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第54話、多分きっと、皆が音に聞く悪役だったなんて想像できないから



SIDE:ソトミ



何だかんだでそれぞれが弟子となったキショウくんのことが気になっていたからなのか。

キショウくんの内に女の子の気配をその性分から感じ取ったサマルェや、みんなで一緒に行く流れになって、律儀に付き合ってくれているテリアと。

結局サマンサに声をかけられやってきたクルベだけでなく。

ダンジョン『No.000』の『役想回起』に初めてキショウくんが訪れた時には、

そのサイズ感もあって遠慮していなかったフォルトナの姿もあった。




「まさかフォル姉まで来てくれるとは。あいつに見込みがあるみたいでなんだか複雑だけど」

「……おい。そんな事言いながら必要以上にひっつくんじゃない」

「だって。せっかくフォル姉がもふかわの猫耳スタイルになってくれたんだもん、こう言う時に堪能しないと損でしょう」

「だから、この姿になるのは嫌だったんだが……」



見ているこっちが羨ましくなるくらいの美少女と美女のスキンシップ。

そう、まさか付いてきてくれるとは思ってなかったフォルトナは、神に反するがごとき百獣の超生命体な猛々しい姿から、そのボリュームのありすぎる針金のごとき体毛がごっそりなくなってしまっていて。


女の子大好きなサマルェでなくとも、もふふさの耳や尻尾を標準装備したあざと可愛いフォルトナの姿は師匠メンバーからも好評で。

わたしとしても本来の姿は色々動きにくくて生きにくいだろうから、猫耳スタイルのままでいればいいのにって言った事もあったんだけど。

本人にそう言うと本気でヘコむから現在は禁句になっていたりする。



そんなフォルトナは、本来の姿の面影が僅かに残る褐色の肌に皺を寄せ嫌そうな顔をしているものの。

我が物顔の傍若無人に抱きついてくっついて離れようとしないサマルェを、しかし決して邪険にすることはなかった。

百獣の魔獣王のごときであるのは、本来の姿とその実力だけで。



実はこの悪役転生世界『リヴァイ・ヴァース』にまで彼女を慕ってついてきてしまっている、フォルトナ本人は下僕やら配下だって言っているけど、実質彼女のファン的存在の魔物や魔精霊が多くいたりして。

本当ならそんな彼らの中から弟子をとっても良かったのに、フォルトナ本人が遠慮したりしもべなみなさんが遠慮したりしなかったりで。


結局キショウくんが初めての弟子であることに変わりはないから、ツンデレなサマルェじゃなくともそんな彼の動向は気になるのだろう。



そしてそれはどうやら、わたしだけでなく他のみんなも同じようで。

同郷、同世代に悪『役』を負っていたサマンサとクルベ……特にクルベは、こうやって改めて見渡してみても紅一点ならぬ緑一点な状況に引け目を感じているらしく。


あんまり態度には表さないけれどいつもわたしたちからは一歩引いていたのに、こうして前回のように付き合ってくれているのは、それでも何だかんだで結構仲のおよろしいサマンサからの誘いだからというだけでなく。

クルベはクルベなりにこの数日の間にキショウくんの中にある何かを感じ取り興味があったからこそ、なのだろう。




「……サマルェさん、ここへ来る前何かを感じ取っていたようだったけど。始まりのダンジョンで何か分かるのかしら」

「あ、そう言えばテリアも『役想回起』でキショウくんのこと見守るの初めてだったわね。このダンジョン自体、サマルェにほとんど丸投げにしちゃっててわたしも細かいところまでは知らないんだけど、フォルトナと同じようにカイがサマルェ好みの女の子に『変わった』時に分かるように、発信機的なやつくっつけてたみたいなのよね。もちろん、本人の許可は取らずに。んで、その映像が『役想回起』のテレビ……モニターで見られるようにサマルェったら改造しちゃったみたいなの」

「成る程。流石と言えばいいのかしら、ね」



改造と聞いてテリアは、彼女にしては珍しい渋面を浮かべつつ納得した様子を見せる。

マジックポーションに限らず、あらゆるマジックアイテム、魔導機械の扱いに長けたサマルェならでは、だろう。


当のテリアもある意味でサマルェからしてみればその範疇に入っているようで。

改造という名の過剰に過ぎるスキンシップをしてくるから、抱きつかれぶら下がられているフォルトナを見て明日は我が身、だなんて思っているのかもしれない。



でも、それでも。

そんなテリアでさえ今回のある意味デバガメ的行動に付き合ってくれているのは。

心情的にキショウくんとあまり接触したくない部分もあれど、興味があるからこそ、なのだろう。



そんな感じで師匠6人わいわいやりつつ。

未だかつて弟子を取ったことのなかった最強世代の元悪『役』、現英雄たちが揃いも揃っていることに戦々恐々な、ギャラリーのざわめきを脇目に。


わたしたちは、ほとんど普通の一軒家にも等しい、始まりのダンジョンへと足を踏み入れるのだった……。



      (第55話につづく)









次回は、12月26日更新予定です。

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