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第62話、ダンジョン攻略は、ホームに帰るまでが本当の醍醐味で



SIDE:キショウ



思えば、『リヴァイ・ヴァース』へと何も分からないままにやってきて初めてカイと相対した時から。

師匠と呼び敬い学ぶに値する、キショウの目指す存在のひとりであることはよく分かっていたつもりだったが。

あくまでつもりで、カイはまだまだ底を見せてはいなかったらしい。



どこからともなく生み出し創り出した斧に相応しき牛頭の怪物……タウロスなどと呼ばれるであろう存在に変身し戦う。

目前にて胴を割られその戦斧ごと手を切られ倒れ伏し、そう言う仕様であるのか今にも儚く消えゆかんとしている存在こそがまさにそれで。

仮にキショウが正面切って戦っていたのならば一合と持たずやられていたであろうその存在を。

同じように変身することもなく、キショウとさほど変わらないであろう身の丈にあった手斧のひとつであっさりと葬ってみせたカイ。


変わらないように見えるからこそ、キショウの目標として、目指すものとして最も相応しいんじゃないかと。

瞳輝かせてキショウが駆け寄っていくと、すぐにそれに気づいたカイが、どことなく得意げな様子で振り返って。



「ふっ。ただ見守るってのも楽じゃないね。訓練らしくギリギリのトコを狙ってみたけど、ここぞのタイミングで助け……ってぇ!? なんだよ、もう! ショウくんってばいつの間に戻っちゃってんのさぁ!」

「あ、えと。ごめん、なさい?」



それはお互い様というか、ユミの姿が見えないことを鑑みるにそれがこっちの台詞ですよ師匠と言いたいところだったが。

何だかひどく残念そうというか、肩透かしを食らっている感じがいたたまれなくて反射的に頭を下げてしまうキショウ。



「あーもう。まっすぐな素直さんめっ。……まぁお互いサマって言えばお互いサマかぁ。覗き見デバガメさんたちもいることだし、お互いのプライベートなことはまたの機会だネ。とりあえず、さくっと帰るヨ。一泊ぶん時間もらってるとはいえ、そんなに時間余裕あるわけでもないし」



それに対し、頭をがりがりかいて苦笑しているカイは。

何やらひとりで解決してしまったらしく。

何もないようにも見える……いつの間にやらすっかり陽も上がり始めた中空を睨めつけつつそう言ってキショウを促そうとする。



「うーん。もう終わり、かぁ。実はほとんど意識がなくてあまり訓練したなぁって感じでもないんですけど」

「なぁにを言ってるのサ。お家に帰るまでが遠足ならぬ一泊二日の訓練ってね。むしろこれからが本番だよ。ここから脱出するためには、ジェットコースターとかゴーカートとか観覧車とか、数多くのアトラクションに挑戦しなくちゃいけないんだから」



カイがそう言って指さしたその先のひとつには、キショウも朧げながらもずっと気になっていた、白い壁の上を縦横無尽に走る線路のようなものもあって。

まだ自分にも出番というか、実に楽しそうな(実際カイは何だかとっても楽しげで)訓練のひと時があるのだと思うとわくわくしてきていたが。



「それにね、あのダンジョンボス……ボクがあっさりのしちゃったからショウくんも不完全燃焼じゃん? ところがどっこい、あれはあれでしつこくてねぇ。ボクらがここを脱出するその直前まで、そのたんび復活してきて、どこまでも追いかけてくるのダヨ」



だから、もう終わりなのかと残念がる必要はない。

まだまだ、ヒリヒリワクテカするお楽しみはむしろこれからなのだと。

やっぱりどこか得意げに、そんな事を言うカイ。



「うわぁ、あれが追っかけてくるのかぁ。勝てる気はまったくしないけど、逃げるだけならなんとかなる、かなぁ?」

「ま、いざとなったらさっきみたいにボクがばっちりフォローするからさ。できる限り気張ってこうぜぃ」


やけにあっさりと、しかも訓練であるはずなのに師匠であるカイが手を下したのには、そんな裏があったらしい。

ここに来るまでほぼほぼ内なるもうひとりの自分に任せっきりだったこともあって、今度はおれの番だろうと。


ここまでのもうひとりの自分がそうであったように。

できる限り一緒に見て体験し、身として糧にしてもらって。

何だかんだキショウ自身と同じように楽しんでもらえれば、なんて思いつつ。



これからを暗示するかのような獣の如き咆哮をBGMにして。


まずは手始めに、とばかりに。

カイの言うところの『ジェットコースター』なるアトラクション目がけ、駆け出していくのであった……。


SIDEOUT



     (第63話につづく)









次回は、1月29日更新予定です。

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