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第64話、中々逢えなかったかつての自分を重ねて




SIDE:ソトミ




それから、女子二人でダンジョンめいた大迷路つきの遊園地を楽しんだかどうかはともかくとして。

わたしたちは、ちょうど今来たばかりだったのよ、偶然ねーなんてのたまってカイとキショウくんの二人と合流したんだけど。



「……うわぁっ、にげっ。にげないとっ」


わたしたちの顔を見た途端、と言うかわたしじゃないよね?

ちっちゃい女の子が大好きなサマルェちゃんに身の危険を感じているだけだよね?

こんな人の訓練に対していちいち心配になって、デバガメしてたのとかバレちゃって引かれてるわけじゃないよね?


何て思う間にも、フォルトナに鍛えられたおかげでもあるのか、惚れ惚れするほどの逃げ足でやっと出られたはずの遊園地へと舞い戻ろうとするも、それを読んでいたかのようにサマルェ……ではなく、カイが首根っこを引っつかむようにして押しとどめる。



「まぁまぁ、勝手にひとの訓練覗き見するようなヘンタイには近づかせないからボクがいるところではネ」

「あぁん? みのたろうなんかに誰も見たかねぇんだよ! いいからさっさとおねえちゃんせんせーに変われってのボケぇ!」

「やっぱりアレはキミか。ってかそんな言い方で言う事聞かせようったってそうはいかないんだヨ!」



仲がいいのか悪いのか。

いや、そのまま押し合いへし合いじゃれあい魔法決闘を始めてしまう勢いでけんかを始めてしまうところを見るに、なんだかんだいって二人は仲良しなんだろう。


男嫌いを地で行くサマルェだけれど、ほとんど同期で役を抜け出し切磋琢磨してきたからカイは別格であるのは事実で。

カイ自身そのたんびに突っかかってくるサマルェをなんだかんだ言って邪険にすることはないし。

カイは絶対会わせないからネ、なんて言ってるけど、ユミ自身は見た目妹キャラでとにかく可愛いサマルェのことを嫌いじゃないみたいだからね。



そんな中、訓練覗き見うんぬんに地味にダメージを受けつつも。

師匠一同でハラハラドキドキしつつちゃっかり拝見してましただなんて気配を微塵も見せずに、ごくろうさまとばかりにキショウくんの元へ向かう。



「どうだった? カイの訓練……カイの故郷は」

「あ、ええと。ほとんどこのダンジョンの中にいたからカイ師匠のふるさとに来たって感じはあまりしませんでしたけど……この世にはこんなにも楽しいダンジョンもあるんですね。カイ師匠がよければまた来たいって思うくらいには」

「ほほぉ。この広大で謎とトラップ満載、理不尽な格上が跋扈する世界を体験して楽しいとな? キショウくんもなかなかねぇ」

「あっ、そうでした。その辺りはおれのうちにいるひとがやってくれてたんです。カイ師匠に聞いてはいましたけど、本当におれの中に『もうひとりの自分』がいたんですね。今回初めてそれがわかりました。ただ見ているだけで、何も出来ないでいたのにはもどかしいものがありましたけど」



しかしそれはそれで新鮮で『楽しかった』し、もっと楽しかったのはダンジョンを脱出するために乗らなくてはいけないアトラクションのことらしい。

今の今までは別人格、内なる世界に棲まう魂たちに身体を預け変わっていたことにも気づいていなかったようだけど。

何故だか今回は、結構長い間変わっていたこともあったからなのか、内なる世界から『もうひとりの自分』の行動を垣間見ることができたみたいで。



ついさっきまでキショウくんの代わりに表に出ていた【ウルガヴ】に愛されし少女(ウルハと言う名前を知ることとなるのは随分後だったりする)の方は。

内なる世界に棲まう魂たちについて出来うる限り隠したそうにしていたけど。


キショウくんにそんな感覚が微塵もなさそうなのは。

気にしていないって言うよりも、案の定ひとつの身体を共有する人格同士でのコミュニケーションができていないといった証左でもあって。


かくいうわたしも、かつての主人格である主さまと心が通じ合えるようになるまで随分とかかったというか、今現在こうして完全に分離わかれてからだったから仕方ないといえば仕方ないのだけど。


キショウくんの話しっぷりを鑑みるに、それすなわち内なる世界に存在していて身体を共有していることは理解できていても。

キショウくん自身は、その内なる世界に在る魂……その人となりどころか顔ですら知らないんだろうって気がしていて。



「ただ見ているだけ、ね。ひとの入れるロボット……じゃなかった。ゴーレムの中にいるような感覚かしら。その調子だと、表に出ていた娘の顔とかもわからないんじゃない?」

「え? 女の子だったんですか? というか、ソトミさん知ってるんですか?」

「あ、はは。まぁね。キショウくんの中に複数の人格があるってこと、実は会ってすぐに気づいてたから」


ちょっと苦しい、今更デバガメしてましたなんて言えないからこそのいいわけ。

それすらにすごい、なんて感心してくれちゃってるキショウくんにいたたまれない思いをしつつも。


その顔すら知ることができないんじゃぁ、元中の人のひとりとしては切ないからって。

話題を逸らすようにして結局逸れてはいない。

水も滴る彼女の活躍っぷりを語るわたしが、そこにいて……。


SIDEOUT



   (第65話につづく)








次回は、2月6日更新予定です。

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