思ってもうまくいくはずもなく。


もうダメです、ギブアップですよとばかりに、照れ笑いで降参。

あっさりわたしは素の自分をさらけ出す。



「あはは。えっと、そのごめんなさい。わたしってばサキちゃんがよく知ってるお姉ちゃんじゃなくてね。サキちゃんと、キショウくんの関係に近いって言えば分かりやすいかしら。サキちゃんがよく知る彼女は、わたしの魂の片割れにしてたった一人の相棒なのよ」

「そうなんですか? わたしには全然変わってないように見えますけど……」

「もう、サキちゃんってば。そんな気を使ってお世辞言わなくていいのよ」



常に影に隠れて暗躍し、物事を外っかわから見ていたわたしと。

常に矢面、表舞台に立って、燦然と太陽の花のごとく活躍していた彼女。

今はめでたしめでたしを迎え、本当のたった一人の大切な人をつかまえてしまったからもうここにはいないけれど。

思えばずっと憧れていた彼女と変わらないだなんて嘘でも嬉しいよー、なんて思ってたけど。

 


「……? お世辞? えと、よく分かりませんが……【ガイゼル】のお兄さんはいないんですか?」


どうやらサキちゃんは本気でそう思ってくれているらしい。

わたしとしては、妹で娘のようでもあって、大事な大事な家族でもある彼女を奪っていきやがった輩の名前が出て思わず顔が歪みかけたけれど。

それを誤魔化すように、おほほほとまたしてもちょっとずれた笑みをこぼし(いい加減サマンサが引いてたね)、それに答える。


 

「えっと、うん。属性的にも第一線で活躍する勇者的存在だからね。他の世界を救いに出張中っていうか、今ここにはいないわね」

「あ、そうなんですか……。何だかすみません。さみしいですよね」

「いやいや、ああ。まぁ、そっかな」


さみしいどころかにくらしくて、もしこの世界に顔を出すことなんてあったら(彼女同伴ならまだともかく)わたしどうなっちゃうかわかんないよ、何てことは言えるはずもなく。


今更勘違いを撤回できそうもなくて、わたしは白々しくも誤魔化しつつ。

話を戻すというかそもそもの本題へとさり気なさを装って入ることにして。



「それでね、わたしの方はこの悪【役】更生世界を一応管轄してるボスってわけなの。今回、サキちゃんたちの主人格でもあるキショウくんが、予定にない状況でここに落っこちてきたから、そのきっかけ、理由を彼だけじゃなくサキちゃんにも伺おうって思って」

「あ、そうなんですか。ええと、わたしにわかることがあれば……」



キショウくんは、よく分かっていないみたいだし。

サキちゃん以外の子たちはわたしがよく知らないというか、直接会って話したわけじゃないけど、それぞれがこうやって素直にお話してくれる感じじゃなさそうだったから。


すっかり子供らのお話を聞くお母さんモードになっちゃってるサマンサに見守られながら。

ようやっと本題へと入ることにして……。



       (第71話につづく)









次回は、3月2日更新予定です。

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