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第25話、久方ぶりの、同じ時同じ瞬間の別視点


ソトミは有無を言わさず、誤魔化すようにして。

キショウの左肩口後ろに飛び乗った。



「うっ……重くは、ない?」

「当ったり前でしょうに。見た目ふわもこでほとんどが毛だもの」


だからきゅぅっとすれば懐に入り込むことも容易であるのだが。

キショウが変に意識させることを言うので、主人公ヒーローにおける第一マスコットシート……利き手とは逆の肩口(この場合左肩)に居座ることにしたようだ。

ちなみに、第二が頭上、第三がふところ、または胸ポケットである。




「さて、一日しかないんだしゆっくりしてると目標階まで辿り着けないわよ。さくさく参りましょ。準備はいい?」

「は、はいっ」



多少気負ってはいるものの、今度こその本格的なダンジョンに憧れめいたものがあるのか。

楽しげに、興奮気味に返事をするキショウ。



「んじゃ、セザール曜日担当。ソトミの英雄への道、第一回スタートよ!」




自分の得意な得物はまだ思い出せないとはキショウの弁だが。

そんなキショウは今、小回りの利くショートソード以外には、所謂『ぬののふく』的最低限の装備しか身につけていない。

頭の上には、いつものトレードマークであるサンズの帽子があるが。

何かしら魔法的効果があるとはいえ、防具と言う意味ではそれほど期待できないのは確かで。



本来着の身着のままで攻略するタイプのダンジョンであるからして。

それ以外の装備アイテムは基本現地調達になるわけだが。

何だかんだ言って初回であるし、存外ソトミが心配性だというのも影響しているのだろう。

肩口に尻尾を落ち着かせたかと思うと、すぐさま口を開く。



「さっき言ったかもだけど、攻略中基本口は出しても攻略を助けるようなことはしないから。とにかく、フロアごとに必ずひとつはある、下へ向かう階段を見つけてアイテム拾って、モンスターを倒しつつ15階まで向かってちょうだい」



結局、しっかり行われるチュートリアル。

さすがのキショウも、そんな過保護なソトミに苦笑を浮かべつつも。

ソトミの館の地下三階の中でも、ナンバープレート『001』と言う表示を除けば、特に代わり映えのしない、ずらりと並ぶドアノブのひとつを、示され言われるがままに開け放って。

キショウが足を踏み入れて、すぐのことであった。





『……ダンジョンネーム、001。『異世界への寂蒔』。起動、開始いたします。このダンジョンは、マスター権限により指定されたアイテム装備以外、持ち込むことはできません。また、ダンジョンアタックに失敗した場合、ダンジョンで得たアイテムはすべて失われます。……よろしいですか?」

「はーい。よろしくてよ、どんどんやっちゃって」

『yes。了承いたしました。これよりNo.001、ダンジョンアタックを開始するにあたり、転移を開始いたします……』



それは、キショウが話を理解し、はい、いいえを選ぶ以前の問題であった。

早速前言撤回ではないのだろうが、正しくダンジョンのマスターであるがごとく、さっさと話を進めてしまうソトミ。


キショウとしては、まず何よりいきなりしゃべりだした声の主が知りたかったというか、これから訓練修行においてお世話になるのだから挨拶くらいしたかったのに、などといったことすらままならず。



 

「……っ!」


 

突然の浮遊感と、空気の質が変わった感覚。

相当大きな、魔力の波動(今思えばそれは、ソトミのものだったのだろう)に包まれたかと思うと。


キショウはふさふさ尻尾の狐の『ふところマスコット』と化したソトミごと、明らかに今までいた所とは別の場所……『No.001』と呼ばれるダンジョンに飛ばされていた。




それはさておき。

『リヴァイ・ヴァース』にある全てのダンジョンを統括する、ソトミつきの従属魔精霊のひとり、【ヴルック】のルマを、キショウに紹介するのを省いてまで、有無を言わさずダンジョンアタックを始めたのには。

この、『No.001』……『異世界への寂蒔』と呼ばれるダンジョンの特性ゆえであった。



ダンジョンの種類によっては、所謂レベルが1からになったり、全くアイテムが持ち込めなかったり、こちらの攻撃の手段がなかったりと色々あるのだが。


今回の『異世界への寂蒔』と称されるダンジョンは。

入ったものの『役』が詳らかになる『No.000』に次ぐ、始まりのダンジョンであると言えたが。



このダンジョン、『リヴァイ・ヴァース』に来たばかりの新米……『悪役』から解き放たれた英雄候補達にはどうあがいても荷が重いダンジョンでもあった。

出てくるモンスターは、どれも新米では歯が立たないものばかり出てくるし、罠も初見殺しのものが多い。


単純に言えば、この『No.001』のダンジョンの役割にして意義は、失敗を学ぶ点にある。

 


このダンジョンと言う名の、ソトミが創り出した異世界でなければ。

二度と取り返しのつかない『死』と言う名の失敗体験を、幾度となく繰り返し、少しづつ……絶対にほど近かった失敗を回避できる時間が長くなっていって。

初めにソトミの言っていた15階まで踏破できれば、Aクラス(世界をひとつ救えるクラス)になるのも夢ではないと言われていた。

故にこの『No.001』のダンジョンは、上に行く者は皆幾度となく挑戦する人気のダンジョンで。



ソトミのてっぺんに座している、偉い権限がなければ。

予約がいっぱいで中々挑戦できないダンジョンなのである。


ちなみに、いわゆるソトミお気に入りの、今回キショウについた師匠(先生)たちは、少なくとも一度は15階以上に到達している。


一応、15階以降もあるのだが、他にも色々な用途のダンジョンがある事もあって。

最深踏破記録は、創った本人であるソトミの46階で……。



     (第26話につづく)











次回は、8月28日更新予定です。

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