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第35話、一足飛びで、修行が始まるよりも早く異世界へ



SIDE:キショウ



ソトミを中心とし、彼女が創り上げたというこの世界、『リヴァイ・ヴァース』。

ダンジョンや多種多様な建物を除けば昨日フォルトナに案内と言う名の修行を受けたばかりである。


一つの街ほどの規模で、周るだけなら一日あれば可能な世界で、それぞれの修行内容については連絡し合っているようだから。

今回は周っていて気になっていた様々な趣ある建物内へ行くのだろうか、なんてキショウは考えていたが。



「んー。まぁこの世界で装備を整える……買い物とか、ソトミ姉やフォルトナの姉御が寄ってないとことか周るのもアリかなって思ったんだけどさ。ルェっちが、ショウくんとお買い物と言う名の、冒険のための準備は任せなさいって言ってたから、そこらへんはボクよりルェっちの方がよっぽど詳しいし、だったらここじゃない別世界に遊びに行っちゃおうかなってネ」


その辺りのことが顔に出ていたからなのか。

キショウの予想を大きく超える計画を打ち明けてくるカイ。


ルェっちとはサマルェのことだろう。

今の今まで考えないようにしていたが、彼女との修行が言葉通りのものとはどうしても思えず、早くも【ヴルック曜日】が憂鬱になってくるキショウである。

それでも、辛くなければ修行でも何でもないと自身に言い聞かせて。

それよりも大いに興味深い別世界への一泊旅行についてもっと詳しく話を聞くことにした。




「別世界っていうか、この世界を含めた創造主サマが管理してる世界のコトなんだけど、やっぱりどうしても数が増えてくると滅亡の危機に貧していたり、多種多様な悪『役』がのさばったりしちゃうらしくてね、ここにいるボクらは『役』から開放され改心して、じゅうぶんに力をつけたらそんな世界を救う英雄勇者として派遣されるワケ。そんな感じでいくつかの世界を救って尚且つ後継者……弟子をとって、弟子と一緒に真の英雄、勇者になるコトができれば、晴れて無罪放免。ボクたちは『卒業』って呼び方をしてるけど、自由になれるっていうか、色んな願いが叶うって寸法でね。……ボクとしてはそんな今が一番楽しいから、今まで卒業試験、弟子を取ることもなかったんだけど、せっかくだしこの機会にこれから行くであろう別世界、そのうちの一つにお試しで遊びに行っちゃおうって思ったんだヨ」



本来ならば、然るべき準備を行い、『役』から外れ改心して向かう場所であるのだが。

今回は、世界にさしたる問題がない、既に英雄勇者某によって完結している世界へ少しばかりお邪魔する、とのことで。



「……いろんな世界が数え切れないほどあるって言うのも何だか実感わかないけど、今回はどこへ?」

「そうだねぇ。お試しでそんなに長居するわけじゃないし、とりあえずボクの故郷に行こっか。ボクがこうしてここにいる以上、すでにお話は終わっちゃってて安定してるはずだからさ。ちょうどいいと思うんだ」


キショウ自身は、正直悪『役』であった自覚も記憶もなく、恐らく違うんじゃなかろうかと判断していたが。

目の前の元気ハツラツな紅顔の美少年も、この世界に来てソトミに会うまでは稀代の悪『役』としてならしていたらしい。


そんなカイが、役目を終えた世界。

故郷であるとはっきりと言っていたが、カイのことをよく知る上でも。

悪『役』とは一体何であるのか、はっきりさせる意味でも興味深いことは確かで。




「カイ師匠の故郷かぁ。きっとこことも、僕の故郷とも違うのかな」

「お? 自分のこと、ちょっとは思い出せてる感じ?」

「思い出したかと思ったらまた忘れちゃったり、その時々なんだけどさ。少なくとも僕の故郷はこの世界に近い気がするんだ」

「そか。それじゃあ結構びっくりしちゃうかもねぇ。超常の力はあるけど、剣と魔法の世界じゃぁないからサ」


何だかんだで、故郷へ向かう、帰るのがカイも楽しみではあるのだろう。

随分と得意げにそう言うから、キショウもわくわくがより一層沸き立っていって。



「んじゃ、早速向かおっか。ボクの故郷へ連れて行ってくれる『トラベル・ゲート』にネ」


『リヴァイ・ヴァース』には、ソトミたち上位者が居を構える館を始めとした様々な建物がある。

この世界にやってきて、『役』から解放された住人が暮らす家は勿論のこと、多種多様な武器防具道具店、訓練用のダンジョンを内包した施設。

色々な世界の食事が味わえる憩いの場などに混じって、最もその数が多いのは、小さな教会めいた建物だろうか。


その中には、『トラベル・ゲート』なる七色揺蕩いし泉のようなものがあって。

そのそれぞれが、数多の異世界へと繋がっているらしく、後に聞くところによると。

キショウはまだ建物ができていない、ある意味では野良の『トラベル・ゲート』からこの世界に落とされたらしいのだが。


キショウからすれば、この世界へやってくるきっかけもそうだが。

その手段方法すらもまったくもって覚えていない……

思い出せなかったから、なんだか犬や猫みたいだな、なんて思っていたわけだが。



それも実は言い得て妙で。

広義的な意味で言えば、『トラベル・ゲート』も生きているらしい。

『トラベル・ゲート』によって転移させられる『役』持ちの存在は、生きているというソレに選別され喰らわれ、異世界へ落とされると言う。



カイが『トラベル・ゲート』にもう少し詳しくて、そこまで語っていたのならば。


もしかしたらキショウは。

正にその瞬間のことを思い出せていたはずで……。



      (第36話につづく)










次回は、10月9日更新予定です。

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