表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/86

第48話、遊園地の中にあるもうひとつのダンジョンへ、いざ



SIDE:キショウ?



「このダンジョン自体に特に期限があるわけじゃないのだけど、カイに与えられている修行の時間は一泊ほどなんでしょう? 体感で三日から四日くらいかしらね。ゆっくりしすぎて呼び出しがかかっちゃってもいただけないから、しっかり予定を立てないと」

「……ええと、もうすぐ暗くなっちゃうし、まずは本日の寝床を探すんですよね」

「期限内に脱出できる算段があるのなら、こまめに休憩を取るのは大事よね。その辺りはどうなの?」

「ダンジョンの入口にあった看板、その言葉から判断するに、ダンジョン攻略には三つのアイテム……かどうかはまだわかりませんが、必要なものがあるんですよね? そうなってくると、このダンジョンは随分と広大なようですし、地図のようなものがあれば助かるんですけど……」

「いい着眼点ね。このダンジョンには確かに地図があるわ。そのほとんどは宝箱に隠されているから、まずは宝箱を見つけましょうか」



『オブシディアン・ウォーカー』を倒した事で得た『園内通貨』で、一日分の食料(透明な包装に包まれたパンで、そのままにしておけば数日は十分にもつらしい)を購入した後。

見回して見た通り空が開かれているからして、急な天候の変化……しかもこのダンジョンは雨がよく降るらしい……がある事もあって、まずは宝箱も配置されているという屋根のあるところを目指しましょう、という事になって。



連れ立って向かったのは、いわゆるダンジョンの中にあるダンジョン……『ハコモノ』というらしい建物であった。

何でもこのダンジョンの守り神が棲まい、時に訪れる探索者を実にダンジョンらしく歓迎してくれるらしい。


ユミの言葉通り、いつの間にやら結構な時間が経っていたのか、陽が暮れ始めるとともに遠くの空から分厚く黒い雲が迫ってきているのが分かって。

とにもかくにもそのダンジョン内ダンジョンへとお邪魔することにして。




「『雨の守り神の館』ですか。あの、もしかしなくても入口に立っている? のが守り神さんなんですか?」

「ええ、そうよ。この遊園地『スリー・サーキュレイト』に一体しかいないかもしれないマスコット、『オブシディ』ちゃんよ。黒曜石から生まれた精霊的存在で、このダンジョンのモンスター……キャストを創り出し生み出し、時に恵みの雨を降らすこともあるわ」

「成る程。お話を聞く限りでは、このダンジョンを攻略するのには彼、彼女? の存在が必要不可欠という事ですか。雨自体も攻略に関わってきそうです……うん。それはそれで好都合、かな」


嬉々とした、守り神に対してのユミの解説そっちのけでダンジョン攻略に必要なことに気づいてしまったようで。

入口の看板……その暗号めいた言葉を見るやいなやその解読諸々をすべてカイに投げ出そうとしていたキショウは最早そこにはいなかった。


その点だけ見れば明らかに違うのだが。

ユミ自身もある意味で同じ穴の狢であったから。

とりあえずは今そんな些細なことは置いておいて、と言わんばかりに。

実に興味深そうに漆黒にしとど濡れているようにも見える黒もじゃな『オブシディ』ちゃんを観察している様を見守っていたわけだが。



「これは案山子、つくりものの人形みたいですね。地図とともに本物を探し出す必要もありそうですけど……このダンジョン内ダンジョン? のどこかにいたりしないんですかね。っていうか、そもそもこのダンジョンはどういったものなんです?」


それは、このダンジョンのどこかにいる本物を見出すための行動だったらしい。

しっかりその特徴を捉え覚えたのか、すぐさま今度は目前に在る『雨の守り神の館』へと興味が移っていく。


そんな、好奇心旺盛な所はキショウらしさがあったりしたが。

教えたりお話したりするのが何よりも好きなユミとしては、『彼女』が変わらず教えがいのある人物であることに間違いはなくて。

それを聞いちゃいます? 早速解説しましょう、とばかりに、やっぱり喜々として口を開く。



「このダンジョン内ダンジョン、いかにも『オブシディ』ちゃんが日々暮らしている感じではあるのだけど、ここで遭う事はまず無いと言ってもいいわね。ここは簡単に説明するのならば、『お化け屋敷』とダンジョンを素早く攻略するのを競う場の融合、といったところかしら。またしても入口でパーティが分断されるのだけど、その道中脅かし……襲いかかってくるモンスター立ちを撃退しつつゴールを目指すの。先にゴールすることができれば何かご褒美、良い事があるかもしれないわね?」



そのご褒美はゴールしてからのお楽しみ、とのことらしい。

ダンジョン攻略のための更にヒントでももらえるのだろうか。


『お化け屋敷』という単語自体聞きなれないもので。

そもそもがこの『遊園地』なるダンジョンを攻略するためにここに入ることが必要なのかと言われれば首を傾げざるを得なかったが。


改めてよくよく辺りを見回してみると、『雨の守り神の館』の入口を中心に進行を阻むかのようにもはやお馴染みの白壁は広がっていて。

『雨の守り神の館』を通らなければその壁の向こうに行けないことに気付かされて。



「えと、それじゃあ入りましょうか」

「そうね。運の要素もあるけれど、どちらが先にゴールへ辿り着けるか、楽しみねぇ」



だけどそんな空気の読めない内心なんぞまったくもって口にすることはなく。


やっぱりいつだって楽しげなユミとともに。

そのいくつも名前のあるダンジョン内ダンジョンへと向かうのであった……。



     (第49話につづく)









次回は、12月1日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ