表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/86

第34話、憧れの竜の友と、とっくにそのつもりだった師匠




SIDE:キショウ



改めて、何だかしみじみと獣王と赤竜に見つめられて。

不思議そうに首を傾げつつも、内心では二人で並んでいるとかっこいいな、何て思っていたキショウであったが。

そんなある意味子供らしい考えなど気づいた様子もなく、しみじみしたままラキルが口を開く。



『まぁ、でも。よかったっすねぇ、かしら。今までかしらを怖がっちまって一緒に訓練してくれる人もいなかったくらいっすからね』


そう言うラキルですら、先程未遂があったように。

すぐ逃げ出してしまうくらいには、フォルトナの事を恐れている。

普通の人間より竜としての本能が強いからこそ、フォルトナとの隔絶した力の差を感じ、萎縮してしまって。

世界ごとそれなりに長い間、一緒に行動するであろう弟子についても、ラキルは『かんべんししてくださいっす!』と断り続けていたのだ。



だが、フォルトナが存在感あまりあるほど畏怖を纏っているとはいえ、その実面倒見がいいのはよくよく分かっていたし、悪い人物でないこと(天下の魔獣王相手にその言い方はあれではあるが)もよく分かっている。

ラキルにしてみれば、キショウの存在は色々な意味でありがたい存在であると言えよう。



『人型のマヨイビトだったのは見ていてすぐ分かったっすけど、もしかしてキショウさん、おいらたち……かしらと同郷っすか?』

「え? う、うん。実はその辺りのことをよく覚えてないんだけど、そうみたいですね」

『やっぱり。魔獣王さまのことは聞いてことないっすか?』

「魔獣王ですか? ……言われてみると何だかどこかで習ったことがあるような」



そう言われて初めて、この世界と似て非なる学校のような所で、授業としてその言葉を耳にしたことがあると。

開いたり閉じたりして不安定な記憶の扉が動かされるのを自覚して。



キショウの故郷のことを色々と知っているらしいラキル。

魔物の頂点の一つとも言えるドラゴンと話ができるだけで興奮ものなのに。

これは、是非仲良くなって色々お話すべきだと、キショウが前のめりになった瞬間。

ふさふさの手を纏った、大きにすぎるネコ科の掌が、むんずとラキルの首根っこを掴み持ち上げていた。



「余計な事を言うなと云ってるだろうが。捻り潰すぞ」

『ひいぃぃっ、ご、ごめんなさいっす~っ!』


しかしそれは、どうやらフォルトナにとってみればあまり話て欲しくはないものだったらしい。

怒ったように凄んではいたが、肉食獣めいた貌でも何故かキショウにはフォルトナが照れ隠しにそんな行動に出ているのがはっきりと分かってしまって。


なんだ、師匠可愛いところもあるんだな、とは。

キショウも空気を読んで口にはしなかったけれど。




『んじゃ。お邪魔なようなのでおいらはこれでっ。修行頑張ってくださいっす!』

「はいっ、頑張りますっ」


今度時間が空いたら色々お話しましょう。

そんなやりとりがラキルとキショウの間にかわされたかは定かではないが。



「よし。引き続き走るぞ。せめて頂まではもって見せろ」

「はいっ!」


何事もなかったかのようにフォルトナとの訓練、修行と言うなの世界の案内は続くのだった……。






              ※      ※      ※





そうして、次の日。

カムラル】曜日。



「よぅっし! 起きろーっ。ショウちゃん! 遊びに行くぞぉーっ!!」


あれから結局気を失うまで走らされたことで、あまり世界の案内としてはうまくはいっていなかったが、

勇者を目指すための修行としてはキショウとしても満足のいくものであったのは確かで。


そんなこんなで気づけば自身に宛てがわれたベッドで眠りこけていたキショウは。

またしても夕飯のデザートをいただき損ねてしまったことにショックを受けつつも。

無駄に元気なカイのそんな声によって叩き起こされた。



「んん、カイ師匠? あそび……?」

「おいおいおいっ、えらい他人行儀だなァ。寝ぼけてる? ほとんど同年代なんだし、カイでいいって!

いやぁ、同年代のトモダチっていそうでいなかったからさ、けっこうボクこの日を心待ちにしてたんだよねェ」


よくよく話を聞く所によると。

次の日、【ピアドリーム曜日】が修行訓練がお休みであるのをいい事に、一泊二日の修行にかこつけて遊び……旅行を計画していたらしい。


促され急かされるままに着替えて部屋を出て、ようやく意識がはっきりしてきた頃。

改めてキショウはその計画の全容を知ることとなる。




「いやさ、単純にストイックに修行するのもアリだとは思うよ? けど、毎日毎日それじゃあつまんないっていうか、飽きるじゃん。だからボクとしては他のみんなとかぶらないような別のアプローチをしなきゃって思ったワケ」


弟子に修行をつけるのが面倒くさい、と言う訳でもないのだろうが。

どうせなら楽しいことをしたいといった思惑がありありのテンションである。



「ええと、それじゃあ今日はお屋敷じゃなくて別のところに泊まるってこと? 何も用意してないけど」

「じょぶじょぶ。身体ひとつあればオーケーさ。それもこれも修行のうちってね。あ、もちろんこのことはソトミ姉も知ってるから」



次の日が休みの曜日担当を指定しただけあって、もしかしなくても元々そのつもりだったのだろう。

となると、そこまでして一体どこへ向かうつもり、連れて行ってもらえるか、で……。



      (第35話につづく)








次回は、10月4日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ