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第40話、意外と似た者同士のキャラかぶり設定天丼



SIDE:キショウ



それまで、確かに入口であったはずのアーチの先にある、外側からは何故か伺う事が出来ないという、『遊園地』なるダンジョン。


それは一体どういった類のものなのか……どのような罠が仕掛けてあって、どれほどの驚異を持つ魔物たちが徘徊していて、その攻略達成条件は何なのか。

攻略のために、どんな準備が必要なのか、あるいはそもそも事前の準備が可能なダンジョンであるのか。


それらは全てカイから学び、教えを乞い、知るべき事であったわけだが。

師匠に名乗りを上げておきながら、いちいち言葉で説明する気などさらさらなかったカイは。

これからの行動を、基本キショウに任せっきりで、よっぽどの事がない限り口も手も出さないと宣言していた。


S級悪『役』……もとい、『主人公補正』を持っていそうな勇者の卵なキショウが。

このダンジョンをどういう風に乗り越え、はたまたリアクションしてくれるのか、カイとしては楽しみでならなかったからだ。



カイを友と呼んでくれる、クルベなどの一部の奇特な人物を除いて。

年の近い者が『リヴァイ・ヴァース』にいなかったこともあって。

仲の良い友人どころか今の今まで所謂異世界を救うための補佐……弟子のひとりもとったことのなかったカイは。

こんなにもわくわくするのならば、もうちょっと早く行動に移しておけば良かったなぁ、なんて思いつつも。

ソトミに言われたからでなくキショウを弟子にしたことに、理由があったことを不意に思い出す。



元々誰かに教えたり、あるいはお世話をしたいといった気持ちがあるというか、ライフワークであったのだが。

それはそもそも、今までもどちらかといえば教えられお世話されることの多かったカイ自身のものではないと言えた。



(ショウくん、驚くカナ。ある意味でボクもソトミ姉やそれこそショウくん自身のように『変われる』ってコト、知ったら)


カイは内心でそうそんな風にほくそ笑んでいると。

『遊園地』……名付けるならば、【スリー・サーキュレイト】などと呼ばれるダンジョンに転移し、スタート地点に降り立って。

さっそく正面に目に付く立て看板のようなものを発見したキショウが、きっとカイにも負けないくらいにわくわくしているであろう、すっかり肩の上がってしまっている小さな背中を見せつつ、そんなカイを置いて駆け出していくのが分かる。




「ええと。なになに? 『三つの輪、集めしもの。この止まることのない円環から解放されん』……だって。なるほどなるほど。よく分かんないや。……ねぇ、カイ師匠。これってどう言う意味なんです?」



かと思ったら、口も手も出さないって宣言したばかりなのに。

そんな事お構いなしに、そういった頭を使うような謎解きめいたものは門外漢で、僕の役割じゃないとでも言わんばかりに秒で振り返って。

実に素直に真っ直ぐに教えを乞うてくるキショウ。



「おいおい。ショウくんってば。見た目賢そうなのに、潔いっていうかなんていうか。……まぁ、うん。分かんなかったら人に聞くのは、とっても大事なコトだよね」


世の中にはそれすらできない、そんな『人に聞く』なんてことは神に与えられしギフトを所持していなければならないとのたまうものすらいるくらいだし、素直なのは良い事だよネ、と。

そんなキショウに免じてまっすぐな期待に応えるようにして、それこそ秒で前言撤回。

キショウの隣に並び、おもむろにその立看板に触れる。




「書かれている文章自体に意味はあるかどうかは、ちょっとばかり時間軸が違いそうだし、何とも言えないんだけどネ。ようは、三つの『輪』に関するお宝をゲットせよってことサ。それによりこのダンジョンから脱出することができるはずだけど、ココを出るのが目標、目的じゃないじゃん? だけっどこの看板はボクたちにとっても意味があったりするんだ。こうして触れることでスイッチになっててね。ほら、ショウくんも」

「あ、うん。こうですか?」

「……ソトミ姉が喜んじゃいそうなこと、さらっとするんだもんなぁ。そこに痺れも憧れもしないケド」



『彼女』がたいへんに興奮してしまうから、止めなさいと。

あろうことか手のひらを重ねようとしてきたキショウのその手をささっとかわし、その勢いのままにバチンと逆に看板に押し付け叩きつけてやる。

「いてっ」

「ほら、これでスイッチ入ったヨ。構えて構えて」

「え? ……わわっ、地面がっ。地震っ!?」



すると正しくもそれが合図であったかのように。

地面が粘着質な生き物のようにぐねぐねと鳴動しだし、そう深く刺さってはいなかったのか二人の手を放れ看板が飛んでいく。

それは、ヒントは一度きり、証拠隠滅でもするみたいにその柔らかに過ぎる大地へと飲み込まれていって。


その、実際に生きていてもおかしくなさそうな大地の動きに。

期待通りのリアクションをキショウがとっていると。

さらに追い打ちをかけるようにして、地鳴りの音が激しくなっていって。


文字通り足元から、赤と白が混ざり合ったかのような。

例えて言うならば血肉めいたそれが、キショウを飲み込もうと迫ってくるのが分かって……。



    (第41話につづく)









次回は、10月29日更新予定です。

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