表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/86

第69話、すぐに思い出せなかったのは、お互いがもう一つの人格だったから



SIDE:ソトミ


 


はてさて、本日はわれらが聖母、サマンサ・アーヴァインがキショウくんの訓練を担当する日です。

サマンサには、お得意の召喚魔法をどうにかこうにか駆使してもらって、キショウくんが内に秘めし他の子との意思疎通、あるいはキショウくんの意思で『変わる』人物を選択できるようになればいいかなぁ、なんて思っていた。

 

それがうまくいくかどうかは、サマンサ母ちゃんの裁量次第で、お任せしたいところなんだけど。

不意に思い出したのは、サマンサとキショウくんの内に棲まう人物の一人である『サキ』ちゃんについての関係性というか、わたしだってよくよく知ってるじゃないの、ってことだった。

 


だって彼女は、地の文……じゃなかった、名前だけなら結構よく出てくる我が親友、【ウルガヴ】のお姫様の妹ちゃんなんだもの。

当然会ってお話する機会もあったわけだからお互いがお互い気づいても良さそうだったのに、わたし自身が今まで失念しちゃっていたのは。


妖精さんのようにちっちゃい子だと思っていたのが、【ピアドリーム】の女神さまのごとき美少女に成長してたというのもあるけれど。

サマルェがそんな彼女にたいそう興奮しちゃって怖がらせちゃって、ちゃんと話す前に彼女が引っ込んじゃったせいもあるんでしょう。


 

そんなわけでわたしは、またしても人の訓練をデバガメ……今回ばかりはサキちゃんの怖がらせないようにサマルェに気づかれないようにと。

ひとりでこっそり今まさにサマンサがキショウくんに指導しているであろう場所へと飛んでいく。



向かうのは、フォルトナの配下というかフォルトナ姉さんを慕って集まってきた獣型の魔物、魔精霊とともにサマンサが契約した子たちのいる、通称『グラウンド』などと呼ばれるサファリっぽいフィールドと見せかけて、僭越ながら我らがお城という名の、数多な世界を救うための英雄、勇者たちを斡旋する場所、そのてっぺん。

『リヴァイ・ヴァース』の、中々に広い敷地を一望できる、バルコニー。

 


そこには、必要かどうかもわからない攻城戦のできるしかけがあるとともに、魔法を扱い安くなる仕掛けがある。

この場所のモデルとなった『スクール』と呼ばれる場所にもそれはあって。

魔法の陣が敷かれていることもあり、サマンサの得意な召喚の魔法も使いやすいはずで。

ひいてはお願いしていた、キショウくんの中にいる『もう一人の自分』たちとの交流もしやすいだろうと。

そう思っての場所指定、だったんだけど。

 

 


「……あ、ちょっとのんびりしすぎたかしら。もう何やら始まってそうね」


それでお姉ちゃんたちとちっちゃい娘が大好きなサマルェを蒔けるとは思ってなかったわけだけど。

せめてもの時間稼ぎにと、先に『グラウンド』へ寄ってやせいの魔物、魔精霊たちと戯れていたらちょっと遅れてしまったみたいで。

わたしにも分かる、サマンサがもう既に神型クラスの魔精霊を呼び出したらしい魔力の動き。

(ちなみに、魔精霊は獣型から始まって、人型、神型、と強さ、格が上がっていく仕組みになっている。

神型の上に、根源などと呼ばれる型もあるのだけど、それは世界に12柱しかいないため召喚に応じてくれることは基本的にないので割愛します)



たぶん、この感じは【リヴァ】属性の鏡の中に棲まう魔精霊じゃないかしら。

虹泉トラベルゲート】に居る、その名を呼んではならない存在と同種のもので、過去や未来に限らず見たい記憶を映し出してくれるらしい。


恐らくサマンサは、その子にお願いしてキショウくんの中に複数の人格が居座ることとなったその原因を探るつもりなんだろう。

それは、もしかしなくともキショウくんがここへやってくるきっかけとなった、トラウマを刺激するんじゃないかしらと愚考しつつ。

足早に(と言うか得意の【ヴァーレスト】の魔法で飛んでるけど)お城のてっぺんへと向かっていく。


 


(……あ、サキちゃんいたっ。でもよかったぁ。いわゆる悪『役』とその被害者の関係だったはずだけど、大分和やかムードね)


ひとたび依頼を受ければ大抵のことはこなす、惚れ惚れするほどの悪『役』だったサマンサと。

紡ぎ出す言葉が歌が力となって周りに多大な影響を及ぼす、まるで創造主さまの御力を彷彿とさせるものをその身に秘めたサキちゃん。


ヘタを打てば一触即発険悪ムードになってもおかしくなかったけど、そこはさすがサマンサ母ちゃん、うまいことやったらしい。

そこにはなかったはずのお洒落な椅子とテーブル、更にサマンサのお手製だろうお茶とお菓子があって。

傍目から見る限りでは、お母さんと娘が仲良く三時のティータイムを迎えているの図。

 


これはこれはちょうどいいと。

それでも驚かせないように、偶然だねぇなんて装いつつ。


わたしは、そんなお茶会へとお邪魔することにして……。



    (第70話につづく)









次回は、2月27日更新予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ