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第30話、いつの間にやらマスコットに落ち着いていた、そんなふところ


SIDE:ソトミ




「オオオオォォォォッ!!」


いつの間にやらちゃっかりキショウくんのふところへと収まってしまってたわたしだけど。

すぐ頭の上から聞こえるそんな芯まで響く咆哮に慌てて耳を塞いで、思わず顔を引っ込める。



ある意味繰り返しの作業のごとく、力の続く限り続けようという姿勢を見せるキショウくん。

仁王立ちして耐え忍び戦い続ける理由なんてないんだけどなぁって思いつつも。


これはそもそも教練、修行だったんだったと今更ながら気づかされる。

力の続く限りにやってくのは、当然と言えば当然ではあるのだけど。



(逃げ、移動しながら戦うのも訓練にはなるけれど……なによ。キショウくんてば、思っていた以上にやる気があるみたいじゃないの)



わたしは、またしても感心してしまっていた。

その姿勢もそうだったけど、バーサークモードのようでいて、その実しっかり理性がありそうなところに気づいたからだ。


自分が傷つくのも恐れずにがむしゃらに戦っているようにも見えるのに、そんなキショウくんのふところの中にいるわたしが、その影響をほとんど受けていない。

正しく、守るように戦っている。


なんたることだと。

打ちひしがれる思いだったけれど。

それがいいか悪いかはまた別問題だろう。



あらゆる生き物の生気や精気を吸って生きているヘッド・スクイーズ。

当然のように、大きな力ほど好んでいて。

たとえふところマスコットに身をやつしていても、今ダンジョンの中で一番強い力を持っているのはわたしなんだろう。

故に、わたしをふところに入れている限り、いつまでたっても彼らの攻勢は終わらない。



ダンジョンへの攻略という点では、やはりここから素早く移動するか、狙われる原因となるものをどこかへ放るなりなんなりするべきなのだ。

実力を隠していようがいまいが、S級の悪役ならばすぐにそれに気づいて実行に移していてもおかしくないはずなのに。


キショウくんは、それをしなかった。




「……ォォッ!」


限界まで熟し鍛えるのが訓練だ、とでも言わんばかりに。

わたしを守り庇いながら戦い続けて。

ついには、再び全身にまとわりつかれ、膝に力を失い倒れ込んでしまう。



「むぎゅぅっ」


それでも、この期に及んで土下座でもするみたいに。

お腹を、わたしを守るように……亀みたいに丸くなる始末。


わたしは、キショウくんの今は分厚い胸板と太ももに挟まれて。

変な声を上げつつも……ついにはギブアップをしてしまうこととなる。




「……うぐぐぅっ。もう限界ぃっ、【イクジ・リヴァ】っ!」


たまらず使用したのは、ダンジョンや建物内から脱出するという、英雄や勇者なにがし御用達の【リヴァ】属性の魔法。


いきなりの前言撤回ですよ、コレは。

……本当は、攻略失敗したのならば担いででも帰ってくつもりだったんだけど。

こんなにもおっきくなるとは予想もしていなかったし、それでも身体をはって守るまではよかったのに、

自身の自重も分からずに護るべきものを圧し潰しちゃう勢いなのはいただけなかった。



まぁ、調子に乗ってふところマスコットとなって高みの見物してたわたしも悪かったんだけどさぁ。

今回は初回ということで、特別サービスしちゃいましょう。


ダンジョンアタック中は、ふところマスコットのお決まりとして手助けはしなかったけれど。

色々とキショウくんについて分かったこともあるし、言いたいこともたくさんあったから。

ちょうどいいと言えばちょうどいいとは言えて。



【イクジ・リヴァ】は、使用した本人と触れている者に対し効果を発揮する。

だからこそ、モンスターもワナも無視してよさげなアイテムだけ拾って帰ってきてしまうという、あまり訓練修行としてはよろしくない狡い魔法であるため、使用は今回限りにしたいところではある。

一応、同じ効果を持つマジックアイテムも、行くところまで行けば手に入れられるからね。



そんなことを考えつつも。

魔法は無事発動。


リヴァ】属性らしい灰色がかった魔力に包まれたかと思うと。

わたしとキショウくんは銀色のシルエットに包まれながら、その場から掻き消えていって……。




     (第31話につづく)










次回は、9月18日更新予定です。

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