表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/86

第55話、お節介な師匠たちの、膝突き合わせた出歯亀鑑賞



SIDE:ソトミ



ダンジョンに足を踏み入れ……なんていいつつも、これから行うのは雁首揃えたデバガメである。

しかも、一度目と比べて人数が増えちゃってるから、どこに座るか位置取りが重要になってくるわけだけど。

ポジショニング決めの争いが起こるかも、なんて思ってたのはわたしだけだったらしい。



一番テレビ画面が見やすい正面……大きなソファの真ん中に、当然のように座らされるわたし。

その左隣に、ぴんと背を伸ばしてちょこんと座るのはテリア。

右腕をとってかき抱く勢いでごく近くに座るはサマルェ。

ひとつしかない小さめのソファにはちゃっかりサマンサが陣取って。

前回で懲りたのか、クルベは初めからソファの後ろの壁によるかかるように。

小さな猫耳少女と化して(そう言ったらやっぱり怒られる)しまったフォルトナは、らしく空いたスペース……カーペットの上に直座りることで準備万端。



わたしは、そんな一同を見渡したあと。

どうみてもテレビのリモコンにしか見えないそれのスイッチを入れる。


一度目は、すぐに真っ白けな世界が映し出されたかと思いきや、そこにぽつねんとキショウくんがいてしばらく何も起こらなかったわけだけど。

知らぬうちにアイテムマスターなサマルェの手によって大改造されたらしい、テレビ画面にしか見えないものには、またしても真っ白な世界が映し出されて。




「あれ? よくある召喚前の神様世界的な? 二人ってカイの故郷へ向かったんじゃあ」

「いえ、たぶんたまたま同じような場所があったっていうか、撮されてるだけですね。ちょっとまってくださいな」


元々あった『役想回起』が発動する前のごとき情景に首をかしげていると。

焦りは禁物ですよ、とばかりにサマルェがわたしの腕から離れて。

何故か胸元から(アイテムボックスをそこにしまう人、多いみたいね)、テレビのリモコンじゃない正真正銘ラジコンとかに使いそうなごてごてしたリモコンを取り出す。



「あら、偵察監視型の使い魔か何か? 鳥……あるいは虫かしら」

「ご名答です、サマ姉。実にテンプレートなてんとう虫の偵察ロボットです。みのたろうに気取られないように小さめですがね。あ、少しばかり上昇しますよ」


召喚獣、式神、使い魔に始まってあらゆる存在を使役し呼び出し従わせる事に長けているサマンサは、

すぐさま目の前の真っ白な景色を撮っているものに気づいたらしい。

そんな彼女に対しサマルェは、男性陣を相手取る時とは大違いな態度で、ご機嫌なままリモコンを操作する。


すると、サマルェの操作にわずかのタイムラグもなく従ったそれは、僅かに視界をブレさせつつも上昇していくのが分かって。

その白いものがのっぺりと立つ壁のようなものであることが分かってきた頃には、その白い壁を含めた全容が見えてくる。



「ふむ。カイらしいといえばそれまでなんだろうが、随分とあれだな。修行を行うような場所には見えんが」

「遊園地……いや、大迷路か。懐かしい。カイの故郷では未だ現役ということか」


フォルトナは言葉を濁し、クルベはなんだかひどく懐かしそうに。

七色どころか十二色はあるだろう、煌びやかな建物を目の当たりにし各々感想を吐き出す。


カイは確かに、一泊二日で故郷に帰るって言ってたんだけど、そこはどう見ても天井なしの迷宮型ダンジョンに見えた。

しかも、ポイントポイントに白い壁で挟まれた道を塞ぐようにして、そのキラキラ光る……実に楽しげな、いろんなバリエーションのある建物が立っていた。

カイの故郷って、こんな冒険しがいのある場所、だったのかな。


いや、そんなわけないか。

……あ、そうだ。思い出した。

カイが、『お姉さん』とともに悪『役』を背負うきっかけとなった場所だ。

創造神さまからの手紙、通称『デューティ・メモリアル』にも書かれていたからね、ちゃんと覚えてる。


このダンジョン、白い壁は実は生きていて、訪れたものを囚え喰らい取り込もうとするらしい。

彼らはその罠にはまり、新たな探索者を引き込むための存在となってしまったのだ。

勇者、英雄と言ってもいい、この世界の主人公を裏切る形で、立ちはだかる敵、ダンジョンボスとして。


そんな彼らが『役』を全うして今があるわけだから、いわばここはもうめでたしめでたしで終わった世界であって。

フォルトナが言うように、修行するというよりも、楽しんで思い出を作るような場所であるのは確かなのだろう。


今頃きっと二人はかつての思い出の場所で昔を懐かしみながらよろしくやっているに違いない。

女の子大好きで、表面上顔を合わせるたびにいがみ合っているサマルェがあれだけの反応を見せたのだから、きっと今頃、カイの『お姉さん』が表に出てきているはずで。

そんな事を考えていると、なんだか無性にむかむかしてしまってる自分がそこにいて。



こうなったら直接乗り込んでやろうかしら、なんて考えに至った時だった。

それまで可愛らしくもお行儀よく座って、じぃと映像に見入っていたテリアが。

はっとなって声を上げたのは……。



     (第56話につづく)









次回は、12月30日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ