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第61話、きっとここぞのタイミングて颯爽と登場すれば世界も変わるって



SIDE:キショウ




『遊園地』……『スリーサーキュレイト』などと呼ばれる、カイの故郷にあるダンジョン。

その入口に立っていざ攻略開始。

正直なところキショウは、ワクワクしていたのは確かであった。



ソトミに連れられて向かった一度目は、真っ白で何もない世界で。

何だか楽しい感じだったのは、それを見ていたらしいお師匠さんたちばかりで。


二度目に同じくソトミからの師事、訓練回として向かったダンジョンは、基本に忠実でいかにもなダンジョンでそれはそれで楽しい……いい経験にはなったのだけど。

出現するモンスターや立ちはだかるトラップが、少しばかりレベルの高いものだったこともあって成す術なくやられてばかりで。

加えて、攻略失敗したタイミングでソトミに背負って帰るだなんて、申し訳なくていたたまれない面倒をかけてしまっていて。



今度こそは、ダンジョンを思う存分楽しむ……身とし糧として自らの力で攻略しようと思っていたのに。


ハッとなって気づいた時には、ダンジョン攻略もクライマックス。

何とはなしにここに来るまでの手に汗握る冒険を、大きな大きな舞台を望むがごとく傍観していたのは覚えていたのだが。

結局見ているだけで手も足も出なくて。



初めは、目前いっぱいに広がる程の大きさの深紅に染まるミノタウロス系のモンスターに対して、それでも有利に戦いを繰り広げていたから。

身体はまったくもって言う事はきかないけれど、おれって結構やるじゃん、なんて思っていたが。


対するモンスターは、どうやらひとりで対峙し続けられるレベルではなかったようで。

頑張って、だいぶ堪えていた方だとは思ったが。

キショウ自身が見ることもできない、今のキショウの視点となっている人物……どこかで見たことのある気がする【ウルガヴ】の魔法の使い手も、感心感嘆するくらいに学び参考になりそうな戦いをいつまでも続けることはできなかったらしい。

いよいよもってその刃の部分だけでもキショウの身体くらいありそうな大仰に過ぎる斧が迫ってきて。



避けてかわして逃げなくてはと。

力を入れて踏ん張ったら、ようやっとそのタイミングで身体の自由が利くようになって、意識が浮上して表に出ていく感覚を覚えたけれど。



少しばかり遅すぎたらしい。


あ、これは間に合わないな。

なんて思いつつも、キショウがそれほど危機感を持ってはいなかったのは。


これは訓練であるからして、本当にのっぴきらない状況に陥ったら、少しばかり過保護な気がしなくもない師匠のみなさんが助けてくれると。

揺るぎない信頼があったからなのだろう。




事実、牛頭の怪物の渾身であっただろう一撃は、その熱量……沸き立つ魔力を感じられるほどの近いところでぴたりと止まっていた。

受ければ大地が割れるであろう力は一体どこへ消えてしまったのかと疑問に思ってしまうくらいに。

ほとんど微動だにすることなく、その大仰な戦斧を、片手のひらで担ぐみたいに受け止めているカイによって。



瞳の奥から見ているだけだった時に、目前のすぐ近くにいて甲斐甲斐しく色々なことを教えてくれた、キショウからしてみればカイになんとなく似ているような気もする、ユミと名乗っていた少女の出番は終わったらしい。


全然そんな事知らなかったが、どうやらカイはキショウやソトミと同じようにひとつの身体に複数の魂、人格を持っていたということなのだろう。


当然、変わってしまったからにはもうそこにユミの姿はなく。

今までキショウを動かしていた、普段はキショウの内にいるであろう人物とともに。

会ってお話をできればいいのになぁ、なんて。

しみじみキショウが、もうすっかり元の姿に戻ってしまっているキショウがそんな事を考えているだなんて知る由もなく。


カイは、弟子を守り育てるのは矜持だ、とでも言わんばかりに。

尊大に、少し怒った様子で牛頭の怪物に対して挑発にかかっていて。




「ふん。ボクの偽物にも値しないまがい物が吠える吠える。斧の使い方がなってないんだ、ヨッ!」

「フゴオゥッ!?」


まるでその重さを感じてなどいないかのように。

刃先を支え掴んでいた手をかカイが振り上げると。

それまで溜まりに溜まっていたのかもしれない力をそのまま弾き返すみたいに弧を描いて逆側へ弾き飛ばされていく戦斧。


それが、ドゴォン! とけたたましい音を立てて白い……ダンジョンにありがちな不壊であろうはずの地面に埋もれたのならば。

当然それを持っていた牛頭の怪物の筋骨隆々な腕は曲がってはいけない方へと曲がっていて。


その痛みに牛頭の怪物が声を上げるよりも早く。

カイの細腕には……その腕にふさわしい大きさの、『虹泉』を護るために創り出した結界の柱変わりにもしていた手斧が携えられていて。



(あっ、違う。あれ、直接繋がってる……?)


一体どこから呼び出し創り出したのかと思ったら。

それは間違いなく、カイの掌から生えてきたかのように出現していて。



それが、カイの一部……あるいは魔力かそれに類するものから生み出されているのだろうと気づいた時には。


牛頭の怪物の赤黒い胴体ごと、戦斧とそれにふさわしい手が切り離され分け隔てられていて……。



      (第62話につづく)









次回は、1月24日更新予定です。

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