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第41話、影響力ばつぐんの男子の居ぬ間に姦しい歓談を





SIDE:キショウ



その、実際に生きていてもおかしくなさそうな大地の動きに。

一体何が起こったんだと、キショウが狼狽えていると。

さらに追い打ちをかけるようにして、地鳴りの音が激しくなっていって。

文字通り足元から、赤と白が混ざり合ったかのような。

例えて言うならば血肉めいたそれが、キショウを飲み込もうと迫ってくるのが分かって。




「……わわっ」

「おっと。逃げちゃダメだよ。このダンジョンの肝、恒例のダンジョン改変タイムなんだから。よく見て、今いるスタート地点は四方八方囲まれちゃってるどん詰まりでしょ。このウェーブに乗ってかないとまず移動ができないんだヨ」

「は、はいぃっ」



素早い身のこなしで動かないでいたカイもろとも飛び上がって回避しようとしてくるキショウを。

ああ、結局細かく口出しちゃってるなぁ、なんて苦笑しつつカイは引き止める。


謎解きに関しては秒で投げ出す潔さが目立ったが。

やっぱり頭の回転、特に好きなこと、冒険についてのお約束に対しては理解が早かったようで。


正しくも教えを乞う生徒のような、小気味よい返事が返ってきたかと思うと。

無意識なのか狙ってなのか、せめてカイと離れぬように、ひっしとしがみついてくるのが分かって。




(……くっ。ちょっとばかし『姉さん』たちの気持ちがわかっちゃうのが嫌になるヨ、ほんとにもうっ!)


だが、それでも看板に共に触れたことで、グループ……仲間パーティであるとこの生けるダンジョンに認識されてしまったからこそ、二人がこのダンジョン改変による移動方法により弾かれ離れ離れになってしまうのは。

最早仕様と言ってもいいくらいで。



(はてさて、まずはどんな面白いリアクション……じゃなかった、どんな行動に出るのカナ、ショウくんは。師匠らしく、しっかりきっかりフルスクリーン、間近で拝見させてもらいますよ……っと)


カイがそんな事を考えていただなんて、当然知る由もなく。

キショウはあれよあれよと言う間に、赤白い大地に飲み込まれていったかと思うと。

まるで不純物を吐き出すかのような、打ち上げ弾き出される衝撃に襲われて。


それが、思ったよりも強いものであったからなのか。

その意識すら飛んでいってしまっていて……。


SIDEOUT





              ※      ※      ※





SIDE:ソトミ



キショウくんを、暇を持て余している……じゃなかった。

それぞれが理由あって今まで弟子をもつことのなかったメンバーでよってたかって教導し無敵の勇者を創り上げるプログラム。



本日は三日目。

カムラルの日。

カイ・フモトハラの担当日。


一週間のうちウルガヴ曜日だけお休みで、残りをわたしを含めた6人の一癖も二癖もある猛者達が担当するわけだけど。


そんなカイ少年が、火曜日がいいといの一番に声を上げたのは。

次の日がお休みなのをいいことに、まだこの世界『リヴァイ・ヴァース』に来て三日も経ってないのにも関わらずお泊り修行を計画していたからだったなんて。

今更ながら気づかされたのは、夕飯の時間になってもカイだけでなくキショウ君までもがやって来ない事を知った時だった。




「なるほど。初めからそのつもりだったわけねぇ。やられたっていうか、もしかしなくてもキショウ君ってば未だ一度もおゆはん一緒にとってないってことじゃないの。せっかくテリアが美味しいデザート作って待ってくれてるってのに、ねぇ?」

「……何言ってるんですか。貴女が『毎日手作りデザートが食べたい』って強請ったからでしょうに」

「そんな我が儘を文句も言わずきいてくれるテリアちゃんまじ女神、女子力振り切れてますなぁ」



フォルトナは人型になればいいのになよなよしくて恥ずかしいからって理由で外で食事していて。

我がお屋敷在住メンバーで現在緑一点? なクルベはご飯食べる暇があれば絵を描いていたいからとこの場、食堂にはいなくて。


カイがいないのを除けば、大宴会、披露宴でも開けそうな食堂と言うにはちょっと大きに過ぎる場所には。

給仕や食事に関わらず家事全般を取り仕切っていただいているおばちゃんたち『ドリン・ブラウニー』と言う種の、【ガイアット】魔精霊方々が忙しなく動き回っている以外には、結局いつもの姦しいメンバーが集まっていた。



わたしのおねだりに応えてくれる優しくて料理もできてお嫁さんにしたい娘ナンバーワンなテリアを、

いつものようにというか、キショウ君が来るようになってからそんな風にからかっていると。

たぶんきっとわたしと同じように、そんなテリアをぽっと出の少年に取られてしまうかもしれない危機感を覚えているであろう、我が妹にして生まれながらにしての男嫌いなアイテムマスター、サマルェ・ヴァーレストが、今日も素敵においしい夕飯をつつきつつ、不満しかないといった風に声を上げる。



「お姉ちゃん達にはそんな、下世話な話題なんて無縁だって思ってたのに。散々ばらかき回してくれちゃって」


このまま二人して可愛い女の子になったままで帰ってくればいいのに。

そんな、怨念でもこもってそうなサマルェの言葉。


「って、その言い方だとお姉ちゃんなわたしも数に入ってない? 何か勘違いしているようだけど、わたしはキショウくんのことなんてなんとも思ってないんだからねっ」

「ふふ。たった数日だっていうのに、こうも変わるのだから……ぼうやの影響力は流石の一言ね」


そして、実は分かっててやってるところのあるお茶目なわたし達を見て、流石お母さんで妖艶なる精霊使いのサマンサ・アーヴァイン女史は、ひとり変わらず妖艶な笑みを湛えていた。



そんな……いつものメンツでの、普段と変わらない団欒の時間であるはずなのに。


サマンサが言うように、不意に落っこちてくるみたいにやってきたキショウくんがやってきてからというもの、わたしたちを巡る状況は大分変わってしまったみたいで。


鬼の居ぬ間にじゃぁないけれど。

今のうちにみんなで顔突き合わせて、色々お話合いが必要になってきたよね、なんて考えに至ってしまったのも仕方のないことで……。




       (第42話につづく)










次回は、11月2日更新予定です。

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